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ヌメラーのヌメラーによるヌメラーの為のNumeri日記

おもにNumeriでお気に入りのブログ転載します。Numeri知らない人はゼヒ読んでヌメラーになりましょう。
※私が書いてるのではありませんので悪しからず(^^)/


緻密に練られた犯罪はある種の芸術だと思っている。

もちろん、犯罪行為自体は必ず誰かを悲しませるもので、決して褒められたものでも勧められたものでもなく、忌み嫌うべき存在であることは確かなのだけど、その行為自体には非常に興味を惹かれることがある。

犯罪は悪いことだ。そんなのは当たり前だが、不謹慎を承知でその「悪」という額縁を除いて見てみると、そこに見え隠れする人間としての本質、感情の動き、社会の動向、そんなものが的確に把握できるような気がする。

粗暴な犯行はダメだ。通りすがりに殴った、通りすがりに盗んだ、通りすがりに痴漢した、そこに人間としての本質も、やり取りする感情も、もちろん社会の鏡としての意義もない。ただただ犯罪であり、そこに芸術性はない。

その反面、もう何度も言うけど、絶対にその行為を勧める訳ではないのだけど、例えば「母さん助けて詐欺」なんていう、ちょっと稲葉さんの頭が狂ったらB'zのシングル曲のタイトルになりかねない名称に変わった「オレオレ詐欺」「振り込め詐欺」なんてものすごい考え尽くされているんですよ。

「おれおれ、車で事故っちまってさ」なんていう文言から始まるこの種の詐欺、ターゲットにしているのは人間の感情です。人間の持つ、身内を思う感情とパニック時の感情を巧みに操って人心を掌握、金を振り込ませるわけです。

そうなると彼らも考えるわけですよ。どういう話をしたら相手がパニックに陥るか、相手が不安に駆られるか、お金を出してもいいと判断するか。普通にアルバイトしたほうが全然いいんじゃないかってくらいに考え抜くわけです。

そんな詐欺も最初こそは荒稼ぎできるのですが、次第に注意喚起がなされ、成功しにくくなります。連日のように「オレオレと電話がかかってくるオレオレ詐欺に気をつけましょう」とテレビなどで報じられると、多くの人々が警戒するようになります。

すると、詐欺を働く人々はまた頭を働かせるわけです。「オレオレ詐欺に注意しましょう」って言われてるなら「オレオレ」って言わなきゃいいんじゃないか?「ボク、ボク」「俺だけど」みたいな言葉に変わるわけなんです。ビックリするかもしれないけど、これだけでこれはオレオレ詐欺じゃないと思われて爆釣だったみたいです。

もうこうなったら「金を振り込め」って言ってくる詐欺自体を撲滅しようと「振り込め詐欺」と名称を変えて、金を振り込めって言ってくる詐欺に気をつけてくださいって注意喚起して、さらに振り込む金額にまで上限を設けて対応しても、今度は「手渡しでもってきてほしい」「代理の者を行かせるから渡して欲しい」と振込を使わない手法にスライドしていくわけなのです。

今度は「母さん助けて詐欺」っていう頭の狂った稲葉さんが「マザーヘルプ!」ってシャウトしそうな名称に変わったので、文言が「母さん助けて」から「母さんを助けるために金が必要」とかに変わりそうな気がするのですが、とにかく、彼らは頭を使って考えているわけなんです。

さらに彼らは社会動向にも機敏に目を光らせています。いかにこれを騙しに使えるか、いかに説得力のある話に持っていけるか、そういった視点で日々のニュースや話題を激しくチェックしているわけなんです。

例えば、昨今騒がれている「アベノミクス」なんて言葉にも敏感に反応し、いち早く詐欺に取り入れて「アベノミクスを加速させるために政府がお金を配っている。保証金さえ払って頂ければ何倍ものお金をお渡しできる」ですとか、メタンハイドレードが騒がれれば「その権利を売る」などなど、とにかく人々の心に染み入りやすい旬のワードを出してくるんです。

