「すんませんしたーっ!!」
オレは素っ裸のまま、ベッドの上で土下座している。
靖友はやっと紐をほどかれ手首をさすりながら、やはり素っ裸のままベッドの上であぐらをかき、オレを睨み付けている。
「殴ってくれ。気の済むまで。いっそのこと殴り殺してくれ!」
これは本心だった。
無理矢理強姦したんだ。
殴り殺されて当然だ。
どうせ靖友にはフられて、もう二度と会ってもらえないんだ。
死んだ方がマシだ。
てか、死にたい。
「……手が痺れて殴りたくても殴れねーよ!」
「じゃ、じゃあ蹴ってくれ!蹴り殺してくれー!」
「もうそんな体力残ってねー!」
靖友は吐き捨てるように言うと、ベッドに横になった。
「寒みィ。布団かけて……」
「あっハイ」
オレはイソイソと布団をかける。
「一緒に布団入って」
「えっ?」
「背中から抱き付いて」
「ええっ?」
オレが驚いていると……。
「……言う通りにしろや」
低い声で凄まれた。
「ハイ!ただいま!」
オレは直ちに言われた通りにした。
靖友と一緒に布団に入り、背中から抱き付く。
高校時代に寮の部屋で何度かこうして一緒に寝たことを思い出した。
ただ、その時は二人共素っ裸ではなかった……。
靖友の肌、温かい……。
ついつい、背中にキスしてしまう。
怒られるかな……怒られない。
オレはずっと背中に口を付けたままにした。
「……クラブ通いしだしたのァ……オメー達に置いていかれたからだ……」
「え……?」
靖友が語り出した。
「オメーも、福ちゃんも、東堂も、プロ入りする実力だが、オレはそうじゃねェ。……寂しくて、クラブで現実逃避してたんだァ……」
「靖友……!」
そんなこと、思ってたのか。
「セクシーな踊り……か。……オメーのこと、誘惑したのは認める」
「え……ええ?」
オレを、誘惑?
「ずっと、想ってたから……オメーのこと。久々に会えて嬉しくて……いつも以上に密着しちまった」
な、なんだって?
「靖友……。オレ、チークダンスの時、はっきりおめさんを“抱きたい”って意識したよ」
「ん……。そう仕向けたのはオレだ」
そうだったのか……。
「だけど、まさか本当にこんなことになるとは思ってなかったんだァ」
「そりゃオレにその気がなかったら、いくら誘惑したところでこんなことにはならなかっただろうさ。だけど……どストレートにどストライクだったよ」
「自分から仕掛けたのに、心の準備出来てなくて……」
「靖友……。なあ、もういいよ。それよりさ……」
「ン?」
「オレ達……付き合おうよ」
「え?」
「話聞いてたら、オレ達ずっと前から両片想いだったんじゃん。エッチもしちゃったし、もう恋人同士だよな、オレ達」
「恋人……」
「ね、靖友。こっち向いて」
「……」
靖友が動かないから、オレは起き上がって強引にこっちを向かせた。
靖友は赤くなって下を向いている。
オレは靖友の頬を両手で包んで、唇を重ねた。
「好きだ、靖友。オレの恋人になって。おめさんの初めての恋人になりたい」
「オレぁもう……おムコに行けない身体にされたヨ。オメーに」
「うん……だからオレ、責任取るよ」
オレは靖友をきつく抱き締めた。
「さっき、クラブでのこと嫉妬しちゃったけどさ。これからはクラブ行く時はオレも一緒に連れてってよ。いつも二人で踊ろ」
「……いいな、ソレ」
「逆ナンされても無視だよ」
「あァ」
靖友も抱き締め返してくれた。
嬉しい。
「オレはプロ目指すけどさ……靖友にいつも傍にいてもらいたい。靖友がアシストしてくれたら心強いし」
「ん……まだ将来のことはわかんね」
「うん。でも考えといて。オレ、ずっとずっとおめさんと一緒にいたいんだ」
「新開……」
将来のことは、これからゆっくり決めよう。
オレ達は、やっと始まったばかりなんだから──。
「ね、靖友。ひとつお願いがあるんだけど……」
「なンだよ」
「今度、オレのために裸でポールダンスを……」
バキィッ!!
オレは殴られてベッド下まで転がった。
「あ、今やっと手の痺れ治ったわ」
「こ……殺さないで」
靖友……。
オレの最初で最後の恋人。
いつまでも一緒に踊っていたい ──。
おしまい
⑥ へ
あとがき へ
【主な登場人物】
新開······明早大学2年生。イケメン。天然。
荒北······洋南大学2年生。元ヤン。ツンデレ。