決戦!デートクラブ!(NumerI日記より) | ヌメラーのヌメラーによるヌメラーの為のNumeri日記

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おもにNumeriでお気に入りのブログ転載します。Numeri知らない人はゼヒ読んでヌメラーになりましょう。
※私が書いてるのではありませんので悪しからず(^^)/

クリスマスが近いらしい。

巷の噂によると、どうも恋人たちが語らい愛を確かめ合う1年に1度の行事クリスマスが間近に迫っているらしく、多くの人々が準備に慌しいらしい。この日ばかりは人々も謳い、踊り、冬の一日でありながら春のように振舞う夢のような一日、なんとも恐ろしいものだ。

クリスマスには夢がある。幼い頃、サンタクロースに思いを馳せ、プレゼントの到来を心待ちにしたことだろう。かくいう僕も、サンタさんにファミコンをお願いした事がある。サンタさんにお願いの手紙を書き、靴下を枕元において寝たものだった。どう考えても靴下にファミコンは入らないなんて気付きもしなかった。まだ見ぬプレゼントを心待ちにし、夢見ながら夢を見る、クリスマスとはなんとも夢のようだ。翌朝、目が覚めると靴下の中には爺さんの入れ歯が入っていた。

クリスマスには夢がある。思春期の頃、好きな女の子と一緒に過すことを夢見たあの頃。好きな子をクリスマスに誘ったことがある。何をするってわけでもないけど、特に下心があったわけでもないけど、おセックスしたい一心で誘った。最低限、おっぱいくらいは揉みたくて誘ってみた。彼女と過す特別なクリスマス、それはまさしく夢だった。誘ったら「お爺ちゃんが亡くなるから」と断わられた。クリスマスの2週間前に。恐ろしい、彼女は未来が予見できるらしい。とにかく、クリスマスには夢がある。

僕が住んでいる地方は恐ろしいほどの田舎であり、こうやって2008年現在もミサンガが大ブレイクしているという情報過疎地っぷりなのだけど、こういった僻地にも容赦なしにクリスマスの波は押し寄せてくる。田舎者はクリスマスに敏感だ。それは全てを飲み込む津波のように一切の妥協を許さない。職場などにでは年頃の男女が中睦まじく集い、来るべきクリスマスの準備に余念がない。誰もがクリスマスを夢見るのだ。

「だからさ、みんなでクリスマスパーティやろうよ!」

「イブは彼氏と過すから別の日にして!」

「じゃあ22日あたりに、居酒屋で!」

「飲んじゃうぞー!」

みたいな会話が平然と交わされる。恐ろしい。もちろん僕は誘われない。誘われるわけがない。これが職場だからいいものの、高校とかだったら間違いなく学校裏サイトであいつキモイと揶揄されているレベルだ。

こういったパーティー的なものに誘われないのはいつものこととして、それ以前に恐ろしいのがクリスマスに向けた準備段階の営業行為だ。特に田舎町は住民同士の繋がりが深く、クリスマスに向けた準備にもそういった土着的な因習が深く関与してくる。

具体的に言うと、例えば家族の誰かが某ファーストフード店でアルバイトしていたとする。そのファーストフード店ではクリスマスに向けてチキンを売り出そうと計画中だ。なんとか注文数を確保し、本部からのノルマを確保したい。そうなると、クリスマスの何週間も前から予約という形でチキンの注文を受け付け始める。

しかし、チキン狂いか余程の好き者でないとなかなか、何週間も前からクリスマスに向けてチキンを予約!というわけにはいかない。思うように予約数が伸びず、すぐにバイト店員などに向けてノルマという形で命令が下される。バイト店員にノルマをこなす販売網などあるわけもなく、家族、家族の知人、家族の職場、そういった形で営業攻勢がかけられる。もう必死になってチキンを売りつけようとしてくるのだ。

「ウチの姉が○○でバイトしてるんだけどー、クリスマスに○○のチキン買わない?助けると思って予約してよー」

みたいなセリフが横行する師走の職場。もはやクリスマスが目的なのかチキンが目的なのか皆目分からない。チキンならまだ欧米風でクリスマスに食べちゃいましょう!というのも分からなくもないが、去年のクリスマス前なんか職場のブスが、

