映画『ホリデイ』は、クリスマスシーズンに観たくなる王道ラブストーリーでありつつ、「失恋からどう立ち直るか」「自分をどう大事にするか」を丁寧に描いた作品です。


ロマンチックな要素も多いですが、それ以上にキャラクターの心の変化が気持ちよくて、観終わるころには気分がふっと軽くなるような一本です。


『ホリデイ』は2006年製作のアメリカ・イギリス合作のラブロマンス映画で、監督はナンシー・マイヤーズ、主演はキャメロン・ディアス、ケイト・ウィンスレット、ジュード・ロウ、ジャック・ブラックという豪華な顔ぶれです。


日本では2007年に公開され、今では「クリスマスに観たい映画」として定番になっている作品です。


物語の主人公は二人の女性で、ロサンゼルスで映画予告編制作会社を経営するアマンダと、ロンドン郊外で新聞記者として働くアイリスです。クリスマス直前、それぞれ恋に傷ついた二人は、インターネットを通じて“ホーム・エクスチェンジ”というサービスで互いの家を交換し、休暇のあいだだけ住まいを入れ替えることにします。


ロンドンの小さなコテージにやって来たアマンダは、そこでアイリスの兄グラハムと出会い、ぶつかり合いながらも次第に惹かれていきます。


一方、ビバリーヒルズの豪華な家に滞在することになったアイリスは、隣人の脚本家アーサーや作曲家マイルズと関わる中で、自分を軽んじてきた恋と決別する勇気を少しずつ取り戻していきます。


まずアマンダを演じるキャメロン・ディアスは、キャリアウーマンらしいバリバリ感と、不器用で傷つきやすい一面の落差が魅力的です。「悲しいのに涙が出ない」という彼女の設定が、感情表現の苦手さを象徴していて、その殻が割れていく過程が丁寧に描かれています。


アイリス役のケイト・ウィンスレットは、自己評価が低くて、ダメ男を引きずり続けてしまう女性をリアルに演じています。観ていて「そんな男やめなよ…!」と何度も言いたくなるんですが、同時に彼女の気持ちも分かってしまうところが、キャラクターとしての説得力になっています。


男性陣では、グラハム役のジュード・ロウが、見た目のかっこよさと、実はかなり“家庭的で温かい人”というギャップでぐっと印象に残ります。


マイルズ役のジャック・ブラックは、どこか頼りなさそうで、でも優しくてユーモアがあって、一緒にいると安心できるような雰囲気を持っていて、アイリスとのやりとりにほっとする温度感を与えています。



感想

物語の軸は「自分を粗末に扱う相手から、きちんと距離を置けるようになるまで」の心の旅で、そこがすごく気持ちよく描かれているところが好きです。


アイリスが昔の恋にしがみつきながらも、アーサーやマイルズと出会って少しずつ自分の価値に気づいていく流れは、失恋ものとしても自己肯定感の物語としても、すごく納得感があります。


それから、この作品は“新しい恋”だけでなく、“友情”と“人生の再出発”を丁寧に描いているのも良いところです。特に、年老いた脚本家アーサーとアイリスの関係は、恋愛ではないけれど互いにとって救いになっている関係で、甘いラブストーリーだけにとどまらない深みを与えています。


舞台となるロサンゼルスの豪邸と、ロンドン郊外の雪景色のコテージというコントラストも作品の魅力のひとつです。


観ていると、単純に「こういう所にホリデイで行ってみたいな」と思わせてくれるようなロケーションで、インテリアから小物に至るまで、画面の情報量も豊かで目が楽しい作品になっています。


その一方で、物語の展開はかなり王道で、ある程度先は読めるタイプのラブストーリーでもあります。


大きなサプライズやどんでん返しを期待して見ると、「予想通りにきれいにまとまったな」という印象になりやすいかもしれません。


また、ホーム・エクスチェンジをきっかけにした急激な恋の進展や、数日の滞在の中で人生が大きく変わる感じは、現実的かというより「ファンタジー寄りのロマンチックさ」で押し切っている部分があります。そこを「こんなこと現実にはないよね」と冷めた目で観るか、「ホリデイだからこれくらい夢があっていい」と楽しめるかで、作品への印象は変わりそうです。


失恋中、もしくは過去の恋をまだ少し引きずっている人には、かなり刺さる内容になっています。キャラクターたちが「ちゃんと自分を大事にする選択」をしていく姿は、見ている側にも少しだけ背中を押してくれるようなところがあります。


また、クリスマスや年末年始に、難しいことは考えず、でも“ただ甘いだけではないラブストーリー”を観たい人にも向いています。


雪景色や暖かい部屋の灯り、にぎやかなパーティーの空気など、ホリデイシーズンの雰囲気をしっかり感じられるので、季節の定番映画として毎年のように見返す楽しみ方もできる作品です。