子供の時から医者大嫌い、歯医者大嫌い。
幼年時代、まあ今でもだが、身体が弱くて、ホームドクターにかかりっきりだった。どこが悪いというのではなく、いつも熱っぽく腺病質という病名で原因がわからなかった。おまけに、母や祖母が女の子はちょっと弱いくらいが上品だ、というくだらない時代錯誤な感覚でちょっと夕方熱があがると、なんだかうきうきした調子で医者に電話をした。子供の頃の思い出の3分の一はお尻に刺される注射の痛さだ。
3日ご無沙汰するとそのドクターは、
「最近顔を見ないけれど、大丈夫ですか」と連絡がはいっていたことはうっすら覚えている。
虫歯菌は母親からスプーンや箸から伝染するとかで、母親も歯はとても弱い。わたしも恐ろしいほど歯の治療の負担は続いている。
歯医者に行くときは、前日から覚悟を決めて、心を落ち着け、瞑想して、レッスンは当日休む。
朝起きると、歯医者へ行かなくていい理由をあれこれ考える。
「ちょっと風邪気味で・・・」
「生徒の父親が留学のことで相談に見えていて忘れてまして、アポに間に合いません・・・」
「近くまで来てるんですけれど、なんだか急に気分が・・・」
言い訳しながら、時々ずる休みをする生徒の気持ちがわかる。
知人に電話して、
「今から歯医者に行かないといけない。行きたくないのよね」と訴えたりする。たいがい、
「一瞬じゃあない、行きなさいよ。歯は大事よ」とそっけない。
実は今日のアポも4回キャンセルして受付の女性に怒鳴られてやっと行くことにしたのだ。
自宅から小一時間はかかるここの歯医者さんのことは実は大好きで、信頼していて、もう5年もかかっている。
腕はいいし、体育会系で、さっぱりしていて、それでいて、デリカシーがある。こういう歯医者さんだから他の歯医者に変えようとは思わない。
顔を合わすとすぐ、この歯医者は、2週間前、受付の女性に怒鳴られたことは当然連携プレーで知っているからやんわりと、
「はいはい、ひさしぶりだね。あんまりこないから何を治療してたか忘れちゃったよ」
と言って、治療が終わると、
「今度はもっと早く来てね」と子供に言い聞かすようで、マダムもにこにこと、受付もほほほ、まあまあ、よくいらっしゃいました、と今日はご機嫌をとって甘やかしてくれた。
衛生士にもよくよく言い含めているようでとても優しく接してくれる。
でも、やっぱり歯医者は嫌い。大嫌い、怖い。痛い、行きたくない。
次は3週間後だ。永遠に続く苦行の日々だ、あ~あ