最近二人は毎日のように学習室で身体を重ねていた。




「ア……アん、アアァ……ん」


背中をのけ反らせて喘ぐ荒北。



教卓に仰向けに寝かされ、下半身を全て脱がされ、両足を大きく広げられている。



荒北の足を押さえ付けたまま、新開は荒北自身を一心不乱にしゃぶっていた。


「はァ……ンンっ、アうゥ」


荒北の善がり声と、ピチャピチャという音が何分も続く。



「ああ……靖友のここ……一日中舐めていたい……」


うっとりとした瞳で新開は荒北自身に頬擦りした。


「死ンじまうよ……」





抱き合うことを覚えたばかりの二人がこうなるのも無理もない話かもしれない ──。
















「隼人くんがね、いつも夕食の度に話してくれてたんだ。靖友くんの授業でどんな勉強してるか」


授業初日に、経緯を説明する悠人。

ここは悠人専用の第二学習室だ。



「毎日それ聞いてたら、オレも受けたくなってさ。頼み込んだんだよ」


「フーン。まァ、ありがてェ話だ」


ホワイトボードにもたれながら悠人の話を聞いている荒北。



「だけど、なんでだろう。ここ数日全然授業内容の話、してくれないんだよね」

「ギクウッ!!」

バラバラとマーカーを床に落としてしまう。



「さ、最近は、おさらいばかりだかンな」

慌てて拾い集めながら誤魔化す。



「ね、靖友くん」

「ン?」


「この前聞きそびれちゃったけどさ。靖友くんの夢は、なんなの?」

「オレの夢?」

キラキラとした瞳で尋ねる悠人。



「オレぁ……」


荒北は腕組みをし、足元に視線を落として答えた。




「べつに……国が平和であってくれれば、それでいい……」


「平和?」


それを聞いて思い出したように言う。

「隼人くんが言ってたよ。靖友くんはいい軍師になるって。将来は国防長官になってもらおうか、って」


「バァカ。オレぁ裏方、アシストが向いてンだよ。人使うより、現場の方が好きなンだ」

「そうなの?」


「尊敬する主人が居て……忠を尽くす。そういうのが好きなンだ」

「尊敬する主人って、王様のこと?」



荒北は悠人の正面に椅子を持ってきて座った。


「オメー達兄弟の親父サン、サーヴェロ王は素晴らしい人物だ。オメー達を見てりゃ解る。オメー達は……優しく、賢く、純粋に育った。オメー達は、立派に後を継ぐヨ」


「靖友くん……」


「オメー達の代になったら、オレぁ喜んでオメー達に忠を尽くそう」


荒北はそう言って、悠人の頭をクシャッと撫でた。



「オメー達って……。後を継いで王様になるのは隼人くんだよ?」


不思議そうな顔をする悠人に、荒北は険しい表情で指を差して言った。


「何言ってんだ悠人。オメーは、プランBだ」

「プランB?」

悠人はキョトンとする。



「全てが予定通りに行くと思うな。世の中何が起こるかわからねェ。ある日突然親父サンや新開が事故や病気で死んじまうかもしれねェだろ」


「え……!」

驚く悠人。


「あり得ねェ話じゃねェぞ悠人。オメーは親父サンや新開にいつ何があってもいいように、常に準備をしておかなきゃいけねェ立場なんだ」


「……オレが……!」



荒北は椅子から立ち上がった。


「自分は次男だから関係ないとでも思ってたか?」


「……」


悠人は図星を突かれて何も言えない。



「いいか悠人。行動する時には常にプランBを用意しておけ。プランAがいつだって成功するとは限らねェんだ」

「プランB……」


「オメーの夢は、可愛いお姫サンと結婚することだって言ってたな」

「!」

ハッとする悠人。



「よく聞け」

荒北は顔を近付けて言った。


「結婚したら、必ず子供は2人以上作れ。1人っ子は絶対ダメだ。これからは常に、プランBを意識して生きるんだ。いいな」



「わ、わかった……」


荒北の迫力に圧倒され、悠人の額に冷や汗が流れた。



荒北は悠人から離れ、窓の外を眺める。



「靖友くん……」



悠人は荒北の表情が少し悲しげに見えた。

しかし、その理由は解らなかった。





「ありがとう靖友くん。なんかオレ、目が覚めたよ。靖友くんに授業頼んでやっぱり正解だった」


「そりゃドーモ……」










【主な登場人物】
新開隼人······サーヴェロ王国第一王子。イケメン。天然。
荒北靖友······新開の教育係。元ヤン。ツンデレ。
新開悠人······サーヴェロ王国第ニ王子。新開の弟。
黒田雪成······荒北の部下。






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