す前によく午後ローで放送してましたね
映画『スリープウォーカーズ』は、1992年に公開されたアメリカのホラー映画で、原作に定評のあるスティーヴン・キングが自ら映画用に脚本を書き下ろしたことで知られています。
物語の舞台はカリフォルニア州の港町とインディアナ州の田舎町。
美しい母親とその息子チャールズは、実は“スリープウォーカー”という種族の生き残りで、人間の姿をして暮らしています。彼らは処女の精気を吸うことで生き長らえる猫科の怪物であり、変身能力や姿を消す力、さらには拳銃も効かないほどの超人的な能力を持つ存在です。一方で唯一の弱点が“猫”であり、猫だけが彼らの正体を見抜き、攻撃することができるという設定がユニークな特徴となっています。
物語は、母子が新しい町で次の標的を探すところから始まります。チャールズは地元の高校に転入し、映画館でアルバイトをしている女子高生ターニャに近づきます。
何も疑わず惹かれていくターニャですが、チャールズの正体を知った瞬間に恐怖の事件に巻き込まれていきます。彼女を助けたのは、警官の愛猫クローヴィスをはじめとする猫たち——つまり、この作品では猫たちがヒーロー的存在なのです。
感想
『スリープウォーカーズ』は、スティーヴン・キングが原作ではなく純粋に映画脚本を書いた珍しい一本としてホラーファンから語られることが多い作品です。
まず、見る前から“猫が実質最強”という設定だけでニヤリとしてしまうのですが、それ以上に、母子が寄り添いながら転々と町から町へと移動する“孤独な異形の種族”というモチーフが、序盤のしっとりとした雰囲気に不思議なロマンを添えています。
一方で、物語が進むにつれ、シリアスとスラップスティック・コメディが入り混じる独特なトーンに転調していきます。例えば、チャールズが正体を晒した瞬間の変貌や、その後のバトルは、予想外なテンションでぶっ飛んでいて、90年代B級ホラー独特の“分かっていてあえてやる”サービス精神が濃く現れています。そのため、王道ホラーというよりは、“ちょっとふざけた変な映画”という印象を持つ人も多いでしょう。
しかし良い意味で期待を裏切られたのが、猫たちの活躍。ありえないほど頼もしく、チャールズたちと文字通り対等に渡り合うところは“これぞスティーヴン・キングらしい奇天烈さ”を感じさせて面白いです。“吸血鬼の親戚”とも言えるこのモンスター設定も、ややベタながらどこか愛嬌があり、不気味な母子の近親的な関係性も含めて、クセになる後味を残してくれました。
目立つ欠点は、ストーリーや演出の一貫性のなさでしょうか。序盤のゴシックな雰囲気や母子をめぐる背徳的な空気が見所なのに、急にコメディ要素が強くなったり、怪獣映画ばりのアクションが続いたりして、観る人によっては“ごった煮感”を覚えるかもしれません。
ただし、その“垢抜けなさ”や、ときどき無理やり盛り込まれるB級演出もこの作品の魅力のひとつ。
猫好きの視点からは、猫たちの出番やがんばりはたっぷり楽しめますが、猫が傷つくシーンも結構多いため、苦手な人はちょっと注意が必要です。
“とことん変な生き物たちが猫たちと大バトルする妙にクセになる映画”として、普通のホラーに飽きた人や不思議系のB級ホラー好きにはぜひおすすめしたい一作です。