人として褒められて行為でないのは確かなんですけど、これはもう芸術だと思うんです。人間の感情の動きを読んで、社会の動きも読む、それを踏まえて「人の気持ち」を考えて理解する。単純なように見えて様々な段階を踏まえた詐欺なんだと思うんです。

それでもって爆撃のように電話をかけまくる、頭脳と根気が必要、おまけに逮捕のリスクまで。ここまでやるくらいなら絶対に真面目に働いたほうが良いと思うんですけど、彼らはそれをしない。あえて詐欺という戦いのフィールドに身を置いて日々戦っているのです。まあ、芸術性はあるけどバカなんでしょう。

ここまで頭を使って考え込まれた詐欺ですから、もちろん、詐欺を仕掛けられた瞬間に頭脳戦は始まっているのですが、実際にはそうではありません。なにせ詐欺を受ける側ってのは心の準備が出来てませんし、そもそも頭脳戦という意識がありません。

結果、何も考えずにホエーっとノリで素人モノのエロビデオに出てしまったギャルみたいな感じで何も考えずに騙されてしまうか、それとも「そんなもんには騙されませんぞ」などと全然話を聞かずに拒絶するかどちらかだと思うんです。誰もこの種の電話を頭を使って受けたりしませんし、ましてや頭脳大戦を繰り広げるなんてことはありえないのです。

かく言う僕もこういった詐欺電話が度々かかってくるのですが、もう頭使うのも面倒で

「ですから、アダルトサイトの使用料94万円、一部でも払ってもらえませんかねー」

なんて典型的詐欺電話に鼻くそほじりながら

「わかりました。払います!」

と返答。興奮した詐欺師が

「ほんとっすか!いくら払ってくれるの!?全額!?」

とかスパークしてるとこに

「イチブトゼンブ」

とか、全く頭を使わない対応をしているわけんです。けれどもね、これって良くないじゃないですか。相手はバカですけど死ぬほど頭を使ってきてるわけなんです。相手がやってるのは犯罪ですけど、死ぬほど根気のいる作業をやってるわけなんです。芸術と呼べる域まで達したこれらの行為に対して適当な対応をする。それって結構失礼だと思うんです。

いやいや、皆さんはこんな詐欺に耳を貸す必要なんてなく、全然無視するべきなんですけど、ちょっと僕は事情が違うじゃないですか。僕はこのNumeriというサイトをやってきて様々な悪徳業者と戦ってきた。時に傷つき、時に悲しみ、そして笑顔をもたらしてきた。戦っていはいるものの決して憎しみ合っているわけではなく、どこか心を許し合いながら戦っている。言うなればトムとジェリーのような関係だ。そんな関係性の僕が彼らの作り出す芸術を無下にしてはいけない。

例えば、やったことないんですけど僕、スカッシュってスポーツが日本代表レベルで上手なんですけど、その僕に憧れて死ぬほど練習してきた中学生がいて、対戦する時に僕が中学生だと思ってめちゃくちゃ手を抜いたらどうしますか。それって失礼でしょう。中学生も悔しくて泣いちゃいますよ。だから相手が本気で頭脳戦を仕掛けてくるのならばこちらも本気で頭を使って迎え撃つ、それが礼儀というものなのです。

けれどもね、ここで一つ問題があるんです。相手の頭脳的な詐欺電話に対してこちらも頭脳戦で迎え撃つ、っていうのは趣旨としては素晴らしいんですけど、そもそも頭脳戦ってなんなのよって部分に考えが至ってしまうのです。

詐欺の脅威が迫ってきた場合、頭脳戦を展開して何をするかと言えばもちろん「騙されないようにする」なのですが、それって普通に当たり前じゃないですか。詐欺電話がかかってきた、騙されないように頑張る、そんなの当たり前です。「ワタシってサバサバしてるってよく言われるのよねー」っていってる女が例外なくブスなくらい当たり前なんですよ。サバみたいな顔しやがってからに。

