Scene7-b Grand Mother's Episodes | MFS -MacrossFrontierShortnovels

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マクロスフロンティア(以降マクロスF)の二次創作のBlogです。

実在の人物団体に関係はありません。



Sorry.Written only Japanese!!

 結局、私は工藤にサインをした。仕方なくいやいやと。
 というのも、工藤が一日で用意した資料の量は明らかにどうやって手配したのと思えるような量だったし、納得の行くものだった。
 私の中ではただの映像風景でしかなかったマヤンの風景が肉付けされていく。
 そして、私の祖母に当たるはずのマオのこと、工藤の祖父に当たる工藤シンのこと。
 あの映画、レジェンドオブゼロでは語られなかった様々な軍事機密やプロトカルチャーについての幾つかの論文……ほとんどの論文は難しすぎて読めなかったけど、いくつか学生向けの論文もあったので、それがなんとか読めた。
 それらの情報の量に納得してしまって、私はサインをせざるを得なかった。
 そのサインをするときの工藤の得意そうな顔ときたら、アルトの得意そうな顔の次にむかついたので、普通のペンで書いてやった。ざまーみろ!
 ……それだと約束を守ったことにならないので、後でちゃんとしたのをあげたけど。散々自慢した後だったらしく、そのときの工藤の顔は面白かった。
 まぁ、でも、そうね。シェリル・ノームの書いた、シェリル・ノームの偽者のサインなんて、彼しか持ってないんじゃない?

 それはさておき、久しぶりに読書に没頭しているのだけど、つくづくバジュラと私は縁があるんだなと思う。鳥の人にフォールドクォーツに、そして歌か。
 本当の鳥の人の歌はどんなのだったんだろうな。それを知りたいけど、それはもう失われてしまっているのだろう。

 プロトカルチャーというのは言葉は知っていたけど、本格的に知るのは初めてのことで色々と知らないことが多かった。
 ゼントラーディーの話、歌という文化、そしてバジュラ。
 読んでも呼んでも興味は尽きることがなく、そうして私は艦内での退屈だったはずの日々が瞬く間に過ぎていった。

 今アイモを歌ったら、どうなるのかな。

 試してみたい衝動に駆られる。
 小さくハミングをしてから小さく歌い始める。語り掛けるように優しく、囁くように甘く。
 歌がフォールド波にのって、銀河中に響く。
 そう思えるような感触を楽しんでいたら、不意に止められた。
「何よ工藤。私の歌が聞けないって言うの」
 歌を止めた張本人をにらみつける。せっかく良い気分で歌っていたのに。
「申し訳ありません。ただ、今報告がありまして。艦内で強力なフォールド派を観測したという……三日前から隠密任務に入っていますので、今歌われるのは、大問題になりそうなんですよ」
 だから、すいませんと本気で謝っている工藤を見て、仕方ないなと思う。
 私は歌を歌うのが仕事だけど、今回の仕事は戦争。だから、作戦に差しさわりがあるなら歌えないのか。
 事由に歌えないことに不満を感じつつも、あきらめる。これは仕事。遊びではないのだから。
「あなたの責任ではないでしょう、工藤少佐? 私が悪かったのよ。だから、司令部の方々にはシェリル・ノームが思わず歌ってしまって申し訳なかったと伝えておいて」
「良いのですか?」
「良いのよ。私は歌が仕事。でも、今回の仕事は貴方たちとの共同作業。共同作業の邪魔をしたのであれば、悪いのは私だわ」
 その言葉に納得をしたのか、わかりましたと返事をする工藤。

 工藤はそのまま報告していきますと一人離れ、私は読書に戻る。
 そんな最中メールの着信。誰だろう? このアドレスを知っている人は少ないのに。
 そういぶかしみながら、メールの送信者を見るとランカちゃん。
 元気にしているのかな、アルトの奴と上手くやっているのかなと微かな痛みにたえ、メールを開く。
 開いた瞬間に本を落とした。
 思考が言葉にならない。動悸が早くなる。のどが渇く。

 ……そんな、ウソでしょ? アルトがV型感染症の末期だなんて。

 何度同じ言葉で否定しても、画面にうつる文字は変わらない。
 視界がにじむ。袖口で目元の涙を拭い去り、深呼吸をして落ち着かせる。
 そう、アルトとは分かれたのだから関係ない。
 自分に言い聞かせる。私は歌に人生をささげると決めたのだから。

 そう、言い聞かせたのだから。

 ふと近くで誰かが本を拾い上げる。見ると工藤が戻ってきていた。
 彼はよく浮かべる困った笑みを浮かべて、何も言わず本を渡してくれた。

 それが私の限界だった。涙がこらえきれなくなって、嗚咽が始まり、何も考えられなくなる。

 ただ、誰かが優しくなでてくれていたのはわかった。