初勤務の業務内容は、京王線明大前駅構内の井の頭線渋谷行きホームと京王線八王子行きホームとを結ぶ連絡エスカレーターの、上りと下りの運転を変更したことを旅客に案内するというものだった。
渋谷行きホームに2名、新宿行きホームに2名、休憩を回す交代要員が2名という計6名の人員だった。
渋谷方面も新宿方面も電車が来る度に大声で「渋谷(or新宿)方面へのお乗換えはこちらにエスカレーターをご使用下さい!!」と連呼するような内容だった。
単純な内容だったので、簡単に説明されて朝8時から渋谷行きホームで業務を開始した。
「ん?まてよ...、これを夜の8時までやり続けるのか?」という単純な疑問が湧き上がった。
答えはあたり前に「YES」である。
今までの人生で10時間以上立ちっぱなしで過ごした経験は皆無だった。
ただ立っているだけなのだが、底知れぬ不安に襲われた。
実際に立っているだけでも結構体力を消耗する。
しかも足元はクッションの効いたスニーカーなどではなく、安全靴なのですぐに足の裏が痛くなってきた。
ひっきりなしにホームに滑り込んでくる電車と、そこから吐き出される乗客を眺めていると気は紛れたが想像以上に時間が経つのが遅い。
また、制服制帽着用してホームに立っていると“駅員”と勘違いしていろいろ質問される。
“金持ち喧嘩せず”とはよく言ったもので、ちょっとしたことで文句を言ってくるのは貧乏そうな人が圧倒的である。(人のことはあまり言えないが...)
例えば...子育てに疲れ果てた感じでベビーカーを押しながら、若いお母さんが目を引きつらせて「調布に行くにはどうすればいいの?もう何回同じ所をグルグル回っていると思うのっ!!なんでこんな分かり辛い駅なんですかっ!?」と矢継ぎ早に文句を言ってきた。
私からすれば、京王線×2ホームと井の頭線×2ホームの計4ホームしかない駅のどこが複雑やねんっ!!と思ってしまう。
ちょっと冷静になって構内の案内を見れば誰でも理解できる構造だと思う。
先程のお母さんは最終的に更にヒートアップし「エレベーターはどこにあるのっ?なんであんな奥に...、何階で降りるのっ?早く言いなさいよっ!!」とモンスターへと変貌していった。
私の心の声はこうだ「知ね~よ、メス豚!!ちょっとは自分のおつむで考えてから質問しろやっ!!」
でも現実では「申し訳ございません。。。」
こういうストレスと長時間の立ち仕事の疲労こそが警備員の本質なのかもしれない。
とにかく12時間は果てしなく長く感じた。
初勤務で簡単に折れてしまいそうな心は、警備員用に購入した手帳の最初のページに自分で書いた「今辛いのは過去が楽だったから、過去が辛いと今が楽である」という松下幸之助の言葉を見て奮い立たせた。
2勤目も同じこの“長い”現場だった。
そして彼に出会った...。
超香ばしい彼に...。

