『恐怖のメロディ』(原題:Play Misty for Me)は、1971年に公開されたアメリカのサイコスリラー映画です。
監督はクリント・イーストウッドで、これが彼の監督デビュー作となります。イーストウッド自身が主演も務め、共演はジェシカ・ウォルター、ドナ・ミルズなど。
舞台はカリフォルニアの海辺の町。地元ラジオ局で人気DJを務めるデイブ(イーストウッド)は、毎晩「ミスティ」という曲をリクエストしてくる女性イブリン(ウォルター)とバーで出会い、一夜限りの関係を持ちます。
しかし、その後イブリンはデイブに執拗に付きまとい始め、次第に彼女の行動は常軌を逸していきます。
デイブは元恋人トビーとの復縁を目指すものの、イブリンのストーカー行為はエスカレートし、周囲の人々にも危害が及ぶようになります。
映画は、まだ「ストーカー」という言葉が一般的でなかった時代に、異常な執着心がもたらす恐怖を先駆的に描いた作品としても評価されています。
音楽面では、ジャズの名曲「ミスティ」やロバータ・フラックの「愛は面影の中に(The First Time Ever I Saw Your Face)」が印象的に使われています。




感想
これも前は午後ローでよく放送してましたね。やっぱり怖い!
まず、クリント・イーストウッドが監督デビュー作でいきなりこんなサイコスリラーを撮ったってのがすごい!!アクション俳優のイメージが強いイーストウッドが、まさかラジオDJ役で、しかもどこか頼りなさげな感じを出してるのが新鮮だった。 

物語の始まりは、ちょっとした火遊びで、デイブがバーで出会った女性イブリンと一夜を共にしちゃうところから。
でもこのイブリン、最初はちょっと変わったファンかな?くらいの印象なんだけど、だんだん「あれ、この人、普通じゃないぞ…?」って空気が漂い始める。翌日にはデイブの家に押しかけてきて、勝手に料理作り出すし、デイブも「え、何この展開?」って顔してるのがもう笑うしかない。でも、笑ってられるのはここまで。イブリンの執着がどんどんエスカレートしていきます💦
この映画の怖さって、派手な殺人とかじゃなくて、じわじわと日常が侵食されていくところ。イブリンがデイブの家の鏡に口紅でメッセージを書いたり、玄関先で裸になったり、車の鍵を隠して「取ってみなさい~」って子供みたいにはしゃぐ姿とか、もう完全に常軌を逸してる。でも、そういう行動が「もしかしたら現実にもありそう…」って思わせるリアルさがあって、背筋がゾクッとする。
しかも、イブリンって最初は普通の女性に見えるから余計に怖い。デイブも最初は「ちょっと困ったな」くらいだったのが、だんだん「この人、本当にヤバいかも…」って顔になっていくのがよく分かる。
特に、イブリンが突然豹変して、第三者に罵声を浴びせるシーンなんかは、観てるこっちも「うわっ、怖っ!」ってなる。で、次の瞬間にはまた普通の笑顔に戻ってる。

ストーリーが進むにつれて、デイブは元カノのトビーといい感じになりそうなんだけど、イブリンの存在がそれを邪魔してくる。
しかも、イブリンの行動はどんどんエスカレートして、ついには自殺未遂までやっちゃう。ここまでくると、デイブも「自分が撒いた種とはいえ、どうしたらいいんだ…」って完全に追い詰められてる。観てる側も「もう逃げられないぞ、これ」ってハラハラしっぱなし。

あと、音楽の使い方がすごく印象的。「ミスティ」って曲が、イブリンの執着の象徴みたいになってて、流れるたびに「また来た…」って感じで緊張感が高まる。
ロバータ・フラックの「愛は面影の中に」も、デイブとトビーのロマンスシーンで流れるんだけど、その美しさが逆に全体の不穏さを際立たせてますね。
この映画、今でこそ「ストーカーもの」ってジャンルが確立されてるけど、当時はまだそんな言葉もなかった時代。
だからこそ、イブリンの異常な行動が本当に新鮮で、観る人の恐怖心を直撃したんだろうなって思う。
実際、後年の『危険な情事』とか、いろんなストーカー映画の原型になってる作品だし。

俳優陣も良かった。イーストウッドはもちろんだけど、ジェシカ・ウォルターの怪演がとにかく光ってる。最初は可愛らしい女性なのに、徐々に狂気がにじみ出てくる演技が見事。彼女がいなかったらこの映画は成り立たなかったんじゃないかな。

映像的には、カリフォルニアの海辺の風景が爽やかで、最初は「これ本当にサスペンス?」って思うくらい。でも、その明るさが逆に、物語が進むにつれてどんどん不気味に感じられてくるのが面白い。
昼間のシーンでも安心できないっていうのが、この映画の独特な雰囲気を作ってる。

全体としては、派手なアクションや大がかりな仕掛けはないんだけど、じわじわと追い詰められる恐怖、日常が壊れていく不安、そして「自分にも起こりうるかも…」っていうリアルな怖さが詰まってる。
今観ても全然色褪せてないし、むしろ現代のストーカー事件を知ってるからこそ、より身近に感じられる恐怖があるなぁと思った。

ラストも「これで終わり?」っていう余韻が残る終わり方で、観終わった後もしばらくイブリンの顔が頭から離れなかった。いやー、やっぱり怖い映画って、こういうじわじわくるやつが一番だよね。イーストウッドの監督としての才能も感じられるし、サスペンス好きなら一度は観ておくべき名作だと思う。

というわけで、『恐怖のメロディ』、怖いけど面白い、そして後味がじわじわ残る一本でした!

2025年5月現在
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