夏ということで、サメ映画特集です。
『シャーコーン!呪いのモロコシ鮫(原題:Sharks of the Corn)』は、2021年、ティム・リッター監督によって制作されたアメリカのZ級サメ映画です。
物語の舞台はアメリカ・ケンタッキー州の田舎町ドルイド・ヒルズ。この町の広大なトウモロコシ畑で不可解な殺人事件が発生し、現場では複数の目撃者が「巨大なホホジロザメが歩いて(?)いた」と証言します。
事件とほぼ同時期、サメの顎を狂気の武器として用いる覆面殺人鬼・ルーカス(もしくはテディとも呼ばれる)が逮捕され、彼は「ホホジロザメの女神・チチマトゥル」を信奉するサメカルト教団の一員であり、殺人は暗黒邪神サメの復活のための儀式だと自白します。
物語はこのカルト集団の陰謀に、彼らと結託してしまう警察署長、阻止を試みる地元記者ジョナサン、CIA捜査官ベンチュリーらが絡み合って展開します。
本筋とは直接関係のないマフィアの存在や、ストーンヘンジと交信する宇宙人(!?)、ビッグフットなど何でもありの超展開が全編にわたり繰り広げられます。
サメ映画として最大の特徴は、海ではなくトウモロコシ畑をサメが泳ぐ(!?)点。予算の関係なのか、サメはほとんど頭部のみのパペットでの登場が多く、その造形もかなりチープです。
感想
いや~……すごかった。この映画、最初からツッコミどころしかない!
シャーコーン!ってタイトルだけで爆笑ものなんだけど、開始早々やってくるのは「トウモロコシ畑にサメがいる」ってニュース映像の連発。
まずこれがどういう意味か、観てる方は何度も首をひねる羽目になります。
冒頭から謎のおばさんが全力疾走して逃げる姿を延々と映すのも地味に心に刺さる。
「あ~はいはい、どうせサメが襲ってくるんでしょ」と思ってると、出てくるのは頭しか作ってないパペットの鮫!
これサメ映画好きは大爆笑間違いなし。「サメ、全然出てこない!」「なんだこの浮かれた畑の中のサメのぬいぐるみは」と思わず声に出しちゃいますよ
しかも、演技がそりゃもう大根通り越して、じゃがいも級。
警察官役の人たちの棒読み感、異常にモタモタする手錠かけシーンに、まるで日当数千円のアルバイトに引っ張ってきたレベルのゆるさ。
トランシーバーで警察同士が話してるけど距離5メートルくらいしか離れてないし。だったら普通に話せばいいのに、律儀にマイク越しって……わざとですか?観てて思わず笑いがこみあげる
血の表現もケチャップ的な何かを雑にビャッとかけて終わり。口の中に詰めた小道具(たぶん100均かそこらで手に入るやつ感すごい)が丸見え。
全然流血感ないし、返り血浴びてるはずなのに服も床もサラッサラ。
やる気あるのかと逆に心配になる!
物語の中盤には、唐突すぎて脳が処理しきれない急展開――ビッグフットが出てきてサメ男を岩でドーン。なぜビッグフット?説明も伏線もなく突然現れて突然倒して去っていく。どういう構造?「いや、何が起きたの今??」と画面の前で素直に固まる人が多いと思います
クライマックスの山場も「これで終わり?」って拍子抜けするくらいサラッと終わる。
しっかり見てたのに、王冠の中に手榴弾入れて爆発でラスボス昇天とか、急すぎて脳が追い付かない。
しかも、終盤に無理やり「Fin(終)」の文字が出る(何も終わってないのに!)。もう制作側もどうでも良くなってるんじゃないかしら
小道具・美術も安っぽくて、「この瓶詰めのサメって何?」「この棒みたいなプラスチック槍で倒せるの?」と何回も自分の目を疑うレベル。
たぶん小道具はドンキとダイソーで全部揃えてる。それレベルのチープっぷり、逆にクセになるかも。
そして最もすごいのは「サメ映画なのにサメが全然登場しない」こと。ある意味革命的。畑を泳ぐサメが映るシーンはレア中のレアで、ジャケットの唯一それっぽい場面だけが見せ場。
脚本自体も、たぶん何かパロディしようとしたんだろうなって感じるんだけど、もうメインストーリーはぐちゃぐちゃ、脇道もカオス。
宇宙人とかストーンヘンジからの指示だのおまじないだの、詰め込みすぎて何一つ説明されない。
ある意味B級……いや、Z級の理想を体現しすぎてて「もはや芸術」って言いたくなる仕上がり。
しかし、地味に「アメリカでも焼きトウモロコシ食べるんだな」って勉強にはなったりもする
それ以外の情報は特に得るものなし!
しかも、観てる途中に家電が壊れる呪いまで発生するし、どこまでも攻めてくるモロコシ鮫よ……。
個人的には「サメ映画クソ映画選手権」で優勝狙える一本。
ツッコミしながら友人と観るには最高。でも真剣にサメ映画を求める人には絶対おすすめしない!
そんな作品。締めに、思わず叫びたい。「コーンなシャーク見たことない!」……シャーコーン!!
2025年7月現在
プライムビデオ、U-NEXT、ABEMAにて配信中