Scene6-b Secret Songs | MFS -MacrossFrontierShortnovels

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マクロスフロンティア(以降マクロスF)の二次創作のBlogです。

実在の人物団体に関係はありません。



Sorry.Written only Japanese!!

 とりあえず工藤に事情を聞いた。いや、聞き出した。
 ようするにアルトと工藤は戦って工藤は勝利した。で、鳥の人の工藤シンの孫と。
 面白くない。なんだか、面白くない。
 一番面白くないのは、あの空バカが負けたということ。
 空を飛ぶ以外に能がないんだから負けるなって言うの!!
 不機嫌そうなのが顔に出ているのか、工藤は部屋の隅にいて近寄ろうともしない。他の女性SPも入り口側で待機したまま。
 ……でも、一番、気に食わないのは、私がアルトを基準にしているということ。
 負けたこともそうだし、鳥の人と聞いて、すぐにあの島が浮かぶし。
 私から振ったというのに、私が振り回されているなんて、すごく、気に入らない。
 このままでいても仕方がないので立ち上がり、部屋から出ることにする。工藤に歌を好きに歌えるところ、と伝えて手配をさせる。こき使ってやらないと気がすまない。
 工藤が指定したのは意外にも格納庫。彼のテリトリーで一番スタッフが暴走しても押さえが聞くとか何とか。
 この間、そのスタッフに振り回されていなかった?
 そう質問したら、彼らがあそこまで暴走するのが珍しいということだという苦しい言い訳をしていた。
 まぁ、でも、格納庫で歌うのも面白いかも。
 音響の整った施設に比べれば、悪いかもしれないけど、音響的にはどうだろう?
 そうあれこれ考えながら艦内を進む。格納庫に入ると、VF25FとVF25Sが整備されていた。前にチラッと見たときもそうだけど、やっぱりフロンティアのとは少し違う?
 Fに関しては翼が若干大きくなっている気がするし、エアロブレーキの形状が少し違う。Sに関してはあまり見たことはないけど頭部の形状が違うような?
 不思議そうな顔で見ていると、工藤がどうしましたか、と聞いてきた。
 彼ぐらいしか聞ける人もいないので、思い切って質問してみる。
 その瞬間の工藤の顔は、正直今迄で見た中で一番の傑作だった。
 あっけにとられるというのは、ああいう顔なんだなと写真に残しておきたいぐらい。
「ミス・シェリル……もしかしてそうとう詳しい?」
 恐る恐る工藤が聞いてきたので、なんなら操縦するけど? と返してあげた。
 もちろん冗談。操縦の仕方を覚えていても、操縦できるのとは話が違う。
 半年の空白期間は私の身体に操縦の仕方を残していてはくれないだろう。
 それでも、予想以上の効果をもたらしたようで、彼は本気で悩み始めた。
 冗談よ、と武士の情け。私はここに歌を歌いに来たのであって、操縦しに来たたのではないのよと告げると、彼はあからさまにほっとした顔をした。
 ……よし、操縦したいと言ってみるか。
 もちろん、そう思ったのも一瞬。気を取り直して歌の準備を始めた。
 とりあえず、声を出す。ボディコンディション、問題なし、メンタルコンディション、ちょい悪。これは仕方ない。音はAから初めて音程、テンションを変えながら声を出し続ける。
 自分の声に身体中の細胞が目覚めていくのを感じる。心の中から色々なものが消えていき、目に見える世界から色が消えたところで歌い始める。
 最初のNumberはもちろんWelcome To My FanClub's Night.
 歌っていると音が混じってくる。作業服を着た兵隊さんが手拍子。もっとアゲてと指示を出す。
 そうして、どんどんと人が集まっていくのを感じる。
 そうこなくちゃと、声に力がこもる。
 手拍子が大きくなり、足踏みの音が私を加速する。
 私と観客、繋ぐ歌と音楽。音響の悪さなんて関係ない私のステージがそこにあった。
 二曲目はWhat 'bout My Star 歓声に迎えられながら、私と観客という垣根が消えていくのを確かに感じた。
 三曲目はライオン。ソロバージョンで。
 四曲目、インフィニティ。曲の中ごろで邪魔が入ってきた。

