『究極超人あ~る』や『機動警察パトレイバー』などで知られる漫画家・ゆうきまさみの

最新作『新九郎、奔る』が伊勢新九郎盛時

(後の伊勢宗瑞、以下便宜上知名度の高い「北条早雲」で統一)を

主人公にしたことには驚かされました。

 

それ以上に「冥王星が惑星だと、いまだに言ってるようなものだ」

とヤフコメで全方位から突っ込まれた早雲素浪人説や

「両上杉家は早雲が滅ぼした」などという

「上杉謙信や上杉鷹山はどの上杉家に養子に入り、

あるいは吉良上野介はどの上杉家へ息子を養子に

出したのでしょうか?(答えは全て山内上杉家)

と言いたくなる真っ赤な嘘を掲載した東洋経済の記事には

さらに度肝を抜かれました。

 

恐るべき大器晩成「北条早雲のすごい生き様」

 

しかも、3月5日付けで謝罪し訂正が入った後も

近年の研究により早雲の生年が俗説(享年88歳)より24歳も若い(享年64歳)説が

主流になっているにもかかわらず、こちらはスルーしています。

 

もっとも、早雲享年64歳説を認めるとタイトルに偽りがあることになる

(早雲の享年が64歳だと彼の人生における一大転機となる伊豆討ち入りは

38歳の出来事ということに)から仕方ないのでしょうが。

 

本書の内容は主に早雲の出自に関する研究史を当時の論文で追う

スタイルとなっていますが、早雲に関することならその名の由来と思われる

早雲寺の住職が大徳寺から来ていることから早雲と大徳寺の関係

(一休派ではなく、養叟宗頤の後継者・春浦の系統)や早雲の討ち入り前に

伊豆を襲った災害についての論など、「伊勢宗瑞総力特集」感のある内容です。

 

『新九郎、奔る』で早雲に興味を持ったという人には少し敷居の高い内容

(逆にある程度室町時代に詳しくないと話についていけない?

そもそもあの漫画は冒頭の見開きの時点である程度の知識が要求されていますが)で、

かつかなり高い本ですので簡単に手は出せませんが、

図書館で見かけたら読んでみるのも良いでしょう。