とにかく、そんな当たり前の頭脳戦では互いに昇龍のようにお互いを高めあってきた僕と悪徳業者の戦いにふさわしくありませんので、僕の方に特別ルールを課して戦いたいと思います。題して、「詐欺業者に言ったら勝ちよゲーム」。

ルールを説明します。まず、詐欺業者に電話をかけます。向こう側は何とか僕の個人情報を聞き出そう、詐欺にはめてやろうと言葉巧みに叩きを挑んできます。その言葉を躱しつつ、あらかじめ決めておいた3つのキーワードを違和感なく相手の業者に言えたら勝ちとします。

いかがでしょうか。これならばいかにしてナチュラルに指定ワードを盛り込むか、という頭脳戦になります。僕の頭脳と話術、強運が試される絶好のバトルフィールドとも言えます。

ということで、早速3つのキーワードをチョイスします。ここは大切ですよ。やはり言いやすいキーワードだとかなり後の展開が楽になりますからね。「振込」「お金」「犯罪」とか詐欺にまつわるワードがチョイスされようものなら圧倒的な勝利が確約されているようなものです。本棚からランダムに選んだ3冊の書籍、適当にページを開いて最初の単語をピックアップします。

「生命保険」「代紋」「大麦若葉」

言えるか、バカ。

いやいやいや、生命保険、代紋は難しいながらも言えないことはなさそうなんですけど、さすがに大麦若葉は不可能だろ。どうやっても詐欺との戦いで「大麦若葉はビタミンが豊富で健康に良く」なんて挟み込めない。絶対に挟み込めない。これは早くも苦戦が予想されますぞ。

次に、詐欺業者を選定します。昨今では、悪徳業者相手におちょくるエンターテイメントが盛んに行われている現状がありまして、業悪徳業者側の警戒度が高い傾向にあります。こういう言い方が適切ではないことは分かりますが、悪徳業者も真面目に詐欺やってるんです。僕らのような人間の相手をしている暇はないのです。

ですから、僕らみたいなのがおちょくってやろうと電話をかけてみたところで、ほとんどが20秒くらいでガチャっと電話を切られてしまいます。こっちは万全の体制でネタを仕込んで電話しているというのに、ガチャ切り、なんだか毎回見せられるプロゴルファー石川遼クンの新しい髪型を見たときのような切ない気持ちになるのです。

とまあ、相手してくれる悪徳業者を探すだけでもかなり骨が折れるのですが、そこは長年の実績を誇る信頼のNumeriですよ。ちゃんと良さそうな悪徳業者をキープしておりますがな。野蛮でいて熱しやすい短気。それでいて金に対する執着は凄まじく、どんな手段でも使ってくる、そんな悪徳業者をキープしておりますがな。

元々は意味不明な封書を僕の職場に送ってきて、大変貴重で幻想的な絵があなたに当たりました無料で送りますので!なんて言って個人情報を聞き出して法外な値段で売りつけようとしてきた業者なのですが、連絡先の電話番号に電話すると担当の大口君がでてくれるんですけど、これがなかなかどうして、非常に将来有望な若者でしてね、僕のどんな話でも激昂しながら聞いてくれるんです。

普通だったら、訳わかんないから叩き切っちゃうような内容の話題でも激怒と共に聞いてくれまして、絵画を買う買わない以前に、「ぐりとぐらが絡み合う薄い本の存在」という僕の意味不明なテーマトークにも「お前いい加減にしないと殺すぞ」と激怒しながら聞いてくれるのです。すごい優しいよ。

ということで、この法外な絵画を売りつけようとする業者の大口君。名前の通り結構ビッグマウスな彼を相手に非通知で電話をかけ、「生命保険」「代紋」「大麦若葉」の三つのキーワードをナチュラルに言えたら僕の勝ち。その前に電話を切られたら僕の負け、こんなルールで戦ってみたいと思います。絵画詐欺を舞台にした衝撃の頭脳戦が今、始まる。

プルルルルルルル

「はい、もしもし」

相変わらず彼は少しヒソヒソ声で電話に出る。おまけに名前も会社名も名乗らない。これはある程度定番で様々な詐欺行為を同じ電話番号を用いて行っている業者にありがちなパターンだ。

