彼も わたしも おたがいを
「 さん」と呼ぶ
何度熱を共有しあったって
それは変わらなくて
彼は ときたま
わたしの名を口にするけれど
ひどく ずるく 優しいタイミングで
音にするから
いつだって曖昧に ふわりと
空気に溶けていく
いちどだけ
彼が眠ったときに
わたしも彼の名を
音にしてみたけれど
あまりにも しっくりとこなくて
これ以上 やっぱり どうしたって
先に進むことはないのだなと
自分で自分の首をしめただけだった
それでも なんどだって
「 さん」と呼ぶ
すこしでも
まっすぐに好きだと
伝わればいいなと願いながら
許される間は 何度も
そうして 離れてからも
彼のどこかに
わたしが埋まればいいと 祈る
