X JAPAN解散後、真っ先にhideは動き始めました。

ソロ活動の名義を"hide with spread beaver"(バンド名義だが、レコーディングは基本的にドラム以外全てhide自身が演奏している)としてシングル"ROCKT DIVE"をリリース。
3部作として制作された"ピンクスパイダー"(皮肉にもhideにとって初のミリオンを記録したシングルである)"ever free"の二枚のシングルのリリースを控えレコーディングをしていたLAから帰国した時、あの出来事が起こったのでした。

hideという核を失いながらもI.N.A.を中心に残されたデモやヴォーカルトラックを元にアルバムの制作は続行されました。
収録曲の10曲中シングルに収録された4曲("ROCKET DIVE"のカップリングにクラブイベントで披露されたバージョンを音源化した"DOUBT'97"を収録)と、ジルチのカヴァーの"Leather Face"、"BREEDING"の6曲が生前に完成した音源で、それ以外の4曲が何とか完成にこぎつけた楽曲となります。

シングルとして発売された"ピンクスパイダー"は、サイボーグロックと呼ばれるhideの音楽の完成形と言える曲です。
ドラムに関してはツアーメンバーとしてでおなじみの宮脇"JOE"知史(余談だが、横須賀サーベルタイガー時代のドラマーであるTETSUの師匠に当たる。"FISH SCRATCH FEVER"では声まで使われた)とゼペット・ストアの柳田英輝の2人分のドラムトラック+ループを再構築して一つのドラムトラックを作成するなど、非常に凝った作り方をしています。
曲自体はポップさとマニアックなヘヴィさという、
hideの持ち味の中でも両極端な二面の両面を貼り合わせた楽曲です。

hideは生前「"MACHINE HEAD"みたいなアルバムを作りたい」と語っており、
今まで16曲だったアルバムの曲数を12曲程度に抑える予定でしたが、
そのうち"コギャル"は歌詞やメロディ、大まかなアレンジは完成していたもののヴォーカルトラックが未収録のため、もう一曲の"ZOMBIE'S ROCK"は仮タイトル以外何も残されておらず、未収録となりました。

ただし、前者に関してはアルバムリリース後のツアーではCHIROLYNが歌い、
2014年、最新技術を駆使してhideのヴォーカルトラックを再現した
『子 ギャル』がリリースされました。

hideは1996年ごろからソロのレコーディングでは自らベースを弾くようになりましたが、"ROCKET DIVE"リリース時に「泰司に影響を受けている」と語っていました。
泰司はそのインタビューを読んで「すげえうれしかった」と感激したと、後に語っています。(WeROCK Vol.015 『hide book』未掲載インタビューより)

このアルバムは10曲でトータル58分28秒ですが、
基本的にはhideらしくコンパクトにまとめられたポップな楽曲ばかりで
"ART OF LIFE"並みの大曲が収録されているわけではありません。

「彼の命日をいつまでも忘れないで欲しい」と願いを込め、
最後の曲の終了後無音状態を作って収録時間を延ばし、
この時間(平成10年5月2日を表す)にこだわっています。

「絶対に歌物で、キャッチーでポップ、それでいてマニアックな面を持ち合わせている」
この10曲からはそんなhideの目指した音楽性が込められています。

アルバムラストを飾る"PINK CLOUD ASSEMBLY"は『ピンクスパイダー』の続編で、ヴォーカルトラックが残っていなかったものの「朗読もアリかも」と生前hideが語っていたことから、hide実弟の裕士氏による朗読を収録して完成となりました。

この曲の最後にはhideのPCが5分おきにインターネットに接続する様子(アナログ電話回線からダイヤルアップ時代ならではの音声である)が収録されています。
最後に1曲目の"SPREAD BEAVER"のイントロを流すことで
「最初の曲と最後の曲がループする」という前二作で試みられた仕掛けを踏襲することが出来ました。



Ja,Zoo(ヤズー)/hide

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