大戦前夜 | macsimのブログ

大戦前夜

さて、再開ついでにレビュー…って程でもないので、感想文程度のものを。

また早川SFからミリタリーSFの新シリーズが翻訳された。

『大戦前夜』(上) ジョン・リンゴー著


「ポスリーン・ウォー」シリーズの第1部で、一応上下巻同時発売。両方読み終わっている。
ネタバレにならない程度にまとめると、
・人間VS異星人
・地上戦
・歩兵戦メイン
な感じのミリタリーSFだ。
ちょっと特異なのは時代設定。なんと今作のストーリーは2001年から2002年が舞台となっている。(実際の発表が2000年なので、超々近未来SFだった訳だw)
全4部作と思われ、第4部最終話の終了時期が2009年の様だから、現時点で既に決着のついた宇宙戦争を取り扱った珍しい作品といえる(⌒▽⌒)


著者の出身が陸軍の空挺部隊らしいので、戦闘描写自体も陸戦主体。宇宙戦艦による戦闘はなし(今後はわからないけど)。ただ、携帯する武器の描写はかなり詳細だ。武器自体だけではなく、兵士の装着するコンバットスーツと、コンバットスーツの性能による作戦展開が主な見所となっている。


さて、先にも書いたとおり、この作品の時代設定は現代。つまり、現用の技術でコンバット・スーツを作った!って訳ではなく。他の異星人から技術供与を受けて開発されたものだ。基本、人類は他の異星人同士の戦争に巻き込まれて戦争に突入する。
時代設定が現在な為、各国家も健在。敵となる異星人があまりにも強大な物量で攻めてくる予定なので、全地球規模で軍隊を編成してはいるが、別に世界政府が結成されている状況ではない(あ、第一部での話で、以降どうなるかは知らない)。
今回登場して活躍するのは当然米軍メインでドイツ軍・フランス軍が多少。中国軍が異星人との初期交渉時のエピソードで出るくらい。日本軍は一応今回の主戦場に投入されているようだが、本編への絡みまったくなし…。
異星人が最初にコンタクトしてきたのがG8+中国って事になっているが、日本について書かれているのがほぼない。一応主戦場に日本軍も投入されているから、憲法問題は、対異星人ということでクリアしている様だが…。続巻での活躍に期待…できるかな?



ところで、最近流行のミリタリーSFだが、自分的にちょっとした傾向があるような気がする。
○地上戦がメインっぽいのは対異星人。
○(宇宙)艦隊戦がメインは人類同士。
というのが自分の持っている感想だ。
異星人と艦隊戦っていうと、ウェーバーの「反逆者の月」シリーズがそうだが、それ以外だと自分の読んだ範囲ではあまり思い浮かばない。ファインタックの「シーフォート」シリーズも宇宙戦艦での戦闘が多いが、相手は戦艦じゃなくて巨大な異星生物だからちょっと毛色が違うと思う。
個人的には、艦隊戦を面白く描く為には、「ほぼ同程度の科学技術をもった者同士」で、「主人公の才覚で状況を打開していく」様な展開が必要な感じを持っている。従って、技術のレベルや方向性が著しく異なる(はず)の初対面の異星人同士の艦隊戦は一方的になるか、上手く戦闘に発展しないかのどちらかのような気がする。
最近の(ミリタリー以外の)SFで対異星人との艦隊戦を想定する場合、必ず技術レベルがほぼ同等になる様な仕掛けがあったりする。「知性化」シリーズでは〈ライブラリー〉に様々な情報が共有されているし、「プロバビリティ」シリーズの人類も敵も超古代文明が残した技術を(原理を理解せずに)使っている。
まあ、この辺に関しては異論のある人もいっぱいいるだろうから、これ以上は追求しないでおこう。



そして、読みながら、作品や作者についてネットで調べてたときに気がついたことが2点ある。

ひとつがカバーイラストの件。
まずはこれら二つの画像を見てもらおう。



まあ、わかると思うが、上が日本版で、下がペーパーバック版だ。
多分両方とも作中に登場する女性狙撃手を選んでいるのだが、かなり差がある。まあ、おおむね日本人にはペーパーバックの表紙には(どんな作品でも)まったくシンパシーがない、というのが実情だと思うが、同じキャラクター(実は主人公格でもなんでもない)でここまで違うと…。
サンプルの画像が小さいから判りにくいが、たとえば銃を持つ手がペーパーバック版はひどい…ってかグリップ握っていない。日本版のイラストみたいに「トリガーには指をかけない」辺りまで徹底するのもアレだが、もうちょっとマシにしないのかな。よく読者から文句がこないなと思う。


そしてもうひとが、実はこの小説無料で読めるっていうこと。
この「ポスリーン・ウォー」シリーズは無料オンライン版がある。英語版の著者のwikiから行ける。特別なリーダーなしでも、HTML版もあるのですぐ読むことができる。ただし、もちろん英語だが、四部作全てを無料で読める。
英語で読書問題ない!って人は、そこで読んでもいいかもしれない。自分的には、翻訳があんまり遅くならなければ、挑戦しようとは思わないけどねw
あ、上の画像じゃ判りにくいペーパーバック版の女性狙撃手も、無料オンライン版のサイトで拡大されて見れるので、表紙の画像見るためだけでも行ってみてもいいかもしれない。他の巻の表紙も当然ある(そして当然ガッカリさせられる)。