映画『永遠に美しく…』(原題:Death Becomes Her)は、1992年にアメリカで公開されたブラック・コメディ映画です。
主演はメリル・ストリープ、ゴールディ・ホーン、ブルース・ウィリスという豪華な顔ぶれ。監督は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズのロバート・ゼメキスで、特殊メイクやVFXを駆使したユーモラスかつダークな描写が印象的です。
物語の主人公は、かつて人気女優だったマデリーン(メリル・ストリープ)。彼女は年齢とともに美貌が衰えていくことに不安と焦りを感じ、鏡の前で自分のしわを数える毎日を送っています。
ある日、宿命のライバルであり親友でもあるヘレン(ゴールディ・ホーン)が現れ、婚約者である美容外科医のアーネストをマデリーンに紹介します。しかしアーネストはマデリーンの美しさに惹かれ、結局マデリーンと結婚してしまうのです。
数年後、マデリーンは老いに悩み、ヘレンは逆に若々しく華やかに変貌を遂げて再登場。驚いたマデリーンは謎の美女リスル(イザベラ・ロッセリーニ)から「永遠の若さ」を手に入れる秘薬を購入し、一気に若返ります。
ところがヘレンも同じ薬を手にしており、2人は不死身で不老の体を得たことで激しいバトルを繰り広げることに。どちらも死ぬことができず、度重なるケンカや事故で体がボロボロになっても修復し続けなければならなくなるのです。
愛と美しさをめぐる執着はどんどんエスカレートし、ついには普通の人生を捨ててしまう2人。ラストは、皮肉とブラックユーモアに満ちた結末で幕を閉じます。
感想
この映画、初めて観た時は正直「え、ここまでやるの!?」と度肝を抜かれました。なんと言っても、マデリーンとヘレンの美への執着心がとことんブラックで、でもどこか滑稽なんですよね。
二人とも、最初は”意地悪なおばさま同士のバトル”くらいに思っていたのですが、薬を飲んでからの展開がまさに“女の底力”炸裂。怪我して体がぐちゃぐちゃになっても、エンバーミングでなんとか取り繕いながら日常を過ごしていく、この発想がもう突き抜けていて、ある意味、羨ましいくらいの逞しさを感じました。
また、ヘレンとマデリーンが年齢よりも“美しさ”に固執する姿は、どこか現代のSNS社会とも通じるところがある気がします。
見た目だけを武器に張り合い続け、裏で意地悪合戦。でも会話のテンポやお互いの”本心と嘘の交錯”が絶妙で、サスペンスというよりコメディとして観てしまう軽さが良いですね。
特に、ストリープとホーンの掛け合いは本当に楽しそうで、たとえバラバラになっても友情(?)で繋がっているような不思議な空気があります。
アーネスト(ブルース・ウィリス)の存在もまた面白くて、永遠の若さや美しさには全く興味がなく普通の人間らしい生を選ぶ。
結局“永遠を手に入れた”はずの女性たちよりも、寿命を全うした彼の人生の方がはるかに充実しているというラストが、強烈な皮肉となって心に残ります。
特殊メイクやVFXも、今観てもまったく色褪せないクオリティ。首が180度回転したりお腹に穴が開いたりと、ブラックジョークとグロテスクが絶妙なバランスで混在していて、映画ファン的には思わずニヤリとしてしまうはず。
「永遠の美」とは何か?というテーマを強烈な皮肉とともに打ち出してくる本作。美しさを保つために不死身になる……という発想自体がもう痛烈ですが、コミカルに描かれるからこそ最後はどこか切なくなる。
ラストシーンでボロボロの姿なのに見栄を張る二人に、ついつい「そんなに頑張らなくてもいいのに」と思いつつ、人間の見栄や執着はどこまでいっても尽きないものなのだなと、考えさせられる1本でした。