映画『霊幻道士2』は、現代中国を舞台に、99年の眠りから目覚めたキョンシー一家が引き起こす騒動を描いた香港アクション・ホラーコメディです。
本作は1986年公開の『霊幻道士』シリーズの第二作で、監督はリッキー・リュウ、製作総指揮はサモ・ハン・キンポーが務めています。
物語は、墓荒らしのカク教授と助手ケイが洞窟でキョンシー(中国の伝説の生ける屍)親子3体を発見し、無知のまま研究室に持ち帰ったことから始まります。
額に貼られたお札が剥がれることで子供キョンシーが逃げ出し、人間の女の子ガーガーとその兄と出会って仲良くなります。
一方、残された親キョンシーもお札がはがされて復活、いなくなった子供キョンシーを探し始め、ついには両親キョンシーが街に現れパニックを巻き起こします。
キョンシー退治に名乗り出るのは、漢方医ラム(ラム・チェンイン)とその娘チー、恋人ヤンたち。現代で蘇ったキョンシー親子と人間たちの運命がコミカルに描かれています。
本作は前作と異なり現代劇となっている点、親子キョンシーが登場する点が特徴です。
特に子供向け要素が強く、キョンシー映画でありながら友情や家族の絆が強調されています。
出演はラム・チェンイン、ユン・ピョウ、ムーン・リー、チュン・ファト、ホー・キンウェイ、ウォン・ヨォクワンなど、香港映画ファンには馴染み深い面々が揃います。
アクション指導にはサモ・ハン・スタントマンチームが参加しており、武術シーンにも注目が集まります。
感想
『霊幻道士2』を観て感じるのは、シリーズ第1作とはだいぶ雰囲気が異なる点です。
前作のようなホラーやアクション要素は控えめで、今回は子供たちの友情物語が色濃く描かれています。
最初は「もっと怖い展開や迫力満点のアクションがあるのかな?」と期待しながら観ましたが、思っていたよりもコメディタッチで、どこかほっこりした気持ちになります。
子供キョンシーとガーガーたちの交流は、純粋な子供同士の絆や成長を描いていて、観ている側も応援したくなります。
特に印象的だったのは、妹ガーガーのキャラクター。天使みたいに無垢で、キョンシーにも怖がることなく接する様子が微笑ましくて、親目線で「このまま素直に育ってほしいな」と思ってしまう場面が何度もありました。
映像は80年代の香港映画らしく少しカクカクした独特の質感ですが、それもまた味わいであり、時代感を感じさせてくれます。
ラム・チェンインやユン・ピョウといった人気俳優たちは中盤以降に登場します。序盤はちょっと物足りなさを感じるかもしれませんが、後半にかけてはキョンシー退治のアクションがあり、しっかり楽しませてくれます。
ただ、全体的には恐怖やハラハラ感というよりも「温かさ」や「ゆったりした時間」を味わう作品だと感じます。
キョンシー映画と言えば、やっぱり昔の中国が舞台で”和”な雰囲気が強いイメージがありますが、今回は現代劇で新鮮な印象です。
個人的にはやはりレトロな中国の空気感が好きですが、この新しい切り口も、キョンシーというキャラクターの魅力を広げる挑戦だったのかなとも思いました。
もちろん、シリーズファンとしては前作と比べてみたくなる部分も多いです。
「1作目のような怖さや迫力が欲しかった」という声にも共感できますが、2作目は「家族、友情、コメディ要素」に振り切った潔さがあり、これはこれで記憶に残る作品です。
『霊幻道士2』は、肩の力を抜いて楽しめるライトなホラーコメディで、子供と一緒でも安心して観られる作品です。
往年のキョンシーブームを知っている人にとっては懐かしさ、今初めて観る人には新鮮さが感じられる一本です。