『ルーム・フォー・レント』(Room for Rent)は、2019年に公開されたカナダのブラックコメディ・サスペンス映画です。
監督はトミー・スタルナカー(Tommy Stovall)、主演はリン・シェイ(Lynne Shea)。
物語は、夫を亡くした孤独な老婦人が、生活費の足しに自宅の一室を貸し出すことから始まります。しかし、そこから彼女の人生は予期せぬ方向へと転がり始めるのです。
主人公のジョイスは、長年連れ添った夫に先立たれ、広すぎる家で一人きりの生活を送っています。経済的な理由と寂しさから、彼女は家の一室を貸し出す決心をします。
そこに現れるのが、若くて魅力的なボブ。彼は親しみやすく、ジョイスの心の隙間を埋めてくれる存在となります。
しかし、ボブの素性や目的はどこか謎めいており、ジョイスの思い込みと執着が次第にエスカレートしていきます。
映画は、ジョイスの孤独や心の闇、そして人間の持つ「誰かに必要とされたい」という切実な欲求を、ユーモラスかつサスペンスフルに描き出しています。リン・シェイの怪演が光る、ブラックユーモアと緊張感が絶妙にミックスされた作品です。




感想
最初は「よくあるサスペンスかな?」って軽い気持ちで観始めたんだけど、だんだんとジョイスのキャラクターに引き込まれていきました。リン・シェイの演技がすごすぎて、見てるこっちまで「この人、どこまで本気なんだろう?」ってゾワゾワしちゃいました。

まず、設定が面白いじゃないですか。夫を亡くした寂しいおばあちゃんが、家の一室を貸すっていう、なんか現代っぽいし、ちょっと身近にも感じるんですよ。
最初は「いい人そうだな」って思ってたジョイスが、だんだんとヤバい方向に行っちゃうのがもう…観ててハラハラするし、ちょっと笑っちゃう場面も多いんです。
特に印象的なのは、ジョイスの“寂しさ”の描き方。これがすごくリアルなんですよね。
最初は誰かと話せるだけで嬉しそうなんだけど、だんだんと「この若い男の人に自分の存在を認めてほしい」っていう気持ちが暴走していく。自分でも「やめときなよ!」ってツッコミたくなるくらい、どんどんエスカレートしていくんですよ。
でも、その気持ち、なんか分かる気もするんです。誰だって孤独は辛いし、誰かに必要とされたいって思うものじゃないですか。
ボブ役の男の子も、最初は「いい人そう」って感じなんだけど、どこか掴みどころがなくて、観てるこっちも「この人、本当に大丈夫?」って疑っちゃうんですよね。
ジョイスの妄想と現実がごっちゃになってくる感じが、観ててすごくスリリング。途中から「これ、どこまでが本当で、どこまでがジョイスの頭の中なんだろう?」って分からなくなってくる。そういう不安定さが、この映画の面白さの一つだと思います。

あと、ジョイスの“暴走”がどんどんエスカレートしていくのが、ブラックコメディとしても秀逸。普通だったら怖いはずのシーンも、どこか笑えるというか、ジョイスの必死さが痛々しいけど可愛くも見えてくるんですよ。
観てるうちに「このおばあちゃん、応援したい!」って気持ちになっちゃうのが不思議。もちろん、やってることは完全にアウトなんだけど、どこか憎めないキャラクターなんですよね。
映像も、派手な演出はないけど、家の中の閉塞感とか、ジョイスの心の中の孤独感をうまく表現してて、地味だけどじわじわくる怖さがありました。音楽も、静かだけど不穏な感じで、緊張感を高めてくれます。

ラストも、期待を裏切らない展開で、「あー、やっぱりこうなっちゃうのか…」って納得しつつも、どこか切ない気持ちになりました。人間の“執着”って本当に怖いなぁって思わされるし、同時に「誰かに必要とされたい」っていう気持ちの強さも感じさせられました。

全体的に、サスペンスとしてもブラックコメディとしても楽しめるし、リン・シェイの怪演を見るだけでも価値アリ!「ちょっと変わったサスペンスが観たいな」とか、「人間の心の闇を覗いてみたい」って人には、めちゃくちゃオススメです。
あと、観終わった後に「自分だったらどうするかな?」とか、「孤独ってやっぱり怖いな」とか、いろいろ考えさせられる映画でもありました。重すぎず、でも軽すぎず、絶妙なバランスで作られてるので、気軽に観てみてほしいです。
正直、最初はあんまり期待してなかったけど、観終わったら「うわー、やられた!」って感じ。こういう映画、もっと増えてほしいなぁ。

2025年5月現在
U-NEXTにて配信中