「昨季準優勝 × '昨季3位」の注目対決は、衝撃の41点差で決着しました。
3季目を迎えたリーグワンの開幕節。
12月10(日)に埼玉・熊谷ラグビー場で激突したカンファレンスBの埼玉ワイルドナイツ vs 横浜イーグルス。
昨季第6節ではワイルドナイツが2点差勝利(21−19)だったが、準決勝を経て、今回は点差が41(53−12)に広がりました。一体何があったのでしょうか?
今季イーグルスはディフェンスシステムを変えたといいます。
CTB梶村祐介キャプテンは開幕前「激しいディフェンスからボールを奪ってスコアに繋げる、というところ見てほしい」と注力した守備の手応えを語っていました。
迎えた開幕戦で、CTB梶村キャプテンは「(ディフェンスで)自分たちからゲインラインを取りに行く、そこで相手にキックが増えればアタックの時間が増える」と考えていたといいますが、重要なコリジョン(衝突)勝負で差し込まれたといいます。
「最初の入りで(ワイルドナイツに)ゲインを取られ、内側を突かれたりしました。ディフェンスの根本であるコリジョンで勝っていかないといけません」(CTB梶村キャプテン)
イーグルスの沢木敬介ヘッドコーチは、DFの新システムを意識するあまり目の前のコリジョンが「ここ2、3試合おろそかになっていた」と分析。激しさとの両立の難しさを語りました。
衝突局面での優勢に加え、ワイルドナイツはアタックが巧みでした。
イーグルスの出足鋭い守備ラインをかわすように、ラック脇やエリア大外を狙いました。
08' には⑨SH小山大輝選手がラック脇から抜けだして1本目のトライをしました。
10' にはショートサイドを攻めるモールのサインプレーから⑦FLラクラン・ボーシェー選手が2本目のトライ。
14' には、イーグルス守備の頭上を越えるキックパスから、⑥FLベン・ガンター選手が3本目を奪取。
イーグルスのDFシステムが機能する場面は散発的でした。
開始15分で22点のビハインド。被3連続トライの被害は大きかったようです。
イーグルスの沢木ヘッドコーチは「最初の10分、15分で決まってしまった。あの点差(22点)になるとゲームプランが崩れる。何もできなかったという状況」と敗因を語った。しかし出鼻を挫かれながら、それでも両ウイング(松井千士選手、イノケ・ブルア選手)の連続トライで、前半を10点差(22−12)で後半へ。
カムバックする地力、自慢のアタック力を見せつけたが、後半開始1分(41' )に手痛い一撃を浴びてしまいました。
その起点はワイルドナイツのファンタジスタ、⑮FB山沢拓也。
前半にも前に出てくるDFのギャップを突いてロングゲインするなど、豊富なスピード&スキルは全開。そして後半開始直後(41')には、チェイスの遅れた相手ハイパントを捕球すると、絶妙なチップキック。⑬CTBディラン・ライリーのトライを呼び込みました。
さらに50' には⑮FB山沢拓也選手みずからスピードで外側を攻略して連続トライ。同期⑩SO松田力也選手のコンバージョン成功で36−12となりました。
ワイルドナイツは途中出場メンバーが活力を与える方程式も健在でした。
日本代表⑰クレイグ・ミラー、⑱ヴァル アサエリ愛の2人は46' の投入直後、自陣スクラムでペナルティ奪取。早めの交代策が的中しました。
さらに今季限りでの引退を発表した⑯HO堀江翔太選手が57分に今季初出場。
安定したスクラムからこちらも途中出場の⑳大西樹選手がキャリーでトライ(72分)。
ラスト8本目のトライもリザーブから出場の㉓マリカ・コロインベテ選手が左隅を激走。⑯HO堀江選手のパスから⑰PRミラー選手が仕留め、大勝で締めくくった。
一方、イーグルスは強みであるモールを再三防がれるなどして、後半は無念の無得点。12−53という大差のままノーサイドの笛を聞いた。
本拠地・熊谷ラグビー場で開幕戦勝利を飾ったロビー・ディーンズ監督は「素晴らしい初戦だった」と振り返りました。
「良いパフォーマンスでした。代表選手がチームに帰ってきてから短い準備期間でしたが、満足しています」
多くの主力選手が代表活動でチームを離れるのは「スター軍団」ワイルドナイツの悩みだが、短期間でチームを仕上げるノウハウもある。
ワイルドナイツは11月26日(日)から12月1日(金)まで宮崎で合宿を行った。日本代表としても活動してきた②HO坂手淳史主将は「宮崎合宿で落とし込みをして、寝食を共にしながら良いコミュニケーションができました。みんなの集中力が高かった」と語りました。
チーム公表のスケジュールによると移動日、オフ日を除くと4日間の練習日。この短期でチームの調整が上手くいくのだろうか?
②HO坂手主将は「昨年からメンバーが変わっていないので落とし込みがスムースにいった」と内情を明かしました。
また「代表メンバーに目が行きがちですが、それ以外の選手がレベル、メンタリティが上がっていた」と代表以外の選手の成熟度も大きいと語りました。
一方、開幕戦で大敗したイーグルス。
南アフリカ代表のワールドカップ連覇に貢献した先発SHファフ・デクラーク選手は、試合直後「選手もショックだったと思尾う。ポジティブなところにフォーカスして成長していきたい」と殊勝に前を向いた。
指揮官の沢木ヘッドコーチは、モールを再三防がれた事を念頭に「我々(コーチ陣)も自分の仕事にベクトルを向けないといけない」と話しました。
立て直しが必要となったディフェンスについては「変化を恐れ、一度失敗したからといって前に戻すことはしたくない」。忍耐強く強化していくつもりのようです。
黒星スタートのイーグルスは次戦、12月16日(土)、神奈川・日産スタジアムに1勝のトヨタヴェルブリッツを迎えます。
開幕白星のワイルドナイツは翌日曜日(17日)、大阪に乗り込み、1敗の花園ライナーズと対戦する。
開幕節の他会場では、昨季初優勝のスピアーズ船橋・東京ベイが、昨季4位の東京サンゴリアスにダブルスコア(26−52)で敗れた。
進境著しいイーグルス、スピアーズがトップリーグ時代からのトップ常連に逆襲された格好になった開幕節。2チームも当然カウンターを浴びせるでしょう。次節は一体どんなドラマが待っているのか。