「あ、もしもし、あの何か手紙が届いたんですけど。高価な絵画をくれるとなんとか。それで興味があるなら連絡しろってあったもんで」

ちょっと戸惑いつつも絵画に興味ありといった雰囲気を醸し出します。こんな感じでここに電話するのも4回目くらいなんですけど、全然気づいてくれない。

「あ、はい。当選された方ですね」

と、いつも通りの展開。ここから当選したけど絵を受け取るには事務所まで来て手続してもらわないといけないとか、そういう王道的なストロングスタイルの懸賞詐欺が展開されるのですが、まあ、この辺は省略します。それじゃあ事務所まで取りに行きます!はい、お待ちしております!ガチャリ!では負けになってしまいますのでなんとか話を引き延ばします。

「いやー、でもちょっとそちらにお伺いする暇はなさそうなんですわー」

すごく行きたいのに多忙である、とても残念だという雰囲気を醸し出します。これだけ全然食いついてきますから。

「お仕事がお忙しいんですねー」

「いやー、CEOなもんで海外とかが多くてですねー。明日からもアフガニスタン出張ですし」

相手に舐められてはいけないという僕の思いが「CEO」などという自分をどんなレベルの高みに設定しているのか皆目わからないホラを繰り出させます。アフガニスタン出張ってなんだそりゃ。

「海外も良いですが、絵画にも興味ございませんか?」

お、やるじゃん大口。海外と絵画をかけてくるとはこりゃ一本取られたね。

「そりゃ興味はあるよ、君ぃ。当たり前じゃないか」

ちょっと僕のキャラ設定が訳の分からないことになってるんですけど、そろそろ第一のキーワード「生命保険」をナチュラルに言えるように移行していかねばなりません。

「実は今回ご当選された絵画は極めて小さいサイズのものでして、本当はもっと大きく価値のあるものを購入する権利にも当選されているのです。絵のサイズが2倍になれば価値は20倍にもなります。いかがでしょう、ご購入されませんか」

なるほど、本来ならこれはノコノコと事務所に当選品を受け取りに行ったら監禁に近いことをされて聞かされる話だろう。しかし、こちらが金持っぽい振る舞いで絵画にも興味ありと踏んで勝負にでたか!大口。

「いやね、そりゃもちろん価値のある絵を買うのはやぶさかではないよ。けれども値段が分からなないものをおいそれと買うわけにはいかんよ、君ぃ」

僕のキャラ設定が何を目指してるのかさっぱりわからず、僕の中でCEOってこんなイメージなのかと愕然とするのですが、ここら変で値段的な核心に迫ります。カクシンニセマラナイデとか言われそうです、一気に畳みかけます。

「ズバリ申し上げます!今回お勧めする作品は80万円でございます!」

コイツは僕に80万円のイルカの絵を売りつけようとしてんのか。とんでもない悪人だな。今の僕が80万円の絵なんか買おうものなら飯も食えず餓死する。イルカの絵を抱いて餓死する。つまり大口のこの所業は詐欺というより殺人に近い。とんでもないやろうだ。

「80万なんか払ったら俺、餓死しちゃうよー、それとも餓死して生命保険で払う?ガハハハハ!」

80万円払えないCEO、80万円払ったら餓死するCEO。さらにキャラ設定が迷宮入りですがこれで一つ目のキーワード「生命保険」を極めてナチュラルに言うことができました。ひっつ目クリアーです。続いて二つ目「代紋」を目指します。

目指すとは言ったものの、皆さん、落ち着いて考えてみてください。普通の生活を営んでいて「生命保険」って言う機会はあるかもしれないですが、「代紋」は言う機会がないですよ。反社会的組織の人、いわゆるヤクザ的な人が背負ってらっしゃるものざんしょ?これをナチュラルに口にするのはなかなか難儀ですよ。

