日本史でも人気のある戦国時代ですが、あまり研究されてこなかったのが天皇と公家衆たちです。

戦前は皇国史観の影響で天皇を研究すること自体がタブー視され、

「研究すると言っても、天皇を崇拝し、その永続性を強調する傾向にあった」(「はじめに」より)というほどです。

 

敗戦後は皇国史観への反発からなおさら研究されなくなり、

ようやく研究されるようになったのは昭和天皇崩御が契機とのこと。

それまでは戦国時代といえば武士の時代という印象から、天皇や公家衆はなんとなく「お飾り」と見られていたのです。

 

しかし、本当に天皇や公家衆が「お飾り」だったなら首都である京都を兵火に焼かれて生き延びることもできなかったでしょう。

 

本書では乱世にあっても寺社や武家が天皇や朝廷を必要としていた、だから大名たちもその機能を守るために積極的に行動し、朝廷の構成員である公家衆も活躍の場があったという事をテーマごとに示しています。

 

また、公家の主君=天皇というのは事実ですが、当時は室町幕府にも使える公家=昵近公家衆も存在していたことも従来のイメージからは思いもよらないものでした。

 

それにしても、家康の三河守叙任は一体どのような伝手を使って近衛前久に依頼したのかわからないとは思いませんでした。

 

戦国時代の朝廷に関する新たな見解を唱えるのが、ブリンストン大学教授のトーマス・コンラン先生です。大寧寺の変は周防の戦国大名、大内義隆が家宰の陶隆房の謀反に倒れただけでなく、公家社会へ与えた影

響も大きいと語っておられます。

本書に興味を持った方は↓の動画もチェック!

 

また、今年オールナイト幕府で取り上げられた三木氏(姉小路氏)や浪岡氏についても触れています。

伊勢北畠氏や伊予西園寺氏も含めて、戦国大名化した公家を知りたい人にもお勧めです。

 

 


本書はかつて洋泉社の歴史新書yで発売されていましたが、版元の合併により絶版となりました。

調べると、現在は文学通信から再販されています。