ヌメラーのヌメラーによるヌメラーの為のNumeri日記 -21ページ目

ヌメラーのヌメラーによるヌメラーの為のNumeri日記

おもにNumeriでお気に入りのブログ転載します。Numeri知らない人はゼヒ読んでヌメラーになりましょう。
※私が書いてるのではありませんので悪しからず(^^)/

「おい!大事件だ!俺のエロ本が盗まれた。すぐに来てくれ」

家の居間で弟とテレビを見ていた僕の元に友人から電話が入った。エロ本が盗めれたぐらいの出来事を大事件と言い切ってしまうこの友人の名前は「竜」。強くワイルドに育って欲しいと両親が「竜」と名付けたらしいのだが、まさにその通りに彼は強くワイルドに育っていた。

いっぱしの悪だった彼は気が短く喧嘩っ早く、さらには空手などを覚えてしまったものだから、始末に終えないほどのワルガキとして近所では評判だった。そんな彼が「エロ本が盗まれた、すぐに来てくれ」と依頼しているのだ、とりあえず殴られたりしたら嫌なので行くしかない。

比較的近所に住んでいた竜の家に徒歩で行くと、竜はまさに猛り狂ったドラゴンのように激怒していた。とりあえず彼を落ち着かせて詳しい事情を聞く。

なんでも、部屋の本棚に置いておいた彼秘蔵のエロ本が忽然と姿を消したそうなのだ。もう何度も何度もオナニーのオカズに用いてきた主力選手だ。お気に入りのページにお気に入りのカット、このページのこの表情がたまらなくて、と何度逝かされたことか。というほどのエロ本らしい、まさに彼の宝物。

僕も何度か見せてもらったのが、あまり極上の品とは感じられなかった。でもやっぱり彼にとってはお気に入りで最高級のエロ本らしい。彼のそのエロ本への入れ込みようは相当なものだった。見苦しいほどの溺愛だった、エロ本に対して。

そんな彼が、いつものようにオナニーでもぶっこくかと本棚を見ると大切にしているエロ本が煙のように姿を消している。他のエロ本は無事なのに狙い済ましたかのように竜お気に入りのエロ本だけが消えている。

「メ・・・・メアリー?どこに行ったんだい?」(エロ本に名前をつけてたと勝手に推測)

行き場のない彼の性欲は怒りへと変換され、上記の咆哮へと繋がった。そして、エロ本を取り戻すべく自分一人の力では限界があると感じて僕を召還したらしいのだ。

「たぶん、盗まれたんだと思う。絶対に犯人を捕まえてエロ本を取り戻してくれ」

という竜からの依頼を受けた僕は、この事件を「ドラゴンエロ本消失事件」と名付けて捜査を開始した。

おそらく犯人は、消失したエロ本を竜が気に入っていたと知っている人物だ。これだけ数あるエロ本の中からあのエロ本だけをピンポイントで盗み出す理由はそれしか考えられない。

「これは多分、身近な人間の犯行だ。誰か最近遊びに来たりしなかったか?」

と尋ねると、竜はハッとして答え始めた。

「そういえば・・・・チョロのヤツが遊びに来た・・・・・」

チョロとは、これまた近所に住む友人で竜の子分みたいな存在のヤツだった。一見して卑屈さが分かるような顔立ちに陰気な性格で周囲からは嫌われていた。そんなチョロを竜は子分のように従わせていた。

そしてチョロは、手癖が悪いことでも有名だった。小学生の頃から万引きで捕まった経歴を持ち、他の友人間でもファミコンのカセットや本体を盗まれたという噂が絶えなかった。

そんな手癖の悪いチョロが竜の部屋に遊びに来て帰った。そしてその直後に竜の部屋からエロ本が消えた。チョロは竜の子分だったのだから、もちろんそのエロ本が竜のお気に入りだったことも知っている。限りなく怪しい。

「断定はできないけど・・・チョロが盗んだ可能性は高いね」

そう僕が言うや否や、竜のヤツは部屋にあった木刀を持って部屋を飛び出していた。さすがドラゴンを名前に持つ男だ、証拠もないのにチョロが犯人だと決めつけ一気に決着をつけに行ったのだ。

とりあえず、推理したものの責任として事の成り行きを見守る責任があると感じ、僕もチョロの家へと向かった。

竜の家から数分で行くことのできるチョロの家に行くと、玄関口で先に到着していた竜が木刀を振り回して大暴れしていた。

「俺のエロ本盗んだだろっ!盗んだだろっ!返せっ!返せっ!」

と咆哮しながら木刀を振り回す竜に、玄関先で泣きそうになっているチョロ。まるでたちの悪い借金取りが貧しい家に激しい取立てをしているかのように見える。

「オラー!エロ本出せって言ってるだろー!」

煮え切らないチョロの態度に腹を立てた彼はさらに咆哮を繰り返す。玄関のドアを木刀でガンガン殴る。エロ本如きでここまで小宇宙(コスモ)を燃やすことのできる彼が信じられない。

もうチョロは玄関先で正座しながら泣いていた。その後ろで病弱そうなチョロの母親がハラハラとした顔で物陰から様子を伺っている。なんだかその光景を目にした瞬間、妙に心が締め付けられるようだった。

チョロはどうでもいいとして、お母さんがかわいそうだ。こんな猛り狂ったドラゴンが木刀持って「エロ本!エロ本!」と自分の愛息子を玄関先で追い詰めている。その心中や察するに余りある。

「まあまあ、まだチョロが盗んだって決まったわけじゃないだろ」

と、とりあえず暴れていた竜をなだめる。空手の達人で、お気に入りのエロ本の消失により小宇宙(コスモ)を最大限に燃焼させている竜をなだめるのも怖くて危険なのだが、あまりにお母さんが可哀想なので僕も決死の覚悟で止めに入る。

