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はじめて会いにきた時にも乗ったそれは
ぐん とスムーズに加速して

どんどんと 現実とか
しがらみとか 足枷とか
そういうものを引き剥がして


南に 南に 進んだ




山を見た
海を見た
透き通った空気を吸い込んで

じりじりと灼くような日差しと
ときたま ふわりと香る潮風を感じて


電車や自転車で
ただ毎日同じ道を繰り返してる
わたしの世界に
たくさんの色がついた




すべてが周到に準備されていて
慣れてるんだろうな なんて
ほんの少し思ったりもしたけれど

それでもこんな風に
喜ばせようとしてくれていることが
嬉しくて 驚いて
がっかりなんてすることがなくて

贅沢だと 自覚しておかないと
甘やかされすぎて
抜け出せなくなりそうだった



うっかりした姿や
びっくりした姿や
ふにゃり と崩れるその笑顔の
傍にいれたことが
ただ しあわせだった



同じものを見て 食べて 感じて
一日が終わるのが寂しい気もしたけれど

あまりにも完璧すぎたから
満足して いつ終わってもいいな
なんて思えた



日が暮れて
大きい三日月が顔を出して

張り巡らされた電飾と
ライトアップされた観覧車と
そのすこし古びた景色を

忘れることは ないだろう