まだ私が看護学生だったころ、「患者さんの痛みを知りなさい。」と指導してくださった先輩がいました。
若かった私は、「他人の感じているのと同じ痛みを体感するなんて不可能なのに…どうしろと言うの?」と思ったものでした。
今、親を介護している人や、病気や怪我で療養中の家族や友人を見舞ったりしている人の中で、ご病人から「あなたは元気だから、私の苦しみなんてわからないんでしょ!」というような言葉を投げつけられたり、僻まれて困ったりしている人もいるかもしれません。
一所懸命にお世話しているのに、心配して見舞ったのに、思いも寄らない言葉を受けてしまったら…
どうか、あまりご自分を責めないでください。
でも、対応の仕方を少し変えた方がいい場合があります。
他人の痛みというのは、実際に体感することは出来ないものです。
特別な能力(例えばサイキックな?)でも無い限り、物理的に同じ痛みを体感することは誰にだってできません。
「他人の痛みを知れ」という言葉は、相手の今の状態(身体の痛み・精神的な苦しみ)を、慮って寄り添おうとする気持ちや行動を求めているのだと私は思います。
病人に限らず、心が傷ついている人は、身近な甘えられる相手や、
距離感を誤って近付いた他人に対して、突然(言葉の)牙をむくことがあります。
同じ痛みを感じなくてはいけないのではなく、「こんなに苦しいんだ!」という気持ちに対して「そんなに苦しいんだね?」と、寄り添ってあげてください。
弱っている人を労わってあげているとか、世話してあげている…というような、相手を貶めるような気持ちを持っていると、見透かされます。それだけは気をつけて
同じ痛みを体感することは出来ないけれど、あなたの痛みを理解したいのです…という謙虚な気持ちで寄り添えば、相手の心にあなたの思いが通じるのではないでしょうか