小説NO.73 「 ぼうやとの、決戦 」其の三
王は肘をついて戦いを眺めていた。参加する気など、到底ない。
ぼうやが負けることも到底無いだろうと踏んでいた。
なぜなら、朱音は今、想像を絶する力で坊やと戦っており、ぼうやの方が危なそうに見えるが、突如
すさまじい気を使い始めた朱音が、ガソリン切れになるのは時間の問題だからである。
「ああ、何て揺れる城だ・・・。酔っちまう(-""-;) さっさと終わらせてくれりゃいいものを。」
王がそう呟き、のけぞって生あくびをした瞬間、彼の喉元に、鋭い「気の剣」があてられた。
「さっさと、終わらせようか?御希望通り、な。」
シュリである。警戒なんて全くしていなかった王は、気配を潜めて近づくシュリに、気づいて
いなかったのだ。
「な、何でお前が・・・ここに?!」
焦る王。
当然である。昔の彼は、強い戦士であったが、今はほとんど動かずとも不都合の無い生活を
送っていた。
全部手下任せ。魔術一つ使うにも、魔術書がないとあやふやな状態・・・。
このままでは自分が殺されてしまう!
「ぼうや、ぼ、ぼうや~!ひとまずこっちに来い!この男を殺しておくれ!
お前のパパは、やられそうだよ(((( ;°Д°))))!」
ぼうやの耳がピクリと動き、一瞬・・・王(ぼうやのパパ)の方に気を取られた。
丁度そのとき、健司がぼうやの中枢、目玉に日本刀を突き立てた。健司にとって、これは予想外の
ナイス・タイミングであった。
王の命令には必ず従うよう、造られ、加えて「服従の魔術」までかかっているぼうや。
攻撃するのは実に簡単。隙間だらけの障子に風を吹き込むようなものである。
朱音にとってもそれは同じ事であった。ぼうやの腕の動きが止まり、そこに朱音が朱鳳凰で切りつけた
ため、彼の腕は吹っ飛んだ。
もちろん、力の抜けた腕にがんじがらめにされていたルースも、腕の隙間から床に落ちる。
「ゲホッ・・・」
むせてはいたが、ルースは何とか自力で呼吸をしていた。
ギャアアァァァァオォウウゥ!!!
ぼうやの悲惨な声が響き渡った。
健司の攻撃が目玉のど真ん中に決まったのである。
ひたすらもがき苦しむぼうや。もう、攻撃どころではなくなている。
それを見た健司と朱音は身を引き、床に転がるルースに駆け寄った。
朱音は普段の朱音の様子に戻っていた。朱音本人は、先ほどまでの自分がいつもとは違い、
とんでもなく強くなっていた事に気づいていなかった。だが、異様な疲れと見覚えの無い傷などに
違和感を覚えていた。
健司は思った。
(2人とも、治療をせねば・・・な。まずはルースだ。)
「朱音、俺はルースを治療する。朱音はそこでヤツの動きを監視していてくれ。」
健司の言葉に、朱音は肩で呼吸しながら頷いた。
ぼうやは何と、ドロドロと溶けはじめた・・・。
うめき声を上げながら、這って王に近づいていく。
「パパ・・・パ・・・」
シュリはその光景を不気味としか思えなかった・・・。思わず胃酸が込み上げる。
王もその光景にはゾッとしたようだった。もうこの宮殿には、他の兵はいない。
「くるな!ば、化け物!!!」
王は手でシッ、シッ、とぼうやを追い払いながら、冷や汗で震えている。
「何デ?パパ。何デ僕カラ・・・ニゲルノ?」
ぼうやは見えなくなった瞳から、涙をこぼしていた。ヒック、ヒック・・・と泣いている。
「来るなと言ったら来るんじゃない!わしはお前のパパなんかじゃない!」
・・・王がその言葉を発したときであった。
死にかけているようにしか見えなかったぼうやが、ウォウゥゥ・・・と、唸り声を上げて、
王に突進した。
「パパ、ハ・・・最初カラ、ボクチャンヲ、利用シテタダケ!
愛ナンテ、ナイ!
許セナイヨ・・・!!!」
(まずい・・・。ヤツは王を殺す気だ!)
健司はそれを悟った。
シュリは、まるで自分が幼い頃言えなかった思いの塊がそこにあるように思え、胸が苦しくなった。
「シュリ!お前、そこから逃げろ!王から離れるんだ!!」
健司は叫んだ。シュリの耳に、何とかその言葉は聞こえていた。
シュリは悩んだ。
(ここで自分が王に一撃を入れれば、あいつも消える。でもその前にあいつがここに辿り着いて
しまったら、自分も巻き込まれ、死ぬかもしれない。
しかし、ここで何もせず逃げても、間に合うかわからない・・・。どうするか・・・。)
「何やってるの!シュリ!逃げて!」
朱音も叫ぶ。
シュリはどちらの決断をするのか。
しかし、それは、彼にしか、わからない・・・。