歴史は刻一刻と変化して行くものであるという意識は、世間一般にあまり浸透していないように思われます。

 

科学技術がこの数十年の間に進歩したように、人文科学の世界の研究も日進月歩が当たり前。

近年少しずつ浸透してきたと思われる「1192作ろう鎌倉幕府の見直し」についても

完全に根付いたとは言えません。

(これに関してはTVアニメ『逃げ上手の若君』エンディングテーマ『KAMAKURA STYLE』の力も借りて普及させたいところです)

これに関しては「1192年、源頼朝が征夷大将軍に任ぜられた」という事実は正しくとも、

それを以て「鎌倉幕府が成立した」と言っていいのかが諸説ありという状況です。

↓諸説その1・頼朝が鎌倉入りした1180年(より正確に言えば頼朝が完成した大倉邸入りした治承4年12月12日)説は『頼朝の武士団』を参照のこと。

 

 

基本的にはこれを読んでおけば間違いない!感がある戎光祥出版の書籍でも

歴史研究の深化には抗えません。

『マンガで読む 戦国の徳川武将列伝』で描かれた信康事件において家康の筆頭老臣・酒井忠次が信康の行状を信長に対して弁明しきれず、信康の切腹を命じられることになったというエピソードも現在では否定され、2022年に発売された第2弾の信康の項では、信康切腹は家康と家臣の決断であった(当然信長の命令ではない)と改められています。

 

 

 

 

本書は歴史が変わるきっかけである史料を基に新説誕生の過程を

紹介していきます。

 

一級史料とは何か、資料の発掘や読み方など、「歴史学」の研究を一般向けに解説した一冊で、

一般に思われているような暗記物の学問ではなく、思考力や想像力を駆使して史料を解釈していくものなのです。

 

著者の専門は近世史ですので、紹介されている史料も当然近世のもの中心となりますが、

本書で解説されたノウハウは時代を選ばないので、歴史学の入門として読みやすく、とっつきやすいはずです。