小説NO.37 ~ 愛 ~
出発までの修行期間は4日間を切り、各々は、自分が力を磨くため、精一杯のことをした。
朱音は、地・空中それぞれで「気」を一定に保てるよう、朱鳳凰とのコンビネーションを
更に向上させるようにし、
シュリは身軽になった心身を洗練していったため、「気の剣」が前より長くしなやかになった。
ルースは気を何発も発射していくうちに、「気」事態の力が増し、スタミナがついた。
竜のときは炎さえ吹けるようになっていた。
サラは、弓矢を使いこなせるようにルースに相手をしてもらったり、個人で練習したりを
繰り返しながら、弓矢の使い手としての能力が上がっていった。
健司が何をしていたかは実際のところ良く分からないが、彼の肉体は以前に増して、
がっしりとした筋肉に覆われていった。
こうして皆が、精神と肉体の限界まで修行を続けたところで、
ついに体を休めるための、最後の1日が訪れてた。
シュリは、部屋で明日使うことになる「火の鳥」を丁寧に磨き上げていた。
見かけは大して派手でなく、特に特徴があるわけではないこの剣。
しかしこの剣に触れていると、昔の自分が次々とよみがえってくる。
シュリが殺されかけ、ルースがそれを見つけた日のこと・・・。
あのときシュリを襲った相手は、実は、シュリの実父、「王」であったのだ。
王自体が手を汚すことなど、普段は無いに等しい。
しかしあの日の王は、いつになく、血に飢えていた。久々に自分で「快楽」を味わいたいと感じていた。
そこで一番に浮かんだのは自分の息子、「シュリ」だったのだ。
王にとってシュリは、心から醜い子孫、むしろ使い物にならない「ガラクタ」だと思っており、
自分の手で思いのまま、痛めつけてやりたいと感じた。
隠れるように生活していたシュリは、闇から王が現れたとき、もしかしたら王の心が変わったのか、
という希望を持ってしまった。それが油断に繋がったのだ。シュリは悲惨な姿になるまで苦しめられた。
王は、「ガラクタに、自らの手で、わざわざとどめをさす必要性はない」と感じたので、そのまま宮殿に
帰っていった。
楽しめればそれで良く、あとは自分の兵が片付ければよい。王らしい判断である。
結局、運よくシュリは、生き延びることができたが・・・。
シュリは本当は王から愛されたかった。
幼い頃から、ずっと・・・。
しかしその願いは叶わぬまま、これからこの親子はぶつかり合おうとしている。
悲しい戦い・・・。
昔を思い出したシュリの瞳には、涙が滲んでいた。
シュリは「火の鳥」を置くと、自分の部屋を飛び出した。
向かった先は、畳の香りが漂う和室。
ふすまを開けると、そこには朱音が寝息を立てて眠っていた。
朱音のことが・・・愛おしくて、愛おしくて、どうしようもない。
シュリは眠っている朱音に覆いかぶさる。
「な、何するのよ?!シュ、シュリ?!」
朱音は抵抗したが、力が尋常でなく強い。シュリは朱音の体を求めた。ひたすらに・・・。
朱音は廃墟でされたことがある行為とそれが被り、涙を流した。
その涙を見た瞬間、シュリは冷静になった。
「いきなり、で・・・ごめん。こんなことして、すまない・・・。」
「廃墟のやつらと一緒なのね?!シュリも・・・」
朱音は泣きながら服で、体を隠した。
「ち、違う!僕は、君を…愛しているんだ!
抑えられなかった。気持ちを伝えるべきじゃないと思いつつ、日に日に君が愛おしくなる。
もう、伝えずにはいられない。
好きだ。朱音。」
今度はそっと、朱音の体を包み込むシュリ。
申し訳ない気持ちでいっぱいで、泣いている朱音に服を着せようとした。
しかし朱音は、その手をグッと掴んでシュリを見つめた。
「・・・なんで、早く、言ってくれなかったの・・・?
私だって、あなたを愛しているわ。その言葉さえあれば、こんなやり方しなくたって、
抵抗なんてしなかったのに・・・」
こうしてふたりは、戦いの前日にして、
お互いの気持ちをちゃんと言葉にして、確かめ合うことが出来たのである。