「……!」
周回から戻ってきたら、靖友が部室で居眠りしていた。
長椅子に座り、腕組みして頭を上げて壁にもたれたまま。
口を半開きにして、微かにイビキをかいている。
いつもなら「風邪引くぞ」って起こすところだが、オレは靖友の寝顔をじっと見つめた。
……おめさんも寝不足だったんじゃねぇか。
ははっ。
ちょっと安心した。
改めてよく見ると……靖友は綺麗な顔立ちをしている。
肌もでこぼこしていない。
細長い眉。
切れ長の瞳。
通った鼻筋。
薄い唇。
大きな口。
……和風っていうのかな、日本人顔っていうか、醤油顔っていうんだっけ?
オレは自分が濃ゆい顔立ちしてるせいか、こういう純和風な顔にちょっと憧れてるんだ。
富士額とかさ。
あ……喉仏のライン、こんなに綺麗なんだ……。
そのまま鎖骨にスッと繋がって……。
……靖友は下まつ毛が長いんだよな。
……エロいなぁ……。
ハッ!!
な、なに言ってんだオレは!
オレは靖友から距離を空けた。
今、オレ、もしかして、靖友に見とれてた……?
いやいやいや。
そんなバカな。
オレはタオルで頭をグシャグシャにかき混ぜて……ロッカールームへ走って逃げた。
自室のノートパソコンに向かって、オレは一体何を検索しようとしてるんだ。
やめろ。
よせ。
怖いもの見たさにも程があるぞ。
戻って来れなくなったらどうするんだ。
人生狂うんだぞ。
一生後悔するぞ。
だけどキーボードを叩く指が止まらない。
吐き気を催すといけないから、生々しい日本のサイトではなく、海外のサイトにした。
金髪巻き毛の少年だ。
……うん、これなら大丈夫。
栗色の髪の少年と裸で抱き合っている。
キレイ過ぎて現実味が無いぐらいだ。
女性のグラビアと変わらない。
キスしてる。
……うん、まだ全然平気。
映画でもこのぐらいの描写はいくらでもある。
クリックしていくと、だんだん行為が過激になっていった。
……ま、まだまだ。
この程度は想定の内だ。
てか、白人のは少年でもデカイなぁ……。
でもフニャフニャだ。
……え?
そのオモチャはなに?
なんに使うんだ?
は?
そんなに?
いやいや、その状態でそんなことしたら……。
わっ!
すげぇ!
マジで?
それは確かにたまんないかも……。
ハッ!!
オレなんで今ティッシュの箱取った?
オレ今なにしようとした?
……ヤバイ!
これはヤバイだろ!
やめやめ!
危険だ!
おもいっきり危険だ!!
オレは慌ててウインドウを閉じた。
ハァハァ……。
危うく戻って来れなくなるところだった……。
もう二度とこんなサイトは見ちゃいけない。
ダメ絶対。
パッ……パッ、パパパ。
ん?
なんかモニターにウインドウがたくさん開き出した。
〈このウインドウを閉じたければ、こちらに振り込みを〉
ギャーーーーッ!!
③ へ
⑤ へ
【主な登場人物】
新開······箱学3年生。イケメン。天然。
荒北······箱学3年生。元ヤン。ツンデレ。
東堂······箱学3年生。高飛車。ナルシスト。
福富······箱学3年生。チャリ部主将。堅物。