バレンタイン企画顕如世界線に出張したポワトリ後日談番外編


あの時テレフォン人生相談でデリダ先生に相談するべきだったのだろうか?


時々ふとした瞬間に思い出してしまう。




麓の街に原稿用紙と、チャッピー君のお家用にシル⚫︎ニアファミリーの赤い大きなお家を買いに行った日に。



裏手の路地に入って行くのを見かけたので荷物を抱えながら追ってしまったのが運のつきだった。



相手のこめかみにそっと人差し指を添える。


ポシュ。


僕の聞き間違いかもしれない。聞き間違いだったと思いたい。



音もなく崩れ落ちる相手の男。


倒れ込んだ相手を振り返らずに黒革の手袋を付け替える僕の親友。



眉を顰めてしまったけど彼は意に返すこともなかった。


「買い物は終わったのか?先生。」


「あぁ。君も用事は済んだかい?松永君。」


ちゃんと話せていたかもどうか朧げだった。


「内緒。」


先程付け替えていた手袋を唇に当ててシーってしながら答える松永君。



帰り道、僕の荷物を持ってもらいながら一緒に帰ったけど、どうやって帰ったのかあまりよく覚えていない。


あの後すぐに彼はメンテナンスに入る事になった事を後から聞いた。



テレフォン人生相談(糸電話)の時に久作先生に、「松永AIがメンテでいなくなってしまったから寂しいのだろう?」と言われたが。



言葉に詰まってしまった。


処理したばかりのその指で子供をあやすようにシーってして来る親友。



誰かに相談すれば逃げれるのだろうか。



僕にはもう何もわからない。