こりゃ喧嘩腰な感じになってこないとなかなか乱暴なキーワードはですからでてこないですから、ちょっと小バカにした感じで喧嘩を吹っかけてみます。

「でもさー、その絵画って本当に80万円の価値あんの?そもそも絵画じゃなくて版画みたいなものなんじゃないの?」

「いえ、高名な評論家も価値を認める品です。間違いありません!それに絵画の世界では80万円はお安いですよ」

と、大口君は丁寧に応対してくれるのですが、それでもしつこく

「なんか詐欺っぽいなー」

とか言い続けていたら、さすが瞬間湯沸かし器の異名を持つ大口君です。何度も何度も詐欺なんざんしょ?ってネチネチと言いまくってたら完全にブチンときたらしく。

「テメー!死んだぞ!!」

殺すぞでも死ぬぞでもなく過去形。彼の中では僕を殺害済みと錯覚するくらいお怒りになってくれた様子。

「おい、テメー電話番号教えろや!殺したるからよー」

さすが大口の名に恥じないビッグマウスっぷりですが、どうやら怒りに乗じて僕の電話番号を聞こうという算段らしい。なるほど、ここまで怒っていても個人情報を入手して詐欺にかけることを忘れない。この執念はもう芸術の域ですよ。ここまで来たら電話番号教えてもっとヒートアップして欲しいものですから、僕の電話番号じゃなけど、こういった場面で自由に教えて良いとされている禁断の電話番号を教えておきます。さすがに電話番号をモロに書くのはまずいので一部伏字で書きますけど、

「○9○-5240-8218です」

そう冷静に告げると、大口君もさすがに素直に携帯番号を言うとは思っていなかったらしく、一瞬面食らったような「グゥ」みたいな音を出したのですが、すぐに我に返って

「その番号からお前の個人情報抜き出してヤクザ向かわせるからな」

さすが大口の名に恥じない感じなのですが、あのですね、もう平成になって20年以上が経過してるわけですよ。そんな世の中にあって個人情報抜き出してヤクザ向かわせるぞですからね、今の時代にIP抜くぞって相手を脅してるようなもんで、何の恐ろしさもない。僕の番号じゃないし。ヤクザでもシーシェパードでもなんでも向かわせて欲しい。

ヤクザの名前を出して脅すだけで「暴力行為(団体仮装脅迫)」みたいな感じで逮捕もんなんですけど、今回はそれが目的ではありません。あくまでもキーワードを言うのが目的です。そう考えるとヤクザが出てきたのはありがたい、非常にキーワードが言いやすい。

「そんな、代紋をちらつかせて脅そうとしても無駄ざんす!」

CEOっぽい口調で話さなきゃって未だに思ってるらしく、訳の分からない口調になっていますが、これで二つめのキーワード「代紋」クリアです。まさかここまでナチュラルに言えるとは思えなかった。

さて、ついに二つのキーワードをクリア。ここで最大の難所である「大麦若葉」と対峙することになります。いくらなんでもヤクザがどうこうヒートアップしているバイオレンスな場面、どう考えても若葉に出る幕はない。

そこで思ったんです。今はかなり僕力的内容ですけど、話題がもっと家庭的で和やかな感じになってきたらどうでしょうか。もしかしたら家庭的な話題から自家製ハーブの話に移ることができ、その際にコソッと「大麦若葉」といけるかもしれません。しかしながら、一体全体、ここまでヒートアップしてる相手をどうやって家庭的な話題にシフトするか。

あのですね、女性にはわからないでしょうけど、男の心の中には必ず特別な女性が一人います。どんなに野蛮な人だろうが、どんなに強力な権力を持った人だろうが、どんなにダメな人だろうが、必ず心の中に一人の女性がいます。それが母親です。

どれだけ取り繕うとも、どれだけ酷い母親だろうとも、母親の顔を見たことがない、そんな場合でも母親とは特別なものです。このビッグマウス大口だって、母親の話題を出されたら怒りの矛をおさめて家庭的にならざるを得ない。そこで僕は突如母親の話題を出す作戦に出ました。

