お久しぶりです。M&A会計士の澤村です。
夏にいったトルクメニスタンで民族衣装着てはっちゃけている動画をアップしたばかりですが、母校を巡るM&Aニュースが飛び込んできたので、久しぶりにまじめに本件について解説したいと思います。
京都の学校法人ノートルダム女学院が運営する小中高学校事業を同じく京都の洛星中高等学校を運営する学校法人ヴィアトール学園に移管するというこちらのニュースです。
https://www.sankei.com/article/20251023-YVQSX24IHNNJTADTL3XIH3RKBY/
今朝、京都新聞がすっぱ抜いていたのですが、正式発表されました。
ノートルダムというと京都の名門女子大学であるノートルダム女子大学を運営しているのですが、少子化と女子大離れの流れを受けてその大学部門の新規募集を停止するという発表がこの春に出されたばかりですが、付属の小中高学校を同じく京都の名門男子校である洛星中高等学校を運営するヴィアトール学園に小中高を事業譲渡するとの発表です。
名門女子校が名門男子校に統合されるとのことで一部では共学化になるのか?との疑問もあったようですが、あくまで学校自体はそれぞれで運営される予定とのこと。
で、M&A業界の人ならまず浮かぶのが「学校法人ってM&Aできたっけ?」という疑問です。この疑問がちゃんと浮かんだ人はちゃんと勉強している人かと思います。というのも、学校法人というのは株式会社などとは違って、オーナーがいないんです。
株式会社であれば、オーナーが所有するその株式を譲渡することで経営権を移す代わりに、譲渡対価を得ることができます。しかしながら、学校法人は持分という概念がなくオーナー自体が存在しないのです。なので、株式会社のような形での持分譲渡によるM&Aは実施できません。
じゃあ、学校法人ではM&Aできないのか?というとそういうわけではありません。方法としては、学校法人同士の合併か、今回のような事業譲渡であれば実施可能です。今回のケースは、新規募集停止した大学事業は既存学生が卒業するまでは学校法人ノートダム女学院に残し、小中高学校事業だけをヴィアトール学園に譲渡するという形を取っています。
株式譲渡などの持分譲渡型のM&Aと事業譲渡の違いは、法人全体を譲渡する必要はないことと、譲渡対価は法人に入ってくるという点があります。
具体的な譲渡対象範囲や譲渡対価がどうなるかは今回発表されていないようですが、学校法人は公的な存在でもあることから財務の公開が義務付けられており事業譲渡が終了した年次の決算書をみればわかることになるでしょう。
ちなみに学校法人ノートルダム女学院の決算の状況はこちらから見れます。学生減でPLは厳しいようですが、BSのほうはまだ余裕があるようで、BSの余裕があるうちに今回の決断を行ったのかと推測されます。
https://www.notredame.ac.jp/nd/hojin/zaimu/
あと余談ですが、本件で特徴的なのがそれぞれの運営母体的な意味合いがあるカトリック教会の意向が強く絡んでいることですね。本件発表と同時にカトリック教会が声明を出しています。
カトリック教会京都司教区による今回の事業譲渡に関するメッセージ
https://www.notredame.ac.jp/nd/hojin/wp-content/uploads/sites/12/2025/10/4ff91dcbca5fd573e733fd1e116e0059.pdf
さらにいうと、ヴィアトール学園側も去年運営母体であったカトリックの一派であるヴィアトール教会が日本を撤退していているという影響しているのかと推測されます。
カトリック教会京都司教区のヴィアトール協会の日本撤退に関する関するお知らせ
https://www.kyoto-catholic.net/_files/ugd/8117f0_0dcc8e39ade34c5295670eee67109ca8.pdf
あと今回の記者会見に、元GCAの佐山さんが出ているのも面白いところですね。同氏は洛星OBでかつ現在理事を務められているので、本件に深くかかわられたのかと思います。