「クリスマス饅頭予約して!お願い!」

と、家が和菓子屋だったらしく、とんでもないこと言ってた。饅頭みたいな顔しやがってからに言っていた。頭おかしい。クリスマス饅頭て。血迷うにも程があるだろ。

こういった饅頭は論外としても、問題のチキンは普通にチキンで、ただパッケージがクリスマスっぽく赤と緑に彩られているだけでクリスマス限定!などと謳っているのが気に入らない。なんとか購入しないよう、誘われたら断固として断わってやる、と意気込むのだけど、これもクリスマスパーティーなどの類と同じく全く勧誘されない。営業すらされないとはどういった了見だ。

どうしてこんなにも職場で村八分にされるのだろうか。そうそう、村八分という言葉の語源には諸説あるが、もちろん、村の中で皆でよってたかって特定人物を除け者にするのを村八分といい、普段からもとより、村の行事などにも参加させない状態を言う。けれども、全ての行事に参加させてあげないわけではなく、葬式などの重大行事には参加させる、大体2割ぐらいの行事には参加させて8割には参加させないことから八分、村八分という言葉になった説がある。

村中の嫌われ者ですら2分の行事には参加させてもらえるのに、職場での僕は何も参加させてもらえない、こりゃあ村十分、職場十分ですな!と高らかに笑うものの、笑える事態でないことは自分でも十分に承知している。

そんなこんなで、さすがの僕もこたえましてね、こりゃイカンってことで「なぜ僕は職場十分になってるのか」をテーマに喫煙所で悶々と悩んでいると、横から同じような深いため息が聞こえてくるのです。

「はぁー」

見ると、そこには同僚のS君が、おやおや、彼も村八分ならぬ職場十分にお悩みですかな、といった具合に眺めていると、S君はまるで何らかの救いの手を求めるような、構って欲しいオーラを全開にして僕に訴えかけてくるのです。

こういうのは構うとロクなことがないので無視するに限るのだけど、こう、さすがに、僕の瞳を10秒くらい眺めてから視線を逸らしてハァーって深いため息をつかれるとね、なんていうか構わない訳にはいかないじゃないですか。

人間って基本的にそうで、僕らは遠いアフリカで子供が餓死していたって心は痛まない。なぜなら見えないから。けれども、目の前で子供が餓死しかけていたらコンビニおにぎりくらいはあげるはずだ。直接視覚に訴えかける、これは思ってる以上に重要だ。

「そんなに思い悩んでどうしたの?」

本当に関わりになりたくなかったのだけど、そういうわけにもいかないので仕方なく話しかけた。

「いやー、実は悩んでて……」

神妙に答えるS君。そりゃあれだけアピールしてれば分かる。問題は何に悩んでるんだってところだ。

「何に悩んでるんだい?」

本当はいち早く家に帰ってエロ動画でも鑑賞したいんですけど、全く興味ないのに彼の心の奥底へとダイブしていきます。

「ほら、クリスマスがくるじゃん。俺ってば彼女とかできたことないから恋人と一緒にクリスマスを過した事がなくてさ。それで悩んでるんだ」

なるほど、それは深刻な悩みではないですか。まあ、そんなこと僕に相談されても僕が彼女になれるわけではないですから困るんですけど、まあ、適当に相槌でも打っておかないと職場十分が加速して職場十二分くらいになってしまうので返事をします。

「ああ、なるほどね」

適当にも程があるだろって話なんですけど、この相槌がまずかった。S君は本当に思い悩んでいたらしく、まるで崩壊したダムの如くジャジャ漏れで語りだした。

「恋人と過すクリスマスはきっと素晴らしいものに違いないんだよ。恋人だけでも素晴らしいのにクリスマスだぜ、盆と正月が一緒にやってきたようなもんだ」

クリスマスなのに盆とか正月とか何かが間違ってるのだろうけど、もうS君というか、頭くるので名前書きますけど佐藤君の話は止まらない。

「俺は夢なんだ。恋人と一緒にクリスマスを過すのが」

屈託のない笑顔でそう話す佐藤君、僕はそれをみて自分を恥じたのです。関わりたくないとか、佐藤うぜえとか、そういったことを一瞬でも考えた自分を恥じたのです。ここまで包み隠さず夢を語ってくれた佐藤君。クリスマスに対する夢を語ってくれた佐藤君。これはもう、僕も包み隠さず夢を語るべきではないか、そしてお互いに傷を舐めあうべきではないか、そう確信したのです。

