日本列島全体を通覧しながら戦国時代の経過を詳述する「列島の戦国史」シリーズ。

第5弾となる本書は、戦国時代が始まるきっかけの一つとされる将軍追放事件が発生した

明応年間から永禄4年という、教科書的に「戦国時代」として扱われる時代の始まりの頃までの

東国(越中・飛騨・美濃・尾張を西端とする地域)を総覧する形で扱っています。

 

このシリーズの売りである最新研究の成果を取り込んでいるのですが、

特に驚いた事は松平元信(のちの徳川家康)の祖父が安城松平氏の庶流に過ぎず、

「清康」という実名すら疑問で、確実な史料では「清孝」という名前しかできないという事です。

 

その次は、あまりにも地味な存在と見られていた長尾為景の嫡男・晴景が

越後守護・上杉定実の養子として伊達稙宗の子・時宗丸(後の実元)の縁組みを阻止し、父を引退に追い込んだやり手であったことです。

 

にもかかわらず後世晴景の評価が低いのは、弟・景虎による家督相続に不穏なものがあり、

それを正当化するために晴景の評価が下げられた面があるということです。

 

表紙は今川義元ですが、当該期の東日本における戦国大名の発展と衰退を象徴する人物として

ふさわしいでしょう。