 邪魔を入れてきたのはちょび髭がむかつく偉そうな奴
 工藤の方を見ると困ったような笑みを浮かべていた。ようするに偉い奴なのだろう。工藤はちょび髭の元に歩み寄り何事か話し始めた。
 どんどんとテンションがあがっていくようで、工藤とちょび髭が言い争う。格納庫の中の雰囲気がどんどんと悪くなる。
 手持ち無沙汰になったので髪の毛をいじっている私の元に作業服を着た兵隊さんが近寄ってきて話しかける。
「すみませんね、シェリルさん。工藤大尉……少佐はあれでも、激情家で言い出したら聞かないんですよ。いっつもあっしらのために上とケンカして。勲章をもらっているエースなのに出世とは無縁で、今回出世したと整備兵全員で喜んでいたら、こんな風になって。本当に申し訳ありあせん」
 そういって頭を下げられた。そんな凄い奴だったわけ? 食えない奴、とは思っていたけど。
 そう思っていたら、その兵隊さんがこっそり教えてくれた。
「あそこまで怒る理由は他にもあるんですけどね。実は工藤少佐……シェリルさんの大ファンで出てる奴全部持っているぐらいなんですぜ?」
 それは初耳。良いことを聞いた。
 にんまりと笑みを浮かべたところで後ろから声をかけられた。どうやら口論は終わったらしい。
「あら、もうおかえり? 思ったより早かったのね」
 そう嫌味をぶつける。工藤は憤懣やるかたない様子でため息をつく。
「一応納得させました。そして、俺について何かしゃべっていませんでしたか?」
「あら、地獄耳。貴方が出世とは縁がないことと……私の大大大ファンだということを教えてもらったわ。サインいる?」
「なっ……!! いりませんよ!! サインが欲しいならとっくに……いえ、そうではなくて、くそっ、あいつら、あとでとっちめてやる!!」
 彼が狼狽するのが面白すぎて思わず笑ってしまう。それに対して慌てて釈明を続ける工藤。
「いえ、ですからね。あの……初めて気になったのはダイアモンドクレバスのあのフォトグラフで。あのイアリングが気になって買ってみたというところなんですよ。そうしたら良かったのでファンになったというところで……聞いてます?」
 正直半分以上聞いてなかった。ただ今の話は聞き逃せない。
「イアリングが気になって?」
「はい。祖父に良く見せられていた写真についていたイアリングにとてもそっくりで。買って見比べようと思って手に取ったのが最初です」
「で、どうだったの?」
「曲ですか。とても良かったですよ」
「じゃなくて! イアリングの方!! 似ていたのに艇なかったの?」
「とても、良く似てました。伝統工芸か何かで代々受け継がれているものだからデザイン的には似ているはずがないのですが、似ていました」
「そう……その祖父の知り合いの方は?」
「えっ? その人ですか。既になくなっている方で、マオ・ノームと言います。同じ苗字ですが親戚の方で?」
「わからない」
「わからない?」
「わからないっていうのっ!! いいでしょ!! で、その人はどういう人なのよ!!」
「プロトカルチャー文明の第一人者だった人で、第114船団あの次元断層に沈んだ船団に乗っていたそうです」
「そう……そうなのね」
「もしよろしければお調べいたしますが?」
「えっ?」
「一応情報部にも知り合いはいますから。調べることは出来ますよ? 報酬は……そうですねサインでもいただければ」
 そういって彼は笑みを浮かべる。ようするに無償で調べるといってくれているのはわかる。けれど、この手を取って良いの? 私が、今。
 でも、詳しく知る機会は少ない。グレイスがいない今、自分で調べなければいけないし、自分ひとりで調べるには、私はあまり物を知らない。
 だから、決断をする。一人で生きると決めたときと同じように。
「私のサインは銀河一高いわよ? それだけで足りるかしら」
 そうシェリル・ノームらしく微笑む。その笑みにかしこまりましたと慇懃な礼を返す工藤。

 そう、利用できるものは利用する。そうしてきたのだから。