「実は、僕もクリスマスには夢があってね。職場のクリスマスパーティーに誘われたいんだ。誘われて、まあ別に行きたいわけではないから断わるんだけど、誘われて行かないのと誘われないことって無限の隔たりがあるじゃん、僕は一度でいいから誘われたい。そして思いっきり断わりたい」

熱く、熱く、自分の思いを包み隠さず告げます。お互いにクリスマスに対する夢をぶつけ合い、熱く分かり合えるはずでした。けれども佐藤のヤロウ、全く聞いてなくて自分の思いを喋り続けます。

「でさ、インターネット見てたらデートクラブってやつがあったわけよ。恋人紹介します、みたいな、そういうのちょっと利用してみようかと思ってさ」

こんな自分勝手なヤツみたことねー。これだけ話が噛み合わないの物凄いのですが、どうやら佐藤君はクリスマスに向けてデートクラブと呼ばれるものに着目したご様子。

「実はこれなんだけど」

そう言うとS君はピラッと一枚の紙を差し出してきました。どうもその着目しているデートクラブの内容をご丁寧にプリントアウトしてきたらしく、なんていうんでしょうか、その行為自体で彼の本気度が窺い知れるというか、とにかく彼はマジだぜ、という悶々とした禍々しいオーラを感じずにはいられない紙でした。

「ワンランク上、極上で至福の時間を貴方に……」

などという勇ましい誘い文句が踊る広告でした。なんでこのセリフをこんなオドロオドロしいフォントで書くのか全く分からないのですけど、とにかくどんなものなのか読み進めていきます。

いろいろ読んでいくと、どうやらこのデートクラブなるサービスは、簡単に言ってしまうと女性を紹介してくれるシステムらしく、女性との出会いを求める男性は入会金と紹介料をクラブに支払い、女性を紹介してもらいます。男性を紹介して欲しい女性が登録されており、その登録女性の中から条件に合う者同士を紹介する、という感じらしいです。

つまり、出会いを求める男女を出会わせる、という趣旨のクラブのようでした。ただ、圧巻だったのが男性側が支払う料金で、入会料が98000円(1名の紹介料を含む)、以後1人紹介してもらうごとに20000円かかるというとんでもない料金設定でした。

こ、これは高価すぎるだろ。だってたかだか出会うだけじゃないですか。それだけで約10万円なんて払っていられない。きっと佐藤君だってこの高価な入会金に悩んでいるんだ。それで僕に相談してきたというわけだな。こりゃあ殴ってでも止めてやらなきゃいけない。こんなものに大金使うならもっと有意義な使い方があるはずだ。絶対に止めてやろうと決意しました。

「そこで相談なんだけどさ……」

さあ、きた。止める、絶対に止める。例え何があったとしても僕は絶対に彼を止めてみせる。そう決意して彼の続きの言葉を待ち構えました。

「紹介してもらうことになったんだけど、やっぱ行くの怖いじゃん」

うおー、もう入会してやがる。入会して紹介してもらう算段を立ててやがる。とんでもねー、もう98000円払ってしまったのかよ。めちゃくちゃじゃないか。

「やっぱさ、色々怖いじゃん。怖い男とか出てきたら嫌だし。だからさ、会う時についてきてよ」

佐藤君、というか頭にくるのでフルネーム書きますけど、佐藤孝治君、どさくさに紛れてとんでもないこと言っちゃってます。

「いや、そういうのって良くないんじゃないの?」

体の良い断わり文句が瞬時に浮かばず、訳の分からない断わり方をしてますが、佐藤孝治の熱意たるや凄まじく、断わることを許さない断固たる勢い。

「うん、わかった。ついていくよ」

こうして寄り切られてしまった僕は佐藤孝治君と共にデートクラブなるものに参戦することになったのでした。

詳しい話を聞くとこうです。彼はインターネットを通じてデートクラブに入会申し込みをしました。すると1日後に向こうから連絡があり、都合の良い日時を尋ねられたようです。暇な日にそのデートクラブの事務所に行くと、怪しげなオッサンがおり、入会金を支払ったそうです。98000円を支払ったそうです。

すると、何やら重厚なアルバムが登場し、登録している女性の写真やらプロフィールやらが掲載されていたそうです。「好きな女性を選んで」そう言われた佐藤孝治(31)は、一番おっぱいの大きい女性を選んだそうです。顔も写真ではハッキリは見えなかったけどまあまあかわいかったそうです。

