『死霊のはらわた2』(原題:Evil Dead II)は、1987年に公開されたアメリカのスプラッタ・ホラー映画です。
前作『死霊のはらわた』の直接的な続編でありながら、一部設定がリメイク的に再構成されています。
物語は主人公アッシュ(ブルース・キャンベル)と恋人リンダ(デニス・ビクスラー)が森の廃屋に迷い込むところから始まります。
二人は偶然「死者の書」とカセットテープを発見し、呪文を再生したことで封印されていた死霊たちが蘇ってしまいます。
リンダは死霊に取り憑かれゾンビとなり、アッシュは否応なく恐怖と狂気の戦いに巻き込まれていきます。右腕を死霊に乗っ取られたアッシュは、自らの手を切断、自作のチェーンソーを武器に死霊へ対抗します。
廃屋には後から考古学者ノウビー教授の娘アニーと仲間たちが入り込むものの、次々と邪悪な力に引き込まれていきます。
アッシュは仲間たちを失いながらも、最後には「死者の書」の呪文で時空の穴を開き、死霊を追い返すことに成功。
しかし、自身もその穴に吸い込まれ、別の時代へ飛ばされてしまうという衝撃的なラストが待っています。
サム・ライミ監督の手腕により、前作の恐怖感に加えてコミカルなノリや斬新な映像表現が強調されており、ホラー×コメディのジャンルとして稀有な存在感を放っています。ブルース・キャンベルの怪演も大きな魅力です。
感想
この『死霊のはらわた2』は、まず「ホラー映画」の枠に収まらないアグレッシブなテンションが印象的でした。
もちろん血まみれのスプラッター描写や、次々と襲いくる死霊たちの不気味さは見どころなんですが、それ以上に感じるのは“笑わせようとする勢い”なんですよ。
最初から最後までテンポがよく、アッシュのピンチや絶望的な状況にもどこかユーモラスな味付けが加わっています。
実際、チェーンソーを右腕に装着する場面なんて「こんなのあり?」ってツッコミたくなるほどのインパクトです。
まず、主演のブルース・キャンベルの演技がホラー作品らしからぬ濃さで、ほぼ一人芝居に近い状況でもずっと見ていられます。
死霊になってしまった自身の右手と格闘する場面は、もはやコントの域。でも、ただふざけているだけじゃなくて、カメラワークや特殊効果が本気で作り込まれているのも特徴です。
シーンごとの撮り方に凝っていて、小屋の中も森の恐ろしさも、スピード感あふれる映像がスリリングさを増幅しています。
それにしても、この作品はホラーだけでなくギャグやアクションが絶妙なバランスで共存しています。
例えば、地下室から突然血が噴き出すシーンや、アッシュが狂ったような顔でカメラを見つめるシーンなど、恐怖と笑いが分かちがたく混ざり合っていて、観ているほうも「あれ?怖いはずなのに何かおかしいぞ…」と、途中から真剣に身構えつつも笑ってしまうような感覚に引き込まれます。
特殊メイクやCGは今から見るとチープですけど、それすらも演出として活かされている気がします。
何より、観客が“怖がっているのにちょっと笑ってしまう”という経験を強烈に残してくれる稀有な作品だと思います。
アッシュというキャラクターの進化も見逃せません。ほぼヒーロー的な立ち回りで死霊と戦い抜く姿は、マヌケさと勇敢さが同居していて、妙に応援したくなるんですよね。
普通ならあまり行動力を感じさせない主人公が多いんですが、彼の場合は状況に流されつつも必死に切り抜ける“人間くささ”が親しみやすさにもつながっています。
ラストで異世界に投げ込まれる展開もまた「この作品、どこまで行ってしまうのか?」という期待感をかき立ててくれる仕掛け。
いい意味で裏切られる連続で、“ホラー映画を観た”という以上の記憶が残るのがこのシリーズの不思議な魅力だと思います。ホラーが苦手な人でも、わりと肩肘張らずに観られるのは、コミカルな味付けと主人公の愛嬌のおかげでしょう。
全体を通して、サム・ライミ監督の若き才能と勢いが爆発した一本という印象です。血しぶきも怖さも満載ですが、理屈抜きで楽しめるエンタメ映画として今も新鮮な驚きと興奮をくれます。
“怖くて楽しい”を一度に体験したい人には、ぜひおすすめしたい一作です。