小説NO.61 『 ライ・リーVSシュリ、朱音 』 後編 | もうすぐって…いつ?

小説NO.61 『 ライ・リーVSシュリ、朱音 』 後編

パチーンッ・・・


サラは、シュリの頬に平手打ちをくらわした。

その後も2回、3回、平手打ちを繰り返す。


「・・・・・。」


シュリは言葉も出ず、少しふらつきながら、驚きの目で、サラを見た。


「シュリ、あんた・・・」

サラは狼のときより更に厳しい目つきでシュリを睨みつけ、言葉を続ける。


「あんた、今、死んでしまって嫌なのはどっち?ライ・リー?それとも朱音さん?

どっちも生かす方法は、ないわ。でもね・・・

シュリがあそこへ行って、どちらかのために命を張ってでも戦えばそのどちらかは生きるのよ!

そこでじっとしてたら、たいせつな者を、かけがえのない人を・・・

あなたはなくすのよ!!!目を覚まして!シュリ・・・お願い!」


サラは号泣した。ボロボロと零れる涙も、床に落ちることはない。この熱風で、すぐに蒸発する。


(今、死んでしまって・・・困る、かけがえのない・・・人・・・。)


シュリはその言葉を、心の中で繰り返していた。


(かけがえのない、大切な人・・・。大切なのは・・・朱音!

朱音に決まってるじゃないか!)


途端にシュリは炎の中へ突進した。振り返ることもなく。

サラは、それを見ると、ホッと床に膝をついた。


ルースはサラを抱き寄せて

「よく、やってくれた。」

そう、囁いた。


シュリにはもう何の迷いもなかった。

ライ・リーを死界へ送る!それが今の目的だ。



炎の中、

朱音とライ・リーは双方体の限界を超える時間、気を使い続けていた。

しかももの凄い暑さという環境の中で・・・。


ライ・リーの変化に朱音は気づいていた。

徐々に・・・ライ・リーの体は小さくなってきている。

そう、ライ・リーは今、自信がキャンドルになっているわけだから、気(炎)を使えば使うほど、

体が溶けていくのである。


それは、ライ・リーが戦える時間を意味していた。

(後どれくらいだろうか・・・。彼女はもう、最初の3分の1くらいしか体の大きさは残っていないわ・・・)

朱音は考えた。自分が後どれくらいたえていられるのか、を。


自分の体が持つ時間であれば、このまま耐えることでライ・リーに勝つことが出来る。

しかし、朱音の体が悲鳴をあげているのも事実・・・。

どうすれば、いいのか。



と、そこへ、黄金の旋風が巻き起こった。

光線のように速く、目にも止まらぬ動き・・・。


「母さん!死界へ逝ってくれ!

そして、もう一度・・・世界に・・・生まれなおしてくれ!!」


(シュリだわ・・・)

朱音は何故シュリの心が動いたのかは、サラの活躍を見ていないため、分からなかったが、

それでも・・・涙が溢れそうになってきた。



シャキーーーーーーーーーーン・・・・・・・



一瞬の出来事。

何が起こったのか、シュリ以外、誰にも分からなかった。


しかし次の瞬間、ひとつの魂が消えたのが皆に分かった。

シュリは、小さくなったライ・リーに、最後緒の一撃を食らわしたのだ。


炎の塊は、一瞬にして消え去った。ホッとした朱音は、意識が朦朧とし、その場に倒れこんだ。


「朱音!」

健司は駆け寄ろうとしたが、その必要がないと分かり、踏みとどまった。

シュリが全身から自分の「」を放ち、朱音を抱きしめ、彼女の弱った体を回復させていたからだ。


(俺の役目は、こっちか。)

健司は溶けかけで倒れている、ライ・リーに歩み寄り、死界へその残骸もすべて、送りだす

呪文を唱えた。


音もなく、消え去る彼女の姿・・・。


「ん?」


健司はライ・リーの消え去った後に光る何かを発見した。

それは、虹色に輝く宝石・・・。

雫のような、形をしていた。涙のような、形。


まるで、自分の体の中に溜め込んでいた哀しみ、結晶化したかのようにその宝石は輝いていた。


(呪文で死界へ送られないということは、これには魂も悪魔も宿っていない。

・・・ただ、純粋に、ライ・リーが遺したものだな・・・。)


朱音が回復したら、シュリに渡してやろうと健司はそれを拾い上げた。

しかしその宝石は、つまんだ瞬間に砕け散ってしまった。


(息子に哀しみは見せない。)


死界から、そうライ・リーが言っているかのようだった。


ライ・リー。

シュリを本当は愛していたのだろうか?


それは・・・誰にも、わからないまま、彼女は死界へと、去った。