ミッドサマー』(原題: Midsommar)は、2019年公開のサイコロジカルホラー映画で、監督はアリ・アスター、主演はフローレンス・ピュー。
物語はアメリカの女子大学生ダニーが主人公。彼女は家族を不慮の事故で一度に失い、深い心の傷を負いながら日々を過ごしている。
ダニーの恋人クリスチャンは、大学の友人たちと共にスウェーデンの奥地にあるホルガ村で開催される「90年に一度の夏至祭」に参加する予定だった。
ダニーも流れで同行することになり、一行は美しい自然と陽気な村人たちに迎えられる。
しかし、村の伝統的な祝祭は次第に不穏な空気を帯び、異様な儀式や不可解な出来事が続発。やがて、ダニーたちは「生贄」として村の祭りに巻き込まれていく。
ダニーは最終的に「メイクイーン」と呼ばれる女王に選ばれ、祝祭のクライマックスで「最後の生贄」を選ぶ役目を背負うことになる。彼女が選んだのは、他ならぬ恋人クリスチャンだった。映画は、燃え盛る小屋と村人たちの叫びの中、ダニーの歪んだ微笑みで幕を閉じる。




感想
『ミッドサマー』、観終わったあとしばらく頭がぼーっとしましたよ。ホラー映画って聞いてたけど、いわゆる「ドーン!」って脅かすタイプじゃなくて、ずーっと不安がじわじわ広がっていく感じ。昼間なのに怖いって、どういうこと!?って思いながら観てた。

まず冒頭からダニーが家族を失うシーン、あれは本当に胸が苦しくなる。
妹が両親を道連れに自殺しちゃうんだけど、その描写が生々しくて、観てるこっちも「うわぁ……」って声が出そうになる。ダニーの絶望感がもう画面越しに伝わってきて、こっちまで息苦しくなっちゃうんだよね。
で、そんなダニーが彼氏クリスチャンと一緒にスウェーデンの村に行くんだけど、最初は「なんだこの楽園?」って思うくらい、花だらけでみんなニコニコしてて、とても平和そう。
でも、なんか違和感がある。みんな親切すぎるし、村のルールも独特すぎる。食事のときの儀式とか、やたらとみんなで同じ動きをするのも不気味。

一番衝撃だったのは、やっぱり崖からの投身自殺のシーン。お年寄りが笑顔で崖に登って、ためらいもなく身を投げる。しかも、まだ息がある人には村人が大きな槌でとどめを刺すっていう……。あの場面、観てるこっちも登場人物たちと一緒に、今何が起きたの?って固まってしまった。
ここから一気に「この村やばい」って空気が濃くなっていく。
クリスチャンたちも次々と村の儀式に巻き込まれて、どんどん消えていくんだけど、村人たちは全然動じない。
むしろ「これが普通」みたいな顔してるのが怖い。ダニーも最初は怯えてたけど、女王に選ばれてからはどんどん村に同化していく感じがしてゾッとした。

ラスト、ダニーが「最後の生贄」を選ぶシーン。ここでクリスチャンを指名するんだけど、もうその時のダニーの表情がすごい。
絶望と解放が混じったような、泣き笑いみたいな顔。今までずっと苦しんできたダニーが、ここでやっと「自分の居場所」を見つけたような気もするし、でもそれがこんな形なのか……って複雑な気持ちになった。

あと、映像美がすごい。ホラー映画なのに、昼間の明るい光、カラフルな花、白い衣装、全部が美しいのに、その中で起きることはグロテスクで異常。ギャップが強烈で、頭が混乱してくる。音楽も不気味で、ずっと気持ちが落ち着かない。

観終わったあと、これは単なるホラーじゃないと思った。ダニーの心の再生、依存と解放、異文化の恐怖、いろんなテーマが詰まってて、一言で説明できない。
観る人によって解釈が全然違う映画だと思う。
自分は「怖い」と「美しい」が同時に押し寄せてきて、しばらく余韻が抜けなかった。

正直、人にはあんまり気軽にオススメできないけど、「普通のホラーに飽きた」とか「人間関係のドロドロが好き」って人には刺さるかも。
あと、カップルで観ると色々考えさせられるから、ある意味デートムービーとしてもアリ……なのか?いや、やっぱりやめといた方がいいかも😅

とにかく、『ミッドサマー』は一度観たら忘れられない映画。ダニーの最後の笑顔が、今も頭から離れない。怖いのに美しい、最悪なのにどこか救いがある、不思議な体験だったなあ。

2025年5月現在
プライムビデオ、U-NEXT、DMMTV、Rakuten TV、Hulu、J:COMstreamにて配信中