一言で言えば中公新書で読める最新研究を取り入れた明智光秀の伝記です。

 

明智光秀というと、どうしても本能寺の変がクローズアップされがちですが、

前半生が不明でありながら織田信長のもとで出頭人と呼べるほどの出世を果たした武将という点は

最終的に雌雄を決することになる羽柴秀吉と共通しています。

 

本書では謎に包まれた前半生から頭角を現していく様、本能寺の変の原因となったであろう事柄や

光秀の最後の戦いとなる山崎合戦についても触れています。

 

奉行といった官僚的な役職をこなして出世していったことも、秀吉と共通しています。

二人とも少なくとも有能な武将でなければこうも出世はできなかったでしょう。
 
そして、信長が中世的な軍役から脱せられなかったのに対して光秀が石高に応じた軍役の賦課を行い、
家中法度を制定するなど、近世的な体制づくりを行ったことでも評価できます。
 

山崎合戦は俗に「天王山の戦い」などと言われますが、一次資料で天王山をめぐる戦いがあったことが確認できず、主な戦場は大山崎という都市集落で行われていたことが記されています。

地元の大山崎歴史資料館館長である著者だけに、中世の大山崎がどのような性格の都市であったかにも言及し、同地周辺の地名比定にも力を入れています。

 

中公新書ということで、気軽に手にすることができる価格であることもお勧めできる理由です。