「おまっ・・・!オマエがチョロが盗んだって言ったんじゃんかっ!!!」

それでも竜はおさまらない。もう見境なく僕にでも飛び掛りそうな雰囲気だ。何がココまで彼をエロ本に駆り立てるのか。

「俺は言ってないよ。あくまでもチョロが盗んだ可能性が高いって言っただけだろ」

そう言って反論されると、竜はやり場のない怒りをまたもやチョロに向かって発散させ始めた。

「ぼく・・・ぼく盗ってないよ・・・そんなエロ本知らないよ・・・」

もう泣きべそをかきながらチョロは言う。後ろでお母さんも泣きそうな顔をしている。

もしかして、僕はとんでもない事をしてしまったのかもしれない。いくらチョロが手癖が悪いとはいえ、いくらチョロが事件前に竜の家に遊びに来ていたとはいえ、それだけで犯人と決め付けるのは早計だったのではないだろうか。

いや、可能性が高いと言っただけで決め付けてはないのだけど、血の気の多い竜にそのことを告げようものなら、こうなることは目に見えてたはずだ。

もし本当にチョロが盗んでないとしたら・・・・・。無実のチョロを疑い、さらに獰猛な竜を平和な家庭へと殴りこませる行為の引き金を作り出してしまった。そしてそれがチョロのお母さんを悲しませる結果に・・・。

ああ、僕はなんてことをしてしまったのだろう。なんて浅はかなことを言ってしまったのだろう。いくら怪しいからって言って良いことと悪いことがある。ほら、チョロのお母さんであんなに悲しそうな目をして僕らを見ている。チョロだって泣いている。

全ては僕の一言で。僕の一言が原因で、こんな平和そうな家庭が・・・。

玄関先から見えるチョロの家の中を眺めるとさらに心が痛む。廊下に散らばった新聞紙。色褪せたカーテン。乱雑に置かれたスリッパ。全てがチョロの家の生活であり、僕の一言がなければ普段と変わりなくこの家で平和に過ごすことができたのだ。

それが僕の一言で、こんな獰猛な竜が殴りこみ。

本当に申し訳ない。心が痛んだ。ほら、あそこにもチョロの家庭の日常を感じさせる品物が転がってる。玄関に敷かれた敷物に、壁に貼られたカレンダー、4日に赤い○がつけられ「お兄ちゃん検尿」と書かれている。全てが緩やか流るるチョロの日常なんだ。それを僕らに壊す権利があるのか。すごく心が痛んだ。

ほら、あそこの廊下の隅の柱には、チョロの兄弟の成長を記した傷が彫ってある。「昭和62年、お兄ちゃん」と彫られている。その先の廊下の突き当たりには、ドアが開いていてチョロの部屋が少しだけ見えてる。そして部屋の入り口に投げ出されている雑誌。全てがチョロの平凡で平和な日常で・・・・

雑誌・・・・!?

いや、あの雑誌・・・・あの部屋の前に投げ出されている雑誌・・・どこからどう見ても盗まれたエロ本やん。モロに竜のお気に入りのエロ本やん。やっぱりコイツ盗んでるやん。しかもそれを隠すなり何なりすればいいものを平然と部屋の前に投げ出しておくなんて。もしかしてコイツは俺たちを誘ってるのか?マゾなのか?

とりあえず、猛り狂う竜に耳打ちする。

「あそこの部屋の入り口、見てみ」

チラリと視線をチョロの部屋の入り口にやる竜。そして愛しのマイエロ本の存在を確認する。その瞬間に彼の小宇宙(コスモ)の燃焼は最高潮を迎えた。

「うおーーーーーーー!」

猛然と靴も脱がずに玄関を上がり、エロ本に向かってダッシュダッシュ。玄関で正座して僕らを向かえるような格好をしていたチョロを蹴飛ばし、エロ本に向かってキックエンドダッシュ。燃えろ青春マイエロ本。

「うおおおーーー!!俺のエロ本じゃねえかああああ!!!!」

ついに最愛のエロ本を取り戻した竜は再度咆哮。

チョロは

「ちがうよ!それは僕のエロ本だよ!僕が本屋で買ってきたんだよ!」

と泣きながら苦しい弁明をするが

「嘘ついてんじゃねえ!俺はな、この64ページに折り目がついてたの憶えてるんだよ!」

と、途方もない指摘を竜がする。あからさまな嘘をついて罪を逃れようとするチョロもチョロですが、エロ本の折り目まで暗記している竜も竜です。

結局、竜はエロ本を取り戻し、チョロのお母さんは大号泣。チョロはそれでも罪を認めず。怒り狂った竜はチョロのお母さんの前でチョロに鉄拳制裁。空手をやってた彼はなんか白鳥のように華麗な飛び蹴りをチョロに食らわせてました。それでさらにお母さん大号泣、とまあ大変な修羅場でした。

エロ本ごときを盗まれたぐらいで、あれほどのコスモの燃焼を見せた竜。

エロ本ごときを盗んで、泣くほど竜に制裁を加えられたチョロ。

エロ本ごときで泣く病弱なチョロの母。

そして、エロ本ごときで必死に犯人探しをして、チョロにまで同情した僕。

全ての事柄をエロ本という言葉が情けない思い出に装飾してくれているのです。これが土地の権利書を盗んだ盗まれたなら格式高い争いなのですが、エロ本じゃあねえ。

でも、それよりなによりもっと情けないのが、この話の登場人物全員が二十歳を越えた成人だということです。そんなに昔の事件じゃないのよ、コレ。

20を越えたいい大人が、エロ本を巡って真剣に考えたり泣いたり怒ったり。ホント、情けない思い出です。