中央公論新社から発行されている日本の古典を漫画化したシリーズの中で、

鎌倉時代の基本的資料となっている『吾妻鏡』を全3巻で漫画化しています。

シリーズ上の位置づけとしては『平家物語』の世界から『太平記』の時代への架け橋とのこと。

 

物語は頼朝の挙兵から始まり、承久の乱でおおよそ本編が終わるという

大河ドラマ『鎌倉殿の13人』と同じ年代を扱う構成となっています。

(当然ですが、だからといって「姫と呼べ」や「みんな武衛だ!」などというセリフは登場しません)

 

著者は帯の紹介によると週刊マーガレットで商業誌デビューしたとのことで、

少女漫画的な画風ではありますが、物語はややコミカルながら原典に忠実に政治や合戦を描いていきます。

あとがきによると、男性読者からは「登場人物がみんな美男子」と言われ、女性読者からは「ムサイ男ばかり」と敬遠されることに。

思ったよりトキューサがイケメンじゃありませんが、それでも畠山重忠は少女漫画的な見た目の完璧超人キャラとして描かれていますが。

 

漫画化するにあたり登場人物を絞っている(足利義兼がモノローグ、それも病没報告でしか登場せず、義氏の出番もありません。義国流は徹底的にリストラされています)部分もありますが、

それでも多いのが『吾妻鏡』の恐ろしい所です。

それでも小山朝政・長沼宗政・結城朝光の小山三兄弟と彼らの父・政光まで登場する辺りは著者の好みなのでしょうか?

 

ちなみに本作で最も表情豊かな1コマは、陳和卿が突然前世を語り始めたのを見て、

「何言ってんだこいつ」と言わんばかりの表情をしている大江広元だと思います。