泉「全戦全勝て……嘘ですよね?」

黒「盛ってないスか?有り得ないスよ」

真「すごーい!荒北さんすごーい!」

 

信じられない後輩達。

 

 

荒「嘘じゃねーよ。だがそれは旅行費用をチャラにするためだ。大儲けするためじゃねェ」

 

東「なぜそんな腕があるのにもっと稼いで来なかったのだ」

 

 

荒北は、少し溜め息をついて言った。

 

荒「あのさァ……。もう少し現実的に考えてくれ。大勝ちしたら、目立つンだよ。目ェ付けられンだよ。そしたら、帰り道強盗に襲われたり、殺されたり、詐欺師が寄ってきたり、そもそもカジノ側が換金してくれなかったり、下手すりゃ疑われて一生牢屋だァ。旅行費用がチャラになる程度の勝ち額でちょうどイイんだヨ」

福「なるほど」

 

新「じゃあ、毎回タダで旅行してたってこと?」

荒「ああ。カジノのある国中心にな」

真「賢ーい!」

 

 

新開はガタッと席を立って言った。

 

新「なんか大学時代からちょこちょこ一人旅してるなって思ってたけど、そんな面白そうな旅、なんで誘ってくれなかったんだよ!」

荒「素人なんか連れてったら足手ま……目立つじゃねーか!こういうのはピンだから成り立つンだヨ!」

 

新開の勢いに怯む荒北。

 

 

黒「つまり、プロのギャンブラーってことスか?」

 

荒北は黒田の問いかけにすぐに反応した。

 

荒「違うな。“ギャンブラー”ってのは、運に頼るただの廃人のことだ。オレは運なんかに頼らねェ。負ける要素は全て排除し、技術介入し、勝つ時にしか打たねェ。だから必勝。必勝ってことは最早“ギャンブル”じゃねェんだヨ」

 

 

新「だから靖友は“ギャンブルはしない”って言ってたのか」

荒「そーゆーコト」

 

 

 

荒北は背を向けてホワイトボードに何やら書き出した。

 

 

・運を言い訳にするな

・勝ち方を見付けろ

 

 

再び全員に向き直って言う。

 

荒「まず『運を言い訳にするな』。負けたのは運が悪かった、そんなふうに思っていたらいつまでも自分の間違いに気付かねェ。負けたのは運じゃねェ。自分の能力不足だ。ギャンブルだと思うから運に頼る。ギャンブルと思った時点で負けなんだ」

 

真「よくドヤ顔で“人生はギャンブルだ”って言ってる大人、いますよね」

荒「それな。カッコいいセリフでも何でもねェ。ソイツは既に負けてるってことだ」

 

ドッと全員が笑う。

 

 

 

荒「次に『勝ち方を見付けろ』。ゲームには必ず勝つ方法ってのがある。それを見付けるんだ。勝ち方が判れば、もう軸はブレなくなる。勝ち方を知れば、そこからは世界が違って見えるぜ」

 

 

パチパチパチパチ。

 

自然に拍手が起こった。

 

 

 

荒北はホワイトボードを消しながら言った。

 

荒「ンじゃ、ちょっと戦略練っからァ、みんな休憩しててくれ。また15分後にここへ集合なァ」

 

 

チーム箱学の面々はぞろぞろと会議室を出て行った。










【主な登場人物】
新開······チーム箱学。イケメン。天然。
荒北······チーム箱学。元ヤン。ツンデレ。
東堂······チーム箱学。高飛車。ナルシスト。
福富······チーム箱学リーダー。係長。堅物。
黒田······チーム箱学。荒北の舎弟。
泉田······チーム箱学。新開を敬愛。
真波······チーム箱学。不思議ちゃん。
金城······課長。元総北チャリ部主将。
巻島······金城の部下。元総北チャリ部。
ピエール······カジノホテル支配人。元総北チャリ部顧問。
小鞠······イカサマ詐欺師。