『アナタには飽きたわ。さようなら。シェリル』
バスルームの文字の前で真っ白になった頭のままフロントにコールする。シェリルがどこにいるか。
フロントのわかりませんという言葉と、ずいぶんと前に一人だけチェックアウトされましたという言葉だけがリフレインして、わけがわからなくなる。
「なんだよ、それ。っふざけんなよ。話したいことがあったのによぉ」
口から出る言葉に思っていた以上に泣きが入っていることにびっくりする。
いつもケンカして、本気で怒鳴りあったりしていたけど、いつもそれが二人の日常だと思っていたのに。
……捨てられるとは思ってなかった。
「くそっ、探しに行かないと」
当てもないのに捜さなければならないという気持ちが空回りする。
部屋の中を探し回り、残されたものを探す。
何もない。あの片付けが苦手な女がきっちりと自分の荷物だけ持っていった。
それはそれだけ決意が固いのだという証拠に思えて仕方がない。
それを認められずにいると、ふいにつけっぱなしだったTVからシェリルの声が聞こえた。
思わず振り返ると、TVの中にはシェリルが居た。
『……今回このようにして、元居た故郷へ向かわなければいけない事は大変遺憾に思います。しかし、銀河の安全のために、バジュラたちとこれから咲き友好的な関係を築いていくためにも、憎むべきテロ行為を行ったギャラクシー船団は、その捌きを受け入れなければならないと思います。元ギャラクシー市民である私は、そのためにも出来る限りのことをしていくつもりです』
いつものような服ではなく、漆黒の……喪服のような服を着たシェリルがそこに居た。
後ろには先ほど言葉を交わしていた工藤大尉。
我に返り、あわてて上着を羽織る。
あの状況ならきっと基地に違いない。そう思い込み、慌ててホテルを出て、基地へと向かうタクシーを拾う。
基地に着いたときには入り口は記者団たちでごった返していた。
なりふりかまわず人ごみを掻き分け、入り口を買い旧称で黙らせて通り抜ける。
その先には今まさに車に乗り込もうとするシェリルが居た。
「シェリル!!」
思わず叫んでいた。一度だけ視線を向け、そのまま車に乗り込むシェリル。
車に近づいて、声を掛けようとするところで工藤大尉に止められる。
「離せよ。シェリルに話があるんだ!!」
「あなた方の関係は存じています。ですが、彼女は政府の要人。この場で話し合いをさせるわけにはいけません。追って場を設けて話し合ってください」
「そんなことできるか! これから俺はフロンティアに帰らなきゃいけないし、シェリルは……ギャラクシーを追うんだろ」
自分の言葉で状況に気がついた。二人の行動にあまりにも大きい溝が発生していたことに。
フロンティアに戻る自分。ギャラクシーを追いかけるシェリル。
その違いは明瞭で、それゆえに別れると言い出したのだと不意に理解できた・
「アルト。一つだけ言わせてもらうわ。貴方も私もプロよ。互いの思う道を行きましょう? この台詞が直接いえるとは思えなかったけど……さようなら」
そしてドアが閉ざされた。残される自分と工藤大尉。後ろからのフラッシュがまぶしかったが、そんなことは気にならなかった。