歴史上の人物の評価は裏付けとなっていた資料が実は偽書であったとか、
新たな資料の発見によっても変化しますが、
時代によって世の中の仕組みや価値観の変化に応じて変化していきます。
本書に登場する女性たちも例外ではなく、その時々の価値観によって評価される基準が変化し、
その結果「善人」「悪女」といった評価を受けることになります。
例えば、本書では「利殖マダム」と評価される日野富子ですが、
現在では応仁の乱の原因として将軍後継問題が挙げられることは無くなり、
それほど悪く言われなくなってきました。
要は、本書の「はじめに」が昭和50年9月に書かれて50年近く経ち、
原題は更にものさしの当て方が変化してきたため、
本書で書かれた評価が現代でも通用するとは言えなくなっているということです。
少なくとも、本書で使われている表現の中には現代ではお目にかからないようなものも少なくありません。
とはいえ、2022年11月に朝日文庫から新装版が発売されている所からも
本書が日本史上に足跡を残した女性たちの列伝として有効であると判断されたのではないかと思っています。