今回は本の紹介ですウインク


『スプラッターカーニバル ―悪夢映画流血編』は、スプラッター映画愛好家やホラー映画ファンに向けて書かれた、きわめて偏愛的かつ情報量豊富な映画ガイド本です。

大洋図書から出版され、2001年に発売されました。本書はゾンビ、食人族、殺人鬼、そしてフリークスまで、銀幕を彩った闇の歴史を“流血”という切り口で徹底的に掘り下げています。全288ページとコンパクトながら、各作品の“うろ覚え”な一行あらすじや、異常なまでに豊富なトリビアが詰め込まれ、マニアはもちろん、映画好きが手元に置きたい「カルト解説書」として知られています。






本書は、スプラッター映画に関する様々な切り口、例えば「ゾンビ」「食人」「殺人鬼」「人体破壊」などで分類された映画たちを、見開きや短文で次々と紹介していきます。“うろ覚えのストーリー”というコーナーでは、「若者が〇〇に訪れる。そこに殺人鬼が現れて殺す」といった、簡潔かつ何とも味わい深いあらすじが並んでおり、これが逆に本書の味となっています。

また、王道からB級やカルト映画まで、“血しぶき”“ナンセンス”“暴力表現”といったスプラッター映画のお約束を、愛情たっぷりかつ知識豊かに解説しています。コンパクトで携帯しやすいサイズながら、トリビアや裏話も随所に挟まれ、映画研究にも使えるほどの細やかさが光ります。

感想
近年のホラー映画解説本と比べても、『スプラッターカーニバル』は「異常なまでに豊富な情報量」と「作者の偏愛」が際立っています。何より、各作品の紹介があまりにも簡潔でシュール。

1行のあらすじは逆説的に作品の本質をとらえており、古典から現代まで、名作も迷作も分け隔てなく並べる態度が潔いです。

読んでいると、数々の映画が「流血」「バイオレンス」「人体破壊」という視点でいきいきと浮かび上がり、カタログ的にパラパラめくるだけでも楽しいです。B級好きやカルト映画好きにとっては、その“雑なまとめ方”さえ愛嬌となり、「映画の本質とは何か」「なぜ血を見ると盛り上がるのか」といった問いにも自然と意識が向かいます。

また、スプラッター映画への無邪気な愛に満ちた語り口は、作品を知らずとも気軽に手に取れる軽さを持っています。映画ガイドや評論、裏取りの参考資料としても使われる一方、単なる「血と暴力の図鑑」では終わらない親密さと温かみがあります。 

ときに“意味なし絶叫スプラッター”という評価が飛び交いますが、それも本書らしさ。決して深刻に語らない分、エンターテインメントとしてのホラーやスプラッターの魅力が存分に味わえます。

『スプラッターカーニバル』は、スプラッター映画の流血と悪夢の世界を、軽やかかつ濃厚に味わえるガイドです。手軽に映画世界を旅したい人、血なまぐさいエログロ映画の情報を網羅したい人、カルト・ホラーのおともに最適な1冊です。