わたしはvegetarianというのではないが、口にするものには比較的気をつけている。
玄米食にしたのはもうずっと前、26才の時だった。それまで海外と日本を行き来していた私は
日本に住みはじめると全身の倦怠感で週に一度は寝込んでいた。海外にいるときはなんでもないのに、である。なんとかして健康になりたくて健康に関する本を読み漁った。日本と海外では気候風土、湿度が異なるのに同じ食生活だと身体が悲鳴をあげる、という玄米菜食者の意見にはうなずけるものがあった。
玄米食にするまで一ヶ月間は玄米のレトルト食品を試した。それまで気にも留めなかったひじきなどの海藻類、ごぼうや人参のような苦手な食品を自然食の料理本を片手に煮炊きしてみた。
何事ものめりこむわたしはいったん玄米菜食にするとそれ以外のものは一切口にしなくなった。朝食のbacon & eggsもレストランでの厚いステーキもやめた。食卓の上には茶色か黒のあじけない彩りの食べ物ばかりだったが、日々体調がよくなっていくことが自覚でき気にならなかった。母に頼んでいなり寿司まで玄米で作ってもらった。
厳密な玄米自然食を3ヶ月ほど続け、久しぶりにレストランで食事をすることとなった。ビーフシチュウを注文してみた。肉に対する罪悪感を植えつけられていたせいか噛んでも噛んでもぱさぱさして呑み込むのに苦労した。
その翌日、頭ががんがん痛んで起き上がれなかった。久しぶりに肉を口にしたので身体が敏感に反応したのだ、と自然食の先輩が言った。同様のことがショートケーキを食べたあくる日にも起きたし、知人が釣ってきた鯛を料理したときもそうだった。なんでも養殖場の傍には餌を食べるためにたくさんの魚が集まるので釣れやすいのだそうだ。
人と違う食べ物を口にするたびに倒れていては現代生活が営めない。わたしは少しずつ完璧な
玄米自然食生活をゆるめて妥協した玄米自然食もどきに変えることにした。
あちこち住む場所を変えたが、朝食はクロワッサンやトーストとカフェオレやテオレ、昼か夜に玄米食をとる。ライ麦や玄麦パンで代用することもある。
アメリカでもカナダでもフランスでも日本よりは自然食品が手に入りやすい。アメリカやカナダでは大きな倉庫でorganic foodを販売している。アメリカ人の友人が連れて行ってくれたシアトルの巨大な倉庫では、年会費を払うと産地直送の野菜や食品が30%引きで買えた。
パリでは、自然食品の市場があり、蜂蜜やチーズまで売っていて、味見をしたり農家の人とその年の出来を話したりしながら買える。街のあちこちにある自然食品店では、上にスペイン産の〔IJIKI〕(hijiki-ひじきの意味。フランス語はHを省く)と書かれてある袋を買ったこともあった。
これだけ長い間自然食を続けていると身体に悪いものは自然に身体が排除するようになる。カナダでは一度fast foodのハンバーガーを食べた後救急車で病院に運ばれ日本でも三度そういうことがあった。今はおつきあいで、うさぎや鶏や牛肉を食べるし、時にストレスで甘いものがほしくなる。自分の欲求に逆らわず、ただ口にするものは、低農薬や無農薬のものにする、そういう生活がわたしには向いているようだ。