映画『プレデター2』は1990年に公開されたSFアクション映画で、1987年の大ヒット作『プレデター』の正統な続編です。


舞台は前作の中南米ジャングルから一転し、猛暑に見舞われた1997年の近未来ロサンゼルス。前作で登場した宇宙の狩人「プレデター」が、今度は大都市の激しい犯罪都市を狩り場として再び地球に現れ、人間社会に新たな恐怖をもたらします。この都市環境の変化が、本作の最大の個性となっており、ヒートアイランド現象やギャング抗争といった“現代感”が色濃く反映されています。


1997年、ロサンゼルスは異常気象による灼熱の暑さと、コロンビア麻薬カルテルと現地ギャングによる激しい抗争で大混乱に陥っています。


ロサンゼルス市警のマイク・ハリガン警部補(ダニー・グローヴァー)は銃撃戦の現場に駆けつけるものの、建物内でギャング組織のメンバーが何者かに無残に殺されている光景に遭遇します。捜査の指揮は麻薬捜査官ピーター・キースに移り、ハリガンの行動は制限されるものの、実はキースらの本当の目的はプレデター捕獲にありました。 


プレデターは、光学迷彩による透明化や超人的な身体能力、異星人特有のハイテク武器を駆使してギャングだけでなく警察関係者や捜査チームを次々と襲い、都市全体が戦場へと変貌していきます。  


ハリガンは次第に事件の真相に迫り、地下に隠された宇宙船でプレデターと最後の死闘を繰り広げることに――本作ではプレデターの謎や生態についても、トロフィーとして集められた人間や動物の頭蓋骨のコレクションや、複数個体の存在が明らかになり、宇宙ハンターとしての文明的側面も垣間見えます。



感想

さて、『プレデター2』の第一印象は、とにかく「都市という舞台変更がもたらす新鮮さ」ですね。前作の“ジャングル”は原始的な恐怖のイメージが強かったですが、本作はコンクリート・ジャングルとも言うべき混沌と熱気に満ちた都市がそのまま撹乱された狩場。 

これが実に良く効いている。

殺伐とした近未来都市の空気感に、未知の存在=プレデターが違和感なく溶け込むのが面白いです。


主人公ハリガンは、前作の筋肉隆々な軍人タイプとは違って、汗だくで奔走する“普通の熱血警察官”。この人間くささが、逆にSFホラーの非日常感を増幅させている印象。


ロス市警とギャングの抗争の只中、虚を突かれる形でプレデターの狩りに巻き込まれていく流れが、観客としてもすごく入り込みやすいですし、終盤に明かされるプレデター社会の「群れ」や「掟」の存在にもワクワクさせられます。


アクション面では、銃撃戦と肉弾戦、ハイテク対策装備の攻防と、前作以上にゴチャついた都市空間の使い方が上手い。特に食肉工場や地下鉄での戦闘シーンは、ホラーテイストとアクションがしっかり調和していて、「どこから襲われるかわからない」都市型プレデター像の説得力を演出しています。


ビルの屋上に追い詰められて宙吊りの攻防だったりと、手に汗握るシーンも満載。


SF的なディティールも楽しくて、例えば熱探知能力の推理や、ハリガンが捉える“赤外線”“紫外線”のトリックなんかはシリーズの中でも特に印象深いです。


そしてプレデターの正体に関しても、宇宙船の中で古今東西さまざまな生物の骨をトロフィーとして誇示する場面があり、「ただの化け物」じゃない深さと伝統を感じさせてくれます。“群れ”のボスらしき個体がハリガンの前に現れ、意外にも礼節を重んじる円熟した異星人社会を仄めかしてみせるのもポイントですね。


残酷描写やバイオレンスも相変わらずパワフル。しかし安易なグロ描写で終わらず、都市の混沌・人間社会の腐敗といった背景が、単なるモンスター映画とは違う、どこか寓話的な風合いを与えています。


90年代初頭らしいアクション映画の泥臭さ、SFとホラーの身近さ、それらすべてが“混ざり合った”手触りが何ともクセになるんです。前作へのリスペクトと、シリーズ拡張のための挑戦とのバランスも絶妙。


興行的には当時、賛否両論だったそうですが、今振り返ると「プレデター」というシリーズ自体の可能性を一気に押し広げた意欲作だったようにも思います。


都市ならではのアクション、警察劇の熱さ、そして怪物の持つ知性と誇り、どれも見応えたっぷり。ホラー・SF・刑事もの好きなら、一度は体感しておく価値がある映画です。