「母さん!助けて!」

これが母さん助けて詐欺です。

「母さんじゃねえよ!殺すぞ!」

「ごめんなさい。お母さんと間違えました。小学校の時とかよくあったじゃないですか、先生とお母さんを間違えるとか」

「俺は先生でもねえよ。殺すぞ」

大口くん、殺すぞって言いすぎて言い慣れちゃったのかちょっとトーンが落ち着いてきてさっきまでの暴力的な感じがなくなってきてるんですけど、もしかしたらこれは「お母さん」という単語で彼の中の家庭性が起き上がり、落ち着きを取り戻してきたのかもしれません。これはいけるかもしれない。

「そういえば、同僚の若林くんのお母さんが、体に良いからって5リットルくらい青汁を差し入れしてくるんですね。それがすごいまずくてまずくて、嫌がらせの領域で」

いける。このままいける。極めてナチュラルに青汁の話題にシフトできた。青汁には大麦若葉が入っているやつもある。この調子で一気に畳み掛けられる!

「その若林のお母さん、絵画とかに興味ないのか?」

マザーヘルプ!おそるべし大口。まさか若林くんのお母さんにまで絵画を売りつけようとするなんて。これですよ、これこそが芸術なのです。絵画を売りつけるためだったらなんだってする。その姿勢こそが芸術の域に達した詐欺ってやつですよ。

せっかく青汁から大麦若葉の話題にシフトしようと思ったのに大口のナイスブロック。もうどうしようもなくなっちゃって気が動転しちゃいましてね。早い話、どうでも良くなっちゃいましてね。

「お前なー、絵画とか言ってるけど、それ版画だろ?しかも80万もするわけねーだろ。だいたい、販売する目的を隠して「当選しましたー」って手紙送るの法律違反だし、ヤクザを出して脅すのも立派な犯罪。通報したらお前逮捕されるぞ。本当のお母さんに電話してどうしたらいいかアドバイスしてもらえ。だいたい、誰もこんなバレバレの詐欺で購入するわけねえだろ、もう一度芸術的に練り上げて出直して来い。いくらでも迎え撃ってやる。ガハハハハハハハ大麦若葉

言うには言ったけど、こりゃ負けだろ、負け、負けに等しい。語尾につけるだけなんて顔から火が出るくらい恥ずかしい。さすがに意味不明と思ったのか大口くんはガチャリと「お前の電話に毎日呪いの言葉を送ってやる」と結構ビッグマウスらしからぬ地味な嫌がらせの捨て台詞を吐き捨て、電話を切ってしまいました。ルールに則り、ゲームオーバーです。

今回、この絵画詐欺を巡る頭脳戦において負けてしまったわけなんですけど、その敗因はやはり、詐欺業者の根性だと思うんです。あの、根性に負けてしまった。確かに、キーワードチョイスの段階で「大麦若葉」を引いてしまったのも敗因の一つだと思いますが、やはり負けたのは、あの根性が原因だ。

あの場面で若林クンのお母さんにまで絵画を売りつけようとする根性、これに負けたのだ。僕は冒頭で、緻密に練られた犯罪は芸術だと述べた。けれどもそれは大きな間違いで、緻密さなんていらない。ただ何か一つのことだけを心の中に抱いて一心不乱に打ち込むことこそ芸術なのかもしれない。多くの芸術に緻密さなんてないのかもしれない。あるのは圧倒的に一途な思いだけなのだ。

そう言った意味では、今回の大口くんもまた、芸術だった。決して褒められたことではないし、勧められたことではないし、そこまでするくらいなら絶対に詐欺などに手を染めずに真面目に働いた方が良いと思うのだけど、それでも彼の思いは芸術だった。僕は芸術性で彼に負けたのだ。今度こそは僕も絶対に芸術性で負けないと心に誓った。

後日、本屋にて大口くんが買わせようとしていた幻想的なイルカの絵の画集を立ち読みした。80万円は絶対に高すぎると思うけど、この絵はこの絵で、やはり芸術だった。芸術だったのだ。大麦若葉。