『ロマン・ポランスキーの吸血鬼』(原題:The Fearless Vampire Killers)は、1967年に公開されたロマン・ポランスキー監督によるホラーコメディ映画です。


脚本はポランスキーとジェラール・ブラッシュが共同で執筆し、主演はジャック・マッゴーラン、そしてポランスキー自身も助手アルフレッド役で出演しています。


また、後にポランスキーの妻となるシャロン・テートがヒロインのサラ役で出演していることでも知られています。


物語の舞台は雪深いトランシルヴァニア。吸血鬼研究に人生を捧げるアブロンシウス教授と、気弱な助手アルフレッドが吸血鬼退治の旅の途中で、村の宿屋にたどり着きます。

宿屋の主人シャガールの娘サラが吸血鬼クロロック伯爵にさらわれ、二人は彼女を救うため伯爵の城へと向かいます。

城では伯爵の息子ハーバートや、吸血鬼たちの舞踏会が待ち受けており、教授とアルフレッドはサラを救い出すものの、思わぬ結末が待っています。


本作は、当時流行していたイギリス・ハマー製作の吸血鬼映画へのオマージュでありながら、ポランスキーならではのブラックユーモアと独自のセンスが光る作品です。


セットや衣装、色彩設計も非常に凝っており、ポランスキー監督が初めてワイドスクリーン(2.35:1)で撮影した作品としても注目されます。



感想(ネタバレあり)

『ロマン・ポランスキーの吸血鬼』、これがまた実にクセになる映画なんですよ。


まず一言で言うと、「ホラーコメディ」っていうジャンルがピッタリなんだけど、ただのおふざけ映画じゃないんです。


ポランスキー監督のセンスが随所に光ってるし、映像もめちゃくちゃ美しい。


なんせ、あの雪に覆われたトランシルヴァニアの景色とか、吸血鬼の城のゴシックな雰囲気とか、観てるだけでワクワクしてくるんですよ。


ストーリーはすごくシンプル。

アブロンシウス教授と助手のアルフレッドが吸血鬼退治にやってくるんだけど、二人ともどこか抜けてて頼りない。


特にアルフレッド(これをポランスキー自身が演じてるのがまたイイ!)のオドオドした感じがたまらない。ホラー映画って普通は「勇敢な主人公が悪に立ち向かう!」みたいなのが多いけど、この映画は「大丈夫かこの二人…」って心配になるくらいコミカルなんです。


でも、ただ笑えるだけじゃなくて、ちゃんとホラーとしての雰囲気もある。


吸血鬼クロロック伯爵の登場シーンなんかは、クラシックな吸血鬼映画へのリスペクトが感じられて、ちょっとゾクッとする。


しかも、伯爵の息子ハーバートが同性愛者っていう設定も、当時としてはかなり攻めてる。アルフレッドがハーバートに襲われそうになるシーンなんて、今見ても「おおっ」と思うし、そういうちょっとした毒っ気がこの映画の面白さでもあるんですよね。


あと、やっぱりシャロン・テートが美しい!サラ役で登場するんだけど、もう本当にキラキラしてて、吸血鬼にさらわれるのも納得。


アルフレッドが一目惚れするのも無理ないな~って思っちゃう。宿屋のシーンでのやりとりとか、ちょっとした仕草もすごくチャーミングなんです。


そしてこの映画、細かいギャグが散りばめられてるのもポイント高い。

例えば、村の人たちがニンニクをやたらと吊るしてたり、教授の「におうぞ!」っていうセリフとか、思わずクスッと笑っちゃう場面が多い。


ホラー映画の「お約束」をちょっと斜めから見てる感じで、ポランスキーのひねくれたユーモアが全開です。


ラストの舞踏会のシーンは本当に圧巻。吸血鬼たちがずら~っと並んで踊るんだけど、衣装もセットもゴージャスで、しかもどこか不気味。


教授とアルフレッドがサラを救い出して「やった!」と思ったら、最後にサラがアルフレッドにガブッと噛み付いちゃうオチ。


これがまたブラックユーモア効いてて最高なんですよ。結局、二人が世界に吸血鬼を広めるきっかけになっちゃうっていう皮肉な終わり方も、「ああ、ポランスキーらしいな~」ってニヤリとさせられました。


それから、映像面でもすごく印象的。ワイドスクリーンで撮られてるから、雪景色や城の荘厳さがしっかり伝わってくるし、色彩も鮮やか。宿屋の主人の名前が画家のシャガールから取られてるとか、そういう小ネタも美術好きにはたまらないポイント

全体的に「吸血鬼映画」っていうジャンルへの愛と茶化しが絶妙に混ざってて、ホラー好きもコメディ好きも楽しめる一作。


個人的には、ポランスキーの「怖いけど笑える」っていう絶妙なバランス感覚がたまらなく好きです。


今の時代に観ても全然色褪せないし、むしろこのブラックな笑いが新鮮に感じるかも。ホラー映画ってどうしてもシリアスになりがちだけど、こういう「怖いけどバカバカしい」映画がもっとあってもいいのにな~って思わせてくれる作品でした。


とにかく、まだ観てない人にはぜひ一度観てほしい!笑いながらゾクッとできる、ちょっと不思議な吸血鬼映画です。


2025年7月現在

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