すぐに女性と連絡を取って、都合の良い日を聞きだし、連絡するといわれたそうです。あくまでも良識を持って大人としての付き合いをしてください、みたいなことを言われたそうです。

数日するとデートクラブから連絡があり、会う日時を決定。もうクラブは関与しないのでお互いに連絡してくださいと連絡先メールアドレスも教えてもらったようです。で、メールで連絡を取ってとあるファミレスで会うことにしたようです。

「話がとんとん拍子すぎて怖い。だって何もしてないのに女の子を紹介してもらえるなんて夢みたい。こんなに簡単でいいの?何か裏があるんじゃない?」

というのが佐藤孝治の考えらしい。確かに何か裏がありそうだけど、「何もしてない」は大間違いだろ。アンタ、98000円払ってるやん。とは言えず、渋々ついていくことになりました。

さすがに僕と佐藤孝治がマヌケ面並べて相手の女性に会うわけにはいきませんので、待ち合わせ場所であるファミレスに別々に入り、極めて自然に僕と彼が隣の席に座ります。で、他人のフリをして眺めつつ、危険が迫った場合などは携帯電話や場合によっては実力行使を駆使して佐藤君を救い出す。そんな計画を立てました。場合によっては携帯を見れない可能性もあるので、「危険!」と感じた場合にはテーブル上の爪楊枝を投げることによって警告を発するというサインも取り決めました。

そして、いよいよ当日。約束の30分前にファミレスに到着し、計画通り、隣り合ったボックス席に陣取ります。これから女性がやってくる、そう思うと気が動転するのか佐藤君の落ち着きがない。どれくらい気が動転してるかというと、注文を取りに来た女性店員に向かって

「ホットコーヒーをホットで」

とオーダーする悪漢ぶり。危険と感じた僕はすかさず爪楊枝をテーブルの上に投げました。まだ相手の女性来てないのに。

待つこと45分。もう約束の時間を15分も過ぎました。相手が全く来ない。来る気配がない。最初こそは何故か僕までドキドキしながら待っていたのですけど、次第にだれてきて、今日は堤さやかがリュックのコスプレしたエロ動画見よう、などと考えているその時でした。

カランカラン

入り口の扉が開きます。見ると単身の女性、しかも店員に向かって「あの、待ち合わせなんですけど」とか告げています。「きたっ!」そう思うや否や、女性はスルスルと佐藤君の席に近付き

「佐藤さんですか?遅れてごめんなさい!」

と彼の真向かいに座りました。一時はこのまま女性が来ず、結果として98000円騙し取られただけ、という極上の展開も予想したのですが、どうやらやってきた様子。あくまで僕は他人のフリをしなくてはなりませんので、チロリと横目でその女性を見ます。

いや、すっげえブス。歴史的ブス。極ブス。

あのさ、僕も人の容姿をとやかく言えないっすよ。でもね、これは言わざるを得ない、それだけのブスだった。小学校の時とか黒板消しってあったじゃないですか。その黒板消しが汚れた時にウィーンってやって綺麗にするやつあったじゃん。あれの吸い込み口みたいな顔してた。

で、確かにおっぱいは大きかったんですけど、なんていうか、その他の部分も大きいというか崖の上のポニョというか、とにかく散々たる有様。これで98000円とかありえない。これは危険だ!そう判断した僕はいきなり爪楊枝を投げました。

けれども、もう、佐藤君、ガチガチに緊張しちゃってて全くこっちを見ていない。サイン決めた意味なし。

「危険だ!」

とにかく危ないので彼の携帯に向けてメールを送信します。すると、すぐさま隣の席の佐藤君の携帯が鳴り、彼も「ちょっとごめん」と相手のブスに断わってマジマジと画面を見て返事を打ちます。

「どうしよう、写真と全然違う人なんだけど」

すぐにこのようなメールが彼から送られてきます。

「断われ!」

そう返事を送るのですが、それを見た彼が一向に煮え切らない。いや、確かに本人を目の前にして断わりにくいのは分かるんだけど、98000円を思えばやれるはず。

「わたし、超お腹減ってるんだけど、なにか食べてもいい?」

「うん、いいよ、なんでも食べて」

ブスと佐藤君の会話が聞こえてきます。断わりたいのに断われないで困っている佐藤君。その反面、厚かましく牛肉にするか豚肉にするか鶏肉にするか、メニューを見ながら悩んでいるブスとすごいシュールな光景に。こりゃいいものが見れたぜ。

「どうしよう、牛肉にしようかなー」

と甘えた声を出すブス。僕はすかさず佐藤君にメールを送ります。

「豚肉は共食いになるって言え」

そのメールを見た瞬間、佐藤君がブッとなって慌てて笑いを堪えたのが見えました。これは面白い。

こうして、厚かましいブスに対峙して断わるに断れない佐藤君、笑ってはいけない状況で彼に笑えるメールを送りまくるという、最初の趣旨から大きく外れた展開に。

2人はなにやら自己紹介をする展開になり、佐藤君が「趣味は読書と音楽鑑賞です」という嘘8000の自己紹介をしたのに対し、ブスも「趣味はサーフィンです」というお前沈むだろと言うしかない自己紹介を展開。すかさず佐藤君にメールします。

「波の上のポニョ」

何かがツボにはまったのか、メールを見た佐藤君は真っ赤な顔してむせています。すかさず畳み掛けるように

「彼女は黒板消しを綺麗にするやつの吸い込み口に似ている」

とメールを送ると佐藤君、死にそうになってました。こりゃあ面白いっていうんで、5通くらい連続で

「ウィーン、ウィーン、ウィーン」

とメールを送ると、

「やめろ!」

と返事が返ってきました。

こういったやり取りを経て、まあ、お互いにギクシャクしたやり取りをした後、2人でどっか行く的な展開になったので、さすがに僕はついていくわけにもいかず、後は若い者同士に任せて、な感じで佐藤君とブスを見送り、ファミレスを後にしたのでした。去り際、佐藤君は悲しそうな瞳をしていたのが印象的でした。

次の日、青い顔をして出社してきた佐藤君に対し、

「昨晩はお楽しみのようでしたね。いかがでしたか?」

と訊ねると、彼は仁王のような顔に変わり

「80万円請求された」

と言いました。なんでも、あのあと、何もなくてブスとはすぐに別れたのですが、それからしばらくしてデートクラブから連絡があったそうです。

「貴方に会った会員の女性が当クラブを退会されました。あなたの不誠実な態度が原因です。当クラブにとっては女性登録者は貴重な財産であり、契約書にも書いてありますとおり、あなたに損害を賠償していただきます」

とかなんとかで80万円請求されたらしい。また豪気な話ですな。

まあ、これは明らかというかもはや古典の域に達している詐欺みたいなもので、おそらくですが、あのやってきたブスは登録女性でも何でもなくてクラブ側の人間です。で、何やら難癖つけて慰謝料だとか損失補填だかをさせるという手法で、最初から出会いを破綻させる目的なのです。つまり、来る女性がブスであるほど男のテンションが下がって好都合、そんなカラクリです。

後は女性が退会したからとか、女性が傷ついたから慰謝料、女性は実は人妻で旦那が慰謝料を請求している、とかいってお金を請求する。男の方も、そういったクラブに登録していた事実が恥ずかしくて被害を訴え出ることができない、そういうわけです。

「それは典型的詐欺だから支払いの必要は……」

と、佐藤君を安心させてあげようと思ったのですが、佐藤君は本気で対応が不誠実で女性を怒らせてしまったと勘違いしているらしく

「お前が波の上のポニョとか送ってくるから笑っちまったんだぞ!それで彼女が機嫌を損ねたんだ!半分の40万円払え!」

と物凄い剣幕で怒られました。こりゃあ僕は絶対に払わないけど彼はこの勢いで80万円払いかねない、そんな勢いでした。

クリスマスを夢みてデートクラブ詐欺に引っかかった佐藤君。彼はただ恋人のいる健やかなクリスマスを夢見ているだけだった。それだけだった。それだけなのにこの仕打ち、あまりにもあんまりじゃないか。クリスマスイルミネーションを眺め、切ない気持ちになるのだった。

そして、僕のクリスマスの夢、クリスマスパーティーに誘われる、だけども大激怒した佐藤君(幹事)のせいかどうか知らないけど、やはり誘われなかった。職場十分だ。

クリスマスには夢がある。

人の夢と書いて儚い、何かもの悲しいわね。