『着信アリ』(監督:三池崇史/主演:柴咲コウ)は、2003年に公開された日本のホラー映画です。
ケータイ電話が日常に浸透していく2000年代初頭、その社会的背景を最大限に活かして生まれた本作は、堤真一ら実力派俳優も脇を固め、日常の安心感を一転“大きな恐怖”へと変える新感覚ジャパニーズ・ホラーとして話題となりました。
物語の始まりは、ごく普通の大学生活を送る主人公・中村由美と彼女の友人たち。
ある日、陽子の携帯に「自分自身からかかってくる不可解な着信」と、そこに残された「死の瞬間」の留守番電話メッセージ――「正確な日時、悲鳴、知らない場所の環境音」。
そう、この着信を受け取ったものは、着信記録の日時に“メッセージ通りの死”を遂げる運命に巻き込まれてしまうのです。
この不条理な連鎖はなぜ起きるのか?由美と刑事の山下は、葬式や遺体に共通する「飴玉」「虐待疑惑の残る母娘」の存在を、恐怖に巻きこまれながら探っていきます。
事件の裏には、心の傷を抱えた親子の重いドラマが隠されており、無作為な死の連鎖の果てに、やがて彼女たちは驚愕の真実に辿り着くのです。
都市伝説×現代のテクノロジー=最恐――。自分の携帯電話が次の“死の予告”になるかもしれない、という設定があまりにも身近かつ斬新で、日本はもちろん世界にも影響を与えたホラー映画です。
感想
この映画、今観てもほんとに怖いです!
日常生活で一番使うデバイスで、しかも“自分の声が未来から届く”って、どストレートに「自分の死」を突きつけられます。私も映画を観終わったあと、しばらくは妙に着信音に敏感になってました![]()
あと、何気に最初の方の“友情っぽい雰囲気”からあっという間に凍りつくホラーへ突入するのが上手い。
普通の女の子たちがキャッキャしてるのに、唐突な「着信」。
陽子のあのシーンなんか、正直ちょっとショックだった。
「何も悪いことしてないのに呪われる」感じが、逆に現実離れしてなくて心底ゾッとする。
しかも、単に殺されるだけじゃなくて「その瞬間の留守メッセージ」が先に来る――コレ、地味に脳裏に焼きついて離れない。
「自分の声」って、なんであんなに他人みたいに感じるんだろう。
それと、由美の“本人は全然霊感ないんだけど、巻き込まれてしまう系ヒロイン”ぶり。正直こういう子が、一番リアル。
演じてる柴咲コウも素晴らしい。
「もう無理!助けて!」みたいなテンパり度合いが自然すぎて、感情移入せざるを得ないし、どことなく常にうっすら不安そうな眼差しが、物語の不穏なムードと相性抜群。
彼女の周囲でもどんどん死人が増えてくわけだけど、そこで単なるサスペンスにならず最後まで「ホラー」として突っ走るのがクセになる。
山下刑事とのチームアップも、意外とバディ映画のエッセンスあって好き。
彼自身、すごく人間くさい弱さと義務感(妹を救えなかったトラウマ)が見えてくるから、単なる“事件を追うだけの警官”じゃない。
この映画、登場人物の弱さや悩みもうまく織り込んでて、恐怖に深みが出てる気がする。
でもこの映画の本当の“恐怖”って、ただの幽霊や呪いだけじゃない気がする。
というのも、物語の背景に存在する「母親の虐待」とか「代理ミュンヒハウゼン症候群」のテーマ。
幽霊の“正体”に、現実の闇がちゃんとリンクしてるんだよね。ホラーって突き詰めると、人間社会の怖さとかも映した鏡だなって、妙に納得しました。
印象的だったのは、除霊ショーみたいな無責任なテレビ番組で、なつみが死んでしまう痛ましい場面。
あれ、いかにもマスコミの暴走を皮肉ってる感じだし、現実でも似た出来事が増えてきた時代背景を思い出して、「うわ、ここまで風刺効いてるのか」とゾッとした。
結局、視聴率稼ぎや他人事目線のワイドショーが、いちばん恐ろしいってことかも。
あと、飴玉が遺体の口に入れられてるとか、細かいところの“和風ホラーっぽさ”が好き。単に血がドバーじゃなく「何か象徴的な物」って、やっぱり日本的だなぁって思う。母娘のエピソードも、単純な呪いじゃなくて「家族の悲劇」まで落とし込むの、技ありでしょう。
ツッコミどころもそりゃ正直あります
携帯解約してもダメなの?着信拒否…は?とかね。
でも、その理不尽さが逆に“現代社会そのもの”な感じもしてます。
やっぱり逃げられない恐怖ってのは、突き詰めると「生きてるだけで事故に遭う」みたいな運命論的絶望が潜んでて、妙に納得してしまう自分がいる。
スマホ全盛の今こそ、より一層リアルで怖く感じるし、たぶん時代が変わっても、あの着信音で背筋が冷える人は減らない気がする。
BGMの効果音や、照明の使い方も細かいとこまでよく出来てて、ホラー好きにはたまらない。
テンポも良くて飽きさせないし、ただ怖いだけじゃなく人の心の闇も描いてるから、観終わったあといろいろ考えさせられる。
特に、「誰の立場で観るか」で感想がかなり変わる映画だと思う。被害者側だけじゃなく、事件の裏側にある“加害者に見える側”の事情も想像できるように作られてるから、一辺倒じゃないのがスゴい。
まあやっぱり「ジャパニーズ・ホラー=呪い+日常への侵食」を極限まで突き詰めた名作だと思う。『リング』や『呪怨』と肩を並べるだけでなく、海外リメイクされる理由も納得の“現実的な悪夢”。
観終わると誰もがちょっとだけ、着信音や留守電に敏感になる――これぞ現代の“都市伝説”型ホラーの傑作ですね。
2025年8月現在
プライムビデオ、U-NEXT、Hulu、DMM TV、Rakuten TV、TELARA、J:COM streamにて配信中


