映画『ゾンビランド』は、ウィルスによるパンデミックで世界がゾンビだらけになったアメリカを舞台にした異色のゾンビ・コメディです。引きこもり青年コロンバス、無敵のガンマン・タラハシー、そして姉妹詐欺師ウィチタとリトルロックが、ゾンビのいない“楽園”を求めて旅をする様子が描かれています。監督はルーベン・フライシャー、主演にジェシー・アイゼンバーグ、ウディ・ハレルソン、エマ・ストーン、アビゲイル・ブレスリンらが名を連ねています。
感想
ゾンビ映画といえばホラーのイメージが強いんだけど、『ゾンビランド』はめちゃくちゃライトで笑えて、だけど、ちゃんとゾンビ映画の“お約束”はきっちり押さえている一本でした。
コロンバスの「生き残るための32のルール」が本当に面白くて、いちいち納得してしまうし、ゾンビとのサバイバル生活にユーモアをねじ込んでくるのが新鮮。
例えば「トイレは常に注意」「車に乗るときはシートの下をチェック」みたいな小技が、物語の途中で何度も活用されてるのが作品全体のテンポを良くしています。
主人公たちのキャラクターもクセがあって魅力的。コロンバスはいかにもナードだし、タラハシーは男気があってツイステッドな感じ。何より、彼の“トゥインキー愛”にはちょっとほっこり。彼はゾンビがあふれる世界でもひたすらトゥインキーを探し続けてるという奇妙な執念を持ってるんだけど、そこがまたコミカルで、人間臭さを感じさせます。ウィチタとリトルロック姉妹もただのヒロイン枠じゃなく、しっかりと“サバイバー”として描かれているのも本作の良いところです。
ストーリーは大きくひねりが効いてるわけじゃない。ゾンビランドという遊園地を目指して、4人が協力し合ったり騙しあったりしながら、時には仲間割れしつつも進んでいきます。
道中のちょっとしたハプニングや、ゾンビ撃退のアクションがいちいち派手で笑えるシーンも多いです。
特に中盤の“ビル・マーレイ邸”のくだりは、映画ファンならちょっとニヤリとするはず。意外性とおふざけが絶妙にミックスされていて飽きさせません。
アクション面も抜かりなく、ゾンビを撃ちまくるシーンはスプラッター全開。ただ、流血表現はあるものの、どこかコミカルな描写で観ていてサラっと流せます。
うつうつとした絶望感みたいなのはなくて、むしろ「世界が終わってるけど、それなりに楽しくやってます」って雰囲気。
そのバランス感覚がとても良いし、ホラーが苦手な人でも受け入れやすいと思います。
会話やセリフも、登場人物それぞれの個性がはっきりしていて小気味いい。コロンバスのナードっぽいぼやきや、タラハシーの男気全開な言動にクスッとなるし、ウィチタとリトルロックのシニカルなやり取りも心地良い。旅の途中で生まれる友情や家族のような絆も自然に描かれているのがとても良かったです。
全体として、『ゾンビランド』はゾンビ映画の枠を大きく超えて、ロードムービーとしても青春映画としても十分に楽しめる内容だったと思います。“怖いけど笑える”、そんなジャンルのミックス感を味わいたい人にはぴったり。
ポップコーン片手に、友達と気軽に見て盛り上がれる1本。王道のホラー要素とアメリカンジョークがうまく溶け合った、肩の力を抜いて楽しめるエンタメ映画だと思います。
