「自転車部はヒーローインタビューの準備をして下さい」

 

ヒーローインタビューなんかあんのかヨ……。

無駄に本格的だなァ。

 

 

 

「荒北、行ってこい」

「福ちゃん?いや、ヒーローは真波だろ?」

 

「何を言っている。ヒーローは荒北、オマエだ」

「……え?」

 

 

「そうだよ靖友。練習の時から一番貢献してきたのはおめさんじゃないか。お立ち台に登るのはおめさんだよ」

「新開……」

 

「貴様がいなかったらオレ達はこんなに点数を取れていない。もっと早い段階でコールド負けしていただろう」

「東堂……」

 

 

「荒北さーん!野球って楽しいですねー!」

「荒北先輩のおかげでいい試合出来ました!」

「荒北さん!カッコ良かったっス!」

「今度みんなで野球観戦行きましょうよ!」

「うおっ、いいなそれ!」

 

「オメーら……」

 

 

 

 

「荒北」

 

福ちゃんがオレの肩に手を置く。

 

 

「もう野球から逃げる必要はない。オマエは見事に立ち直った筈だ。素晴らしいチームメイトのおかげでな」

 

 

 

 

……あァ。

その通りだ福ちゃん……。

 

 

オレには……こんなに素晴らしいチームメイトがついてンだ……。

 

 

 

 

「なァ、福ちゃん」

「ム?」

 

「オレ達……ビッグマウス軍団なんかじゃ、ねェよな?」

 

 

 

「ああ、そうとも荒北。オレ達は、王者だ!!」

 

 

 

それ聞いて安心したよ福ちゃん……。

 

 

 

 

 

オレはお立ち台の上に乗った。

 

「ヒーローインタビューです。接戦の死闘を勝利した自転車部のヒーロー、荒北選手!!」

 

 

ワーワーワー!

 

 

「後程新聞部の取材にも応じて頂きますが、とりあえず今ここで一言、感想をお願い致します!」

 

 

オレは放送部からマイクを奪い取り、自転車部の面々に向かって叫んだ。

 

 

 

 

「チャリ部ゥ!オメーら最高だァ!愛してンぜェェ!!」

 

 

 

 

ワーワーワーワー!!

 

 

観客の歓声は、いつまでも鳴り止まなかった──。

 

 

 

 

 

試合に負けたサッカー部は、約束通り主将が一人で校庭で裸踊りをした。

 

しかし、女子生徒達から罵倒され、更に投石の集中放火を浴び、救急車で運ばれる騒ぎとなった……。

 

 

 

 

 

 

長い1日が終わり、オレはやっと部屋で新開と寛いでいる。

 

 

「意外と、というよりかなり楽しかったよ、野球」

「あァ。ゲーム性が秀逸だからなァ」

 

「今度、一緒に野球観戦デートしような」

「オメーと野球観戦する日が来るとァな……」

 

「靖友のピッチャー姿、凄くカッコ良かった」

「ハッ。オメーのホームランもなァ」

 

 

 

新開が背中からのしかかって囁く。

 

 

「靖友……オレは野球に感謝してるよ。だって、そのおかげでおめさんとめぐり逢えたんだから……」

「……そうだな。ハコガクに来てなかったら、絶対オメーと出逢えてねェな」

 

 

「なぁ、靖友。“一度愛したら生涯添い遂げる ”って言ってくれたよな。あれって……」

「……スゥ……」

 

 

 

「……あれっ?寝ちまった?ちょ、確か今夜は大サービスしてくれるって約束……」

 

 

 

「……ま、仕方ないか。お疲れさん、靖友。……オレも生涯添い遂げるよ。靖友、愛してる」

 

 

 

 

「おやすみ靖友。……いい夢を」

  

 

  

おしまい




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【主な登場人物】
新開······箱学3年生。7番ニ イケメン。天然。
荒北······箱学3年生。2番中 元ヤン。ツンデレ。
東堂······箱学3年生。8番捕 高飛車。ナルシスト。
福富······箱学3年生。3番一 チャリ部主将。堅物。
黒田······箱学2年生。9番投 荒北の舎弟。
泉田······箱学2年生。5番遊 新開を敬愛。
葦木場······箱学2年生。6番左
銅橋······箱学1年生。4番三
真波······箱学1年生。1番右 不思議ちゃん。
サッカー部主将······箱学3年生。荒北を狙っている。