織田信長・羽柴秀吉・徳川家康の3人が描かれていることもあってか

小学校の教科書にも載っている『長篠合戦図屏風』。

日本の義務教育を受けた人が想像する長篠合戦の姿は、恐らくこの図の影響を少なからず受けている事でしょう。

 

俗に「三英傑」と言われる信長・秀吉・家康が甲斐の戦国大名・武田信玄の後継者勝頼を破った合戦ということもあり、これまでも数多くの歴史小説・ドラマなどで描かれてきた合戦ですが、

『究極超人あ~る』作中の説明にもあるとおり「鉄砲を効果的に使った織田・徳川連合軍が武田騎馬軍団を破った」というイメージで描かれていることが多いと思われます。

 

特に有名な戦法は、「三弾撃ち」と呼ばれる鉄砲隊を3部隊にわけ、交代させながら発射することで間断のない射撃を可能にしたというものですが、これが本当に可能なのか。

これについては以前からテレビ番組等で検証もされていますが、

本書では一斉射撃は本当に可能か、武田軍が長篠城攻めを行うに至った背景も含めた合戦の経緯や同時代~現代までの人々が長篠合戦をどのように理解し、後世へ語り継いでいたかといったことを論点としつつ、長篠合戦の実像に迫っていきます。

 

この合戦を後世に伝えたのは、近世においては合戦に参加した本人またはその縁者である『信長公記』の著者太田牛一や『三河物語』の著者大久保忠教、『甲陽軍鑑』の元となる口述を行った春日虎綱(いわゆる高坂弾正)といった同時代人、江戸時代に入ってから先祖の武功を誇示しようとした彼らの子孫、

明治以降は陸軍参謀本部が編纂した『日本戦史』を題材にした講談や小説で一般に「信長英雄(革命児)論」の一部として「三弾撃ち」という新戦法を用いた合戦として広まっていきましたが、

本書ではその「いかに語られ、広まっていったか」という観点でも解説されています。

 

本書は史実というものが事実を膨らませて行った「虚像」によって変化していくという

課題を読者に問いかけています。

「事実は小説より奇なり」という言葉もありますが、歴史は小説のような誇張をしなくても面白いという事をより多くの人と共有できるようになればいいと思っています。

大谷翔平選手が投手と野手の二刀流で活躍する姿は、漫画の主人公を超える活躍が現実で可能であるという事を示す端的な例ではないでしょうか?