『PIGGY ピギー』は、2022年製作のスペイン発リベンジホラー映画。
監督はカルロタ・ペレダ。彼女が2018年に制作し、ゴヤ賞を受賞した短編「Cerdita」を自ら長編化した作品です。
主演はラウラ・ガラン。
2023年9月22日に日本公開されました。
物語の舞台はスペインの田舎町。主人公は10代の少女サラ。彼女は体型のことでクラスメートから「ピギー(子豚)」と呼ばれ、執拗ないじめを受ける日々を送っています。
両親は肉屋を営み、家でもあまり理解されず、孤独を抱えながら過ごすサラ。
ある暑い日、ひとりで地元のプールに出かけたサラは、そこで謎の男と3人のいじめっ子に遭遇します。帰り道、サラはその3人が血まみれのまま男の車に拉致される場面を目撃してしまいます。
サラは警察や親に真実を話すべきか、それとも自分を守るために沈黙を貫くべきか、究極の選択を迫られることになります。
サスペンスとホラーの要素が絡み合い、観る者に強烈な緊張感と問いを投げかける作品です。  




感想
結構インパクトありました!
スペインの田舎が舞台ってだけで、なんかもう閉塞感すごい。
主人公のサラが、太ってるってだけで「ピギー」って呼ばれて、クラスメートからいじめられるんだけど、その描写がリアルで見てて本当につらくなる。
家でも家族が全然味方になってくれないし、サラの孤独が画面からビシビシ伝わってくる。

あのプールのシーンからの流れがキモだと思います。
暑さに耐えかねてひとりでプール行くサラ、誰もいないと思ったら謎の男がいて、そこにいじめっ子たちがやってきて、またいじめられる。ここまでは、またかって感じなんだけど、帰り道で事件が起きる。いじめっ子たちが血まみれで誘拐されるのを目撃してしまう。
この時点で、普通の映画なら「サラが勇気を出して助けに行く」とか「警察に通報して事件解決」みたいな展開を想像するけど、この映画は全然違う。
サラ、助けないんだよ。ここがめちゃくちゃ斬新で観てるこっちも、え?ってなる。

サラの葛藤がめちゃくちゃ丁寧に描かれてて、「自分だったらどうする?」って思わず考えてしまう。
だって、ずっと自分を苦しめてきたいじめっ子たちが危険な目にあってる。でも、助ける義理なんてないし、むしろ「ざまあみろ」って気持ちも正直ある。
でも、だからって見捨てていいのか?っていう、すごい複雑な感情が渦巻きます。

しかも、誘拐犯の男がサラには妙に優しかったりして、ここもまた不気味。
サラにとっては初めて自分を肯定してくれる存在かもしれないけど、もちろん安心できる相手じゃない。
サラと犯人の関係も、サラと家族の関係も、全部がねじれてて、観ててずっとハラハラする。

映像も独特で、スペインの田舎町の乾いた空気とか、色彩がすごく印象的。ホラーっていうより、サスペンスと心理劇の要素が強くて、でもラスト近くにはしっかりショッキングなシーンも用意されてる。
グロいシーンは控えめだけど、精神的なキツさはかなりあるから、苦手な人は注意かも。

あと、サラ役のラウラ・ガランが本当に良かった。いじめられて縮こまってる時の表情と、物語が進むにつれて少しずつ自分を取り戻していく感じの変化がすごくリアル。
母親役のカルメン・マチも、脇役なのに存在感バツグンで、家族の問題も浮き彫りにしてくれる。

この映画の面白いところは、「復讐」って言葉がぴったりなんだけど、サラが直接手を下すわけじゃない。
でも、彼女が沈黙を選ぶことで、いじめっ子たちの運命が決まってしまう。その選択が正しいのかどうか、観てる側にも投げかけてくる。最後の展開も、見事に予想を裏切られた。

見終わった後の後味は、正直めちゃくちゃ悪い。けど、なんか忘れられない。
サラが自分の意思と尊厳を取り戻していく姿には、ちょっとスカッとする部分もあるし、でも「これで良かったのかな…」ってモヤモヤも残る。こういう映画、なかなかない。

テンポも良くて99分と短めだから、ダレることなく一気に観られる。ホラー好きはもちろん、いじめや人間関係のリアルな描写に興味ある人にもおすすめ。

とにかく、見てよかったけど、しばらく引きずる系の映画。
サラの選択、あなたならどうする?って、観終わった後もずっと考えさせられました。

2025年5月現在
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