山川出版社の日本史リブレットシリーズ42段は、戦国大名の走りとも言われる北条早雲こと伊勢宗瑞(または伊勢新九郎盛時)です。

 

現在の最新研究をベースにした宗瑞像が描かれており、800円(税別)と安価であることも手を出しやすい理由の一つとなります。

その分薄めですが、宗瑞の生涯をざっくり知りたい場合にはこれくらいの情報量が過不足ないと思います。

 

宗瑞の家臣団についても言及がありますが、笠原・大道寺・平井・荒木・山中・荒川・在竹といった『新九郎、奔る!』でもおなじみの根本被官に交じって左近士九郎左衛門という名前が登場します。

左近士は奈良の甲冑師の一族と言われており、『新九郎~』で「狐」と呼ばれている流しの鎧師が第1話冒頭に登場する「左近次」の可能性が高く、同一人物では?と思ったらそもそも八郎貞興の甲冑を作ったのが奈良の左近士と明記されていました。

 

問題点は、「すでに広く知られた名」という理由で当人が名乗ってもいない「北条早雲」をタイトルにしていること。

同様に後世に講談などで「幸村」と呼ばれそれが定着するという問題を抱えていた真田信繁も

大河ドラマ『真田丸』での普及活動で信繁の名が定着してきたように思われますので、

特に史実の研究においては少しずつでも啓蒙活動に取り組むべきだと思っています。