2004年に公開された『ソウ』は、閉ざされた空間と猟奇的なゲームを通じて「生きる意志」を問う斬新なスタイルで大きな話題を呼びました。


その翌年に公開されたシリーズ第2作『ソウ2』(2005年)は、前作で姿を現した“ジグソウ”という存在をさらに掘り下げ、多人数を対象にしたサバイバルゲームを描くことで一層広がりを見せます。


監督は前作を生み出したジェームズ・ワンではなく、当時まだ新鋭だったダーレン・リン・バウズマンに交代しましたが、脚本にはワンとリー・ワネルが再び関わり、前作のスピリットを維持しつつもスケールアップを狙った作品になっています。


物語は、連続殺人犯ジグソウの存在を追う刑事エリック・マシューズと、その息子を巡る攻防がひとつの柱となります。同時に、廃屋に閉じ込められた8人の男女が謎のゲームに挑むことになり、タイムリミットの中で生き残りをかけた選択を迫られていきます。


複数人が絡むことで犠牲の構図や人間同士の衝突が前作以上に前面化し、「ジグソウが本当に試しているものは何なのか」を観客も一緒に考えさせられる仕掛けが加えられています。



感想

前作を観たときの驚きは、やはりあの“ラストのどんでん返し”に集約されていたと思います。


それに比べると『ソウ2』は、ラストに衝撃を一点集中させるというよりも、物語全体を通じた緊張感や、群像劇としての人間ドラマを強調しているように感じました。


ですので、好みは分かれるかもしれませんが、個人的にはシリーズを広げるうえで非常に自然な展開だったのではないかと思います。


まず注目したいのは多人数ゲームの面白さです。前作は二人の囚われ人の対話と心理戦が中心でしたが、今作では8人が閉じ込められており、それぞれに過去の罪や弱点を抱えているのが徐々に明かされます。


限られた薬や鍵をめぐって対立し、連携し、裏切り合う様子には、とても単純に「誰が生き残るのか」というサバイバル的な面白さがありました。


特に、閉塞した建物の中で少しずつ毒が回っていく設定は、観ている側まで息苦しさを覚えるほどで、時間が経つほど不安感が増していく仕組みが見事だと思います。


一方で、ジグソウ本人が今作ではかなり早い段階で姿を現すのも特徴的です。病床に横たわりながら刑事と対峙する姿は、まるで哲学者のように「生きようとする意思」について語るのですが、その落ち着いた口調が逆に不気味でした。


単なる血なまぐさいホラーを超えて、彼が何を考えてこうしたゲームを仕掛けるのか、その思想に触れることでストーリーに厚みが出ているのは確かです。


観ていて「彼の言っていることは一理あるのでは」と一瞬思わせられる部分があるのも、このシリーズの独特な魅力かもしれません。


ただし、ゲームそのものはかなり残酷です。針の山に手を突っ込むシーンや、注射器が散乱した箱に飛び込む罰ゲームのような場面など、観ているのがつらい描写が積み重なります。


これはシリーズ全体に共通する点ですが、「苦痛の映像」を単なるショックシーンで終わらせず、その人物の罪や弱さと結びつけているため、ただグロいだけでなく意味のある恐怖として機能していました。


観客も「もし自分ならどうするか」と考えずにはいられないからこそ、不快さと同時に引き込まれてしまうのでしょう。 


また、刑事マシューズと息子の関係性も大きな見どころのひとつです。ジグソウが彼を挑発していく会話劇は、前作とはまた違う“対話のサスペンス”を生んでおり、ここに人間的な葛藤が加わることで、単なる恐怖映画に終わらず「親と子」というテーマにも触れていました。


この軸が入ることで、『ソウ2』は群像サバイバルと同時に家族ドラマ的な要素も併せ持っているのがユニークだと思います。


物語の終盤にかけては、シリーズらしい仕掛けが待っており、「ああ、やっぱり騙された」という感覚をもう一度味わうことができます。前作ほどの鮮烈さではないにしても、全体を振り返ったときに「あのシーンがここに繋がっていたのか」と合点がいく作りで、観終わった後に確認したくなる完成度でした。シリーズがこの後も続いていくことを考えると、この二作目が「仕組みを広げるための土台」として非常に重要だったのだと感じます。


改めて思うのは、『ソウ2』は単にスプラッターを見せたいのではなく、人間の本性や関係性をどう追い詰めて描くかに重点が置かれているということです。緊張感が張り詰めつつも、明確な問いかけや倫理観が物語を貫いているため、ホラーが苦手でも心理的なスリルを楽しめる人には興味深い作品だと思います。


もちろん残酷描写は十分過激なので、その部分は覚悟が必要ですが…。


全体を通して、『ソウ2』はシリーズを単発の衝撃作に終わらせず、より大きな世界観とテーマを宿す“続編らしい続編”だったと感じました。


群像劇としての緊迫感、思想を語るジグソウの存在感、そして最後に控えた仕掛けが合わさり、単なるホラーを超えたミステリー・スリラーとしての魅力を備えています。


前作で感じた「あの衝撃」には若干慣れてしまう部分もありますが、その代わりに別の方向性で深い余韻を残してくれる作品でした。













 

 

 